友人と共に作り、思い出を共有する。ANSHINDOが目指す場づくりの形

“この町に住む人たちと友達になったり思い出を共有する出来事を起こしたくて”ーーそう語ってくださった株式会社Earth Friends Campの絹張蝦夷丸さん。CAMPFIREアワード2023「地域のみんなを喜ばせた部門」受賞のANSHINDOプロジェクトに込めた場づくりへの想いについて伺いました。

プロジェクトデータ 

プロジェクト名:北海道上川町に関わってほしい!まちを照らす灯台となる泊まれる複合施設をつくる! 
募集期間:2023年10月25日~2023年11月30日(37日間) 
調達金額:3,701,023円 
支援者数:247人 
プロジェクトURL: https://camp-fire.jp/projects/view/710078 
プロジェクトオーナー:株式会社Earth Friends Camp 絹張蝦夷丸さん 
「ひと・自然・地域を繋ぐ」を掲げ北海道上川町で活動している株式会社Earth Friends Camp(EFC Inc)は、人口3200人ほどの小さな町でまちづくり事業を中心に様々な活動を展開しています。 

2023年10月、3階建てのビルを改装して1階を【カフェ&バー・古本屋】2階は【まちやど(宿泊施設)】3階は【シェアオフィス】という複合施設をつくるためのクラウドファンディングを実施。 

その挑戦は地域の枠を越え全国に届き、3,701,023円もの支援を集め目標を達成しました。 

そして今回、CAMPFIREアワード2023「地域のみんなを喜ばせた部門」受賞に至ります。 

当対談ではCAMPFIRE代表取締役の家入一真と共に、クラウドファンディングに至った原体験からプロジェクトを通して得られたものについて自身の体験をお話いただきました。 
以下、対談形式にてお送りします。 
プロジェクトオーナー:絹張蝦夷丸さん(以下:絹張さん)
CAMPFIRE代表取締役:家入(敬称略) 

自然と人間と。この町で共に暮らし続けるために 

家入:CAMPFIREアワード2023「地域のみんなを喜ばせた部門」受賞おめでとうございます。 

まずはじめに、今回のプロジェクトを始めたきっかけと絹張さんの活動についてお伺いできますか。 

絹張さん:ありがとうございます、僕たちは今北海道の上川町という町に住んでいまして。 

人口3000人ほどの小さな町ですが、層雲峡温泉街という北海道の人なら知っているような温泉街があり、年間200万人以上訪れる観光がメインの町です。 

ただ、温泉街と町民の方が暮らしている市街地が20キロ以上離れていることから、町で暮らす事業者の人たちが観光の恩恵をあまり受けられていないという課題がずっとあって。 

僕自身、会社とは別でコーヒー店を市街地で営んでいるのですが、市街地にもっと人が来るようにならないと自分たちの商売を続けていくことができないんじゃないか、この街で暮らし続けていくのが難しくなるんじゃないかと、身を持ってその課題を感じているんです。 

その課題解決に向け、上川町で宿を経営している友達と今回のクラウドファンディング「ANSHINDOプロジェクト」を始めました。 

ANSHINDOとは市街地の中心部にある築65年ぐらいの古い3階建ての元薬局の建物をリノベーションして、宿泊と飲食とシェアオフィスの機能が入った複合施設で、プロジェクトを通して地元の方はもちろん、観光客などの人がもっと市街地に集まって、町を歩いている人が増えていくような景色を作ろうというビジョンを描いています。 

家入:ありがとうございます。絹張さんは札幌から上川町に移住されたとのことですが、なぜ上川町を選択したのでしょうか。 

絹張さん:はい、友人が先に上川町に移住して温泉街で宿を始めていたので、最初はその繋がりでよく遊びに行っていました。 

当時僕は自分でコーヒー屋を作りたいと思っていたタイミングで、ちょうどその友人から「上川町でカフェを開業したい人向けの地域おこし協力隊の募集があるよ」と紹介を頂いて。 

それをきっかけに移住を前提に上川町のことを調べていく中で、ここで暮らすことや子育てをすることに魅力を感じて移住することに決めました。 

また、生活面だけでなく、仕事面で考えても上川町の環境と相性が良くて。 

株式会社Earth Friends Campを起業する前の2014年から任意団体として札幌を拠点に外遊びやアウトドアイベントの企画運営などの活動を行っていたのですが、8人いたメンバーのうちの4人が、より自然に近いフィールドである上川町に移住することになったんです。 

