プロジェクトデータ
プロジェクト名:『東方ダンマクカグラ』をスタンドアローン版にリビルドしたい!! 募集期間:2022年11月4日~2023年1月9日(67日間) 調達金額:193,277,283円 支援者数:6995人 プロジェクトURL:https://camp-fire.jp/projects/623672 プロジェクトオーナー:アンノウンX @danmakuJP(X:旧Twitter)500万人以上のプレイヤーがいながらも2022年10月28日にサービス終了したスマートフォン向けリズムゲーム「東方ダンマクカグラ」。ファンが多いことから、サービスの終了発表を惜しむ声も上がりました。
そんな声に応え、運営団体であるアンノウンXは「東方ダンマクカグラ ファンタジア・ロスト」プロジェクトを発足。
サービス終了後も東方ダンマクカグラを遊べるように、PCゲームソフト開発の資金調達のためクラウドファンディングを実施しました。
挑戦の結果、目標としていた1,500万円をわずか30分で達成し、その後も3つのストレッチゴールを突破して193,277,283円の支援を集め終了。
そして今回、CAMPFIREアワード2023「みんなの想いを守った部門」受賞に至ります。
当対談ではCAMPFIRE代表取締役の家入一真と共に、クラウドファンディングに至った原体験からプロジェクトを通して得られたものについて自身の体験をお話いただきました。
以下、対談形式にてお送りします。 アンノウンX 団長:JYUNYAさん 以下JYUNYAさん CAMPFIRE代表取締役:家入(敬称略)
“責任”と“期待”。クラウドファンディングを実施して背負ったもの。
家入:CAMPFIREアワード2023「みんなの想いを守った部門」受賞おめでとうございます。まずはじめに、自己紹介と今回のプロジェクトに至った経緯についてお伺いできますか。
JYUNYAさん:ありがとうございます。「東方Projectを盛り上げ、世界に知らしめる」という目的をもって活動する集団「アンノウンX」という団体の団長をしているJYUNYAと申します。
何社かが集まっている団体なので「団長」という言い方をしているのですが、旗振りの人と捉えていただければと思います。
東方Projectとは、クリエイターのZUN氏が運営している同人サークル「上海アリス幻樂団」が制作する作品群です。
「東方Project」のストーリーは、人間と人外(妖怪や神様など)が暮らす「幻想郷」で展開されます。基本的には人外がなんらかの意思を持って「異変」を起こし、それを人間である「博麗霊夢」や「霧雨魔理沙」を中心とした登場人物が解決する、といった流れで進行します。
本プロジェクトで開発するゲーム「東方ダンマクカグラ ファンタジア・ロスト」の前身も東方Projectの公認を受けて2021年に株式会社DeNAがリリースした「東方ダンマクカグラ」というスマートフォン向けのソーシャルリズムゲームで、東方Projectの公認二次創作作品です。
稼働当時からユーザー数も多く非常に人気があって、特に低年齢層の方がシェアの7〜8割を占めていたのですが、運営するための売り上げの見通しが立たなくなってしまって。それでサービスを終了することになったんです。
ただ、「続けて欲しい」「終わらないで欲しい」という声をたくさんいただいて。サービスが終了する日に実施したYouTubeライブ配信ではSNSでトレンド1位を取って、「みんなのお別れ会」という感じでかなり盛り上がりました。
引用:東方ダンマク祭 ありがとうダンカグSP
僕自身も、企業に所属するクリエイターというよりは個人クリエイターに近いので、当時はユーザーさん寄りの気持ちでいて。
これだけ人気があるのに、続けることができないと通告されたときにはショックでした。
一生懸命遊んでいる皆さんがたくさんいてこれだけ盛り上がっているし、僕らも何年も先まで見据えてスケジュールを組んで開発していたので終わりたくないと。
実際に、何とか続けられないか、どこかにサービスを移管できないかと、当時運営していたDeNAさんも含めて一緒に考えていました。
その結果、パソコンでダウンロードして遊べるゲームとして復活させるため、クラウドファンディングへの挑戦を決意しました。
家入:ありがとうございます。ゲームを復活させる上で様々な選択肢があったと思いますが、なぜクラウドファンディングを選択されたのでしょうか。
JYUNYAさん:クラウドファンディングはただお金がもらえるだけの簡単な話ではなく「想いの重さ」が見えるものだと思っています。
この重さというのは「かせ」や「責任」でもあるので、クラウドファンディングが提案された当初はやりましょうと全肯定する人もいれば、「怖い」「嫌だ」という人もいました。
プロジェクトが達成しなかったらこれまでゲームを開発してきた自分を否定されるような気持ちになることもありますし、達成したとしてもゲームの開発が間に合わなかったら応援してくれた方々を裏切ることになります。なので、かなり葛藤はありました。
でも、サービスを続けられるなら続けたい。
「どれだけ皆さんに応援していただけるのか、その熱量を見てみたい」
「みんなが応援してくれた以上頑張らなきゃいけない」
「クリエイターとして責任を持ちたい」
という意見も飛び交いました。
そうして模索した結果、僕の責任、組織の責任、ユーザーの皆さんの責任が全部見えるクラウドファンディングという形で実施するのが一番いいのではないかということで企画が決まり、プロジェクトをスタートしました。
家入:ゲームの製作者側だけではなくユーザーの方も巻き込んでみんなで実現するクラウドファンディングだったんですね。
プロジェクト開始30分程で目標金額を達成されて、最終的な支援総額は目標のおよそ13倍にまで至っていたと思います。
実際にクラウドファンディングを実施してみた後の反響や反応はどうでしたか。
JYUNYAさん:そうですね。同人イベントに参加するとシンプルにおめでとうと言ってもらたのですが、支援金額が多かったこともあってか
「そのお金は何に使うの」
「実際はいくら貰えるの」
などと、お金の使い道についてもダイレクトに聞かれました。
また、直接聞いてこなかったとしても気になっている人はかなり多いんだろうなと感じたので、マイルストーンやお金の使い方は本当にきちんと言わないといけないなと。
ここで不信感を持たれてしまうと、僕だけじゃなくて今後のクラウドファンディングのプロジェクトにも強く影響してしまう。だからこそちゃんとやらねばと、1年間必死で開発しました。
熱量の可視化。開発中の心の支えとなった応援コメント
家入:JYUNYAさんはこれまで様々なゲームを開発してきたと思いますが、今回クラウドファンディングを通して開発してみていかがでしたか。
JYUNYAさん:はい。「こういうゲームを作ります」という形で公言して皆さんに支援をいただいている以上、途中で良いアイデアが思い浮かんだからといって設定を変更したり、公開日を延期したりすることは難しい。なので、クリエイターとしてはつらいところはありました。
また、早く素晴らしいものを届けたいという思いから、製作期間に対して難易度の高い目標を立ててしまって。でも約束した以上は期限通りに開発しなければいけないので、覚悟を決めて頑張りました。
家入:クラウドファンディングでは人の思いがかかっている分、大変な側面もありますが、だからこそやり切るエネルギーにできるところもありますよね。
先程お話いただいたように、クラウドファンディングを検討されてる方の中には
「集まらなかったらどうしよう」
「炎上したらどうしよう」
というような不安を抱えている方もいて。
その一方で、支援する側としても
「支援したけど、ちゃんとプロジェクトが実行されるのかな」
「返礼品はちゃんと届くのかな」
という不安を持つ方がいるかもしれません。
その不安を軽減したり、プロジェクトの実行や成功に繋げていくためには熱量が大事だと思っています。
例えば、プロジェクトのアイデア出しに参加してもらったり、より良いものにするために意見を出したりすることで、支援者がプロジェクトの立ち上げに対して参加メンバーの一員として関わるくらいの気持ちで支援できれば、その行為がそのプロジェクトへの参加料と捉えられると思うんです。
プロジェクトを実施する側と支援する側に分かれるのではなくて、支援者でもありながらプロジェクトのメンバーに入っていくような形で熱量が生まれると、結果的にクラウドファンディングが終わった後もその熱量が維持されてプロジェクトの実行や成功に繋がっていくのかなと。
東京ダンマクカグラは元々愛されているゲームでコミュニティも形成されていて、クラウドファンディングによってその熱量が可視化されたことが次のステージへのステップに寄与できたのだとしたら、僕たちにとってすごく嬉しいことだなと思います。
JYUNYAさん:ありがとうございます。可視化されたと言うのは本当におっしゃる通りで。
ゲームの開発が大変でも、クラウドファンディングのページを見るとこれほどの人たちが支援して待ってくれていることを実感できるので、あの人たちが待っててくれるから頑張ろうと、パワーを得ることができています。
支援してくださった方々や、支援はできなかったけれど同じ気持ちで見てくれた方々とこれからもいい景色を見れたらいいなと思います。
感謝の気持ちを込めて。ファンと通じ合える返礼品制作。
家入:実際にクラウドファンディングをやってみて印象的だったファンの方とのやり取りはありますか?JYUNYAさん:返礼品を考えていたときに、旧バージョンであるソーシャルゲーム版東方ダンマクカグラの思い出アルバムやサウンドトラックのような、そのまま墓まで持っていけるグッズを作りたいという話があって。
でも、クラウドファンディングのページには「返礼品としてイラスト本とCD集がつきます」程度しか書いていなかったんです。
実際の製作にあたったところクリエイターのテンションが上がって、終わってみたら何百ページのフルカラーのアートブックと6枚組の観音開きの立派なCDができました。
その結果、リターンを受け取ったユーザーさんから
「こんな豪華なものが来ると思わなかった」
「すげえものもらったぜ」
って声が上がって。