現在はアウトドアというよりもコミュニティ運営など地域に関わること、まちづくりが主な事業内容にはなっていますが、自然環境が近いのが上川町へ移住する大きなきっかけとなりました。 

家入:僕も去年の4月に軽井沢に移住していて、きっかけはいくつかありますが、子育てをする環境の良さというのはやはり移住の理由の1つになりました。 

1番上の子がちょうど小学校に上がるタイミングで、自然の環境の中で育てたいという想いがあって。 

仕事のスタイルが変わってリモートワークもできるようになったので、子どもの教育の環境を優先して考えました。 

もう1つの理由としては、今回絹張さんに使っていただいたように、クラウドファンディングをもっと地域の取り組みで活用していただきたいという思いがあります。 

クラウドファンディングは、金融機関からの借入という資金調達とは別の形で、想いと共にお金が巡る仕組みだと思っています。 

だからこそ、人と人との距離感が近い地域でこそクラウドファンディングを使って頂きたいと思って10年程活動してきたのですが、僕自身の拠点は東京にあったんですよね。 

東京に住んでいる僕が「これからは地域だ」というようなことを言っていても説得力がないと感じましたし、僕自身が地域に移住してどんな課題があるのか自分の目でちゃんとその景色を見ることが大事だと思ったんです。 

CAMPFIREの代表としても引き続き地域のことに携わっていきますが、それと並行して個人として地域に何ができるのかということを模索していきたいと思っていて。 

いいことばかりではなく大変なこともたくさんあると思いますが、地域で挑戦してこられた先輩として絹張さんの活動は本当に尊敬しますし、羨ましいです。 

絹張さん:そう言って頂けて嬉しいです。 僕が上川町に移住したときもまさに自分の目で直接地域を見たいという気持ちでした。 

上川町に移住する前は札幌に住んでいて、僕も地域で活動をしている人たちと一緒に色々なところを回らせてもらったりイベントのお手伝いをしたりしていたのですが、結局自分が札幌にずっと住んでいたら地域に本当に寄り添って一緒に考えることはできないんだなと気づきました。 

それから、自分が実際に地域の一員となって一緒に考えて行くことを考えていて、そんなときにたまたま縁があって、上川町に来れてよかったです。 

人を巻き込むきっかけに。クラウドファンディングという”口実” 

家入:今回、Earth Friends Campとしては初めてのプロジェクトだと思いますが、以前個人として1度コーヒー店の立ち上げ時にクラウドファンディングを実施されたと思います。 2度のクラウドファンディングを実施してみて、難しいと感じた点や良かった点はありますか。 
引用:上川町に来てほしい!あなたの『きっかけ』になるコーヒースタンドをオープンします!

絹張さん:はい。プロジェクトページの作成やリターンの発送など大変なことも様々ありましたが、思っていた以上にいろんな人に届くんだなというのが実施して良かったところです。 

自分の知らない人はもちろん、ずっと連絡を取っていなかった古い友人や、これまで自分の活動を応援してくれた方々にも届けることができました。 

1度目のプロジェクトでコーヒー店を立ち上げたときには、僕が4年程インディーズ焙煎士としてお店を持たずに活動してきていたので、これまでECサイトやイベント出店で商品を購入してくれたお客さんたちにも絹張コーヒーが実店舗を持つことのお祝いみたいな感じで支援していただいて。 

家入:実店舗を持つことがメジャーデビューというイメージですね。これまでの活動を応援してくださった人たちと素敵な関係性を築いてこられたからこそ集まった支援なんじゃないかと思います。 

絹張さん:ありがとうございます。あとは、北海道のコーヒーブランドの代表の方など、普段だったら絶対連絡やオファーができないような方にクラウドファンディングを口実にして対談動画の撮影をお願いすることもできました。 

2度目のANSHINDOプロジェクトでも、株式会社Huuuuの徳谷柿次郎さんや一般社団法人 ドット道東の中西拓郎さんなど、様々な方と対談させていただくことができて。 
引用:【北海道上川町に泊まれる複合施設をつくる!】ANSHINDO PROJECT クラウドファンディングスタート!

また、配信をしたことで、登壇者や視聴者の方々にSNSでの投稿やリツイートをしていただくことができ、さらに色々な方にプロジェクトについて知っていただくことができたと感じています。 

家入:SNSをうまく活用されていたんですね。 

絹張さん:はい、Instagram、Twitter(現在のX)、Facebookは毎日必ず投稿して、誰かがシェアしてくれた投稿も全部リツイートするなど、SNSには力を入れていました。 

重なり合う「居場所」リアルなコミュニケーションの重要性 

家入:今回のANSHINDOプロジェクトは観光のハブとしての機能がありつつ、地元の人たちも集まるような場所を作るというものだと思います。 

オンラインでの交流ではなく、場を作って地元の人たちと実際に会って交流することの意味をどのように捉えていますか。 

絹張さん:はい、実は今回のプロジェクトを実施する前、会社を設立した時に上川町からの委託で2年ほど町の交流スペースの運営をしておりました。 

その中で、上川町のような人口の少ない町や高齢者が多い町では、オンラインの情報が届かない人の方が多く、実際に足を運べたり直接顔を合わせるコミュニケーションを求めている人が多いということが見えてきたんです。 

例えば、マルシェイベントを毎月実施していたのですが、最初はそのお知らせをSNSだけで呼びかけていたんですけど全然お客さんが来なくて。 

そこで地元の人たちにも来てもらえるようなイベントにするためにチラシを朝刊の折込に入れてもらったり、町の回覧板に一緒に入れてもらったりすると、地元のおじいちゃんおばあちゃんが来てくれるようになったんです。 

他にも暮らしの相談窓口のような場所を作っていたのですが、最初はそれを知っている人がいないのであまり利用してもらえていませんでした。 

そこで、地元の社会福祉協議会の方々と協力して、おじいちゃんおばあちゃん向けのスマホ講座を実施したところ 「あそこに行くとスマホやパソコンのこととか教えてくれるらしいよ」 という話が広まって相談に来てもらえるようになったんです。 

これらはやはりリアルな場があるからこそできることだなと。 

家入:なるほど。僕も長野県に移住して、リアルなコミュニケーションの良さを改めて感じています。 

特に、これまでいろんなコミュニティに飛び込んできた経験から居場所というのは重なり合うように存在するものだと思っていて。長野県でもそこに面白さを感じています。 

僕は元々シェアハウス「リバ邸」のような居場所を作る活動をしてきましたが、長野というエリアにおいては新参者。 

今住んでいるのは軽井沢というエリアですが、隣のエリアに面白い人たちが移住してきたり、または全く別々のエリアでプレイヤーが被っていることが多いのに、明確にコミュニティは別であったりというのが面白いんですよね。 

なので、今はなるべく色々なコミュニティに顔をだしたりイベントに参加したりしています。その都度新しい出会いや刺激があってすごく楽しい。 

そこから自分は何をしていくのかを考えるのはこれからかなという感じですが、地域の人たちに共感を得たり一緒に協力してもらうには、リアルな場が持つ関係性が大事だなと感じます。 

友人と共に作り、思い出を共有する。 

家入:地域の中でプロジェクトを行っていく上で「やりたい」という気持ちだけではうまくいかないこともあると思います。 

絹張さんが上川町でやりたいことを実現するために、地域の中で大事にしていることはありますか。 

絹張さん:子どもっぽい言い方をすると「友達」と「思い出」をとても大事にしています。 いい思い出がたくさんあって、いい友達がたくさんいる人生は「いい人生」だなって僕は思っていて。 

「いい友達といい思い出ってどうやって増やすんだろう」と思ったときに身体的な移動を伴ったり、直接リアルで会うことがまず大事だなと。 

そしてあと1つ大事なのが、一緒に何かを作ることだと思っています。
 

物理的なものでなくても、イベントや飲み会でもいい。 「一緒に過ごす時間をいかに楽しくできるか」ということを一緒に考えて作り上げていくことで、その人が自分にとって大事な友達になったりその会自体が思い出になっていくと思っていて。 

先程、家入さんから長野県で色々なコミュニティに顔を出しているという話がありましたが、僕は上川町に移住してきてから 
「地元の方々とどうしたら仲良くなれるのか」 
「どうしたら一緒の時間を過ごせるのか」 
と考えたときに、町のお風呂屋さんに通ったり、商工会や青年部、消防団に入ったりしました。 

町の方々との接点を多くすることで一緒に話すことができるようになり、移住してきた自分をちょっとずつ受け入れてもらえるようになってきた実感があります。 

あとはちゃんと仕事を発注すること。 

コーヒー