純粋にゲームの開発を応援してくれた方々に、いいものをもらったぜって喜んでもらえたことで、お礼ができたなと感じられてすごく嬉しかったです。
家入:プロジェクトを応援したからこそ、その参加特典で良いものをもらえたら特別に嬉しいですよね。
JYUNYAさん:そうですよね。それにクラウドファンディングを達成する前に何か作ることは予算の都合上難しいからこそ、目標金額を達成できるかどうかで受け取るものが変わるというのもリアルタイムな面白さだなと思います。
世代を紡いで愛される。様々な想いが結集したプロジェクトへ。
家入:クラウドファンディングを実施された際の、ファンの方の反応はどうでしたか?JYUNYAさん:スマホ版東方ダンマクカグラはユーザーの70%から80%ぐらいが20歳以下で、年齢層が圧倒的に若いんですよ。
なので、親御さんに頼んで支援していただいたり、「お年玉が入ったので頼みました」ということをユーザーさんから聞いたりしました。
東方Projectが始まってから大体25年になりますが、ユーザーの世代がどんどん変わっていくのを感じていて。
特に最近はYouTubeのゆっくり実況などゲームへの入口が多様になっているのでユーザー層がどんどん若くなっていますね。
だから、東方Projectを親も子どもも知っているという状況も生まれています。
家入:僕は今45歳で、初めてパソコンを触ったのが20歳ぐらい。ちょうど東方projectが出たあたりだと思います。それからずっと続いているのは驚きですね。
JYUNYAさん:そうですね。 世代がぐるぐる回る中で、大人になって異なるジャンルに興味を示したユーザーが、懐かしさでこのジャンルに戻ってくることもあるんですよ。
この東方Projectの中に色々なゲームがあるというのもあって、世代を紡いで愛されているのかなと。
そういう意味では今回のクラウドファンディングを行ったことで、若い層も、その親の層も引き続き東方Projectという大きなジャンルに興味を持ってくれたことを感じることができました。
家入:僕もプロジェクトページの応援コメントを拝見したのですが、
「まだ自分でお金を稼ぐことができる年齢ではないのでお金で支援することはできないけど応援しています」
という若い世代のコメントがある一方で、
「次の世代に伝わるように、私は課金します」
という大人のコメントがあって。
応援コメントに世代間全体で応援していく様子が凝縮されているのが形に残っていて、感動しました。
JYUNYAさん:僕も感動しました。応援してくれる人たちがいて、声が形になるってこういうことなんだということを実感できたので、それだけでも素晴らしい行いだったなと思います。
すごくありがたいなと思いましたし、こういった1つの行いが長い歴史を紡ぐために重要なのかなと思っています。
家入:たくさんの若い方々に愛されつつも、なかなか収益があがらずゲームが終了している中で、クラウドファンディングでユーザーやその親など、さまざまな世代の思いが集まってプロジェクトが達成されたのはすごいことですね。
JYUNYAさん:ありがとうございます。 実は、スマホ版東方ダンマクカグラの中でも「課金できるポイントがあればもっと応援したかった」という声もいただいていましたし、実際に前身のソーシャルゲームの時代に一度試作として、100円ですごいカードが手に入るという機能を導入したこともあります。
ただ、難しかったんですよね。おそらくオンラインで課金することがハードルになっていたのかなと。
今回、支援金額が大きかったのでNintendo Switch版のパッケージ版も制作しているところなのですが、ユーザーさんに
「クラウドファンディングのおかげでパッケージ版が本当に実現できそうなのは嬉しい」
「Nintendo Switchで出してほしい。それが支援することで叶うのならいくらでもお母さんを説得します」
ということを言われました。
こんな感じでユーザーさんの声を直にもらうとやっぱり嬉しくて「良いゲームを作るのでちょっと待っててね」と伝えています。
クラウドファンディングのサイトは定期的に見ます。
この人数に責任を感じるために壁に貼って、もうずっと見ていたいですね。
この人たちが待ってるから頑張るぞという戒めにもなりますし。
家入:ありがとうございます。最後になりますが、改めて支援者やファンの方に一言いただけますか。
JYUNYAさん:そうですね。改めて、このプロジェクトの支援金額や支援者数に感動しました。
皆さんから支援いただけたことは頑張る力の源です。クリエイターも皆その思いを受け取って、責任感を持って一生懸命ゲームを開発し作っています。
本当にご支援いただきありがとうございました。
そして、今後またゲームを作るためにクラウドファンディングを実施することもあるかもしれません。
その日を遠くない間に迎えられるよう、一生懸命いまを頑張ろうと思います。
そして、Nintendo Switch版のパッケージ予約もしていただけると嬉しいです。引き続き、どうぞよろしくお願いします。
家入:とてもいいお話をいただき、ありがとうございました。
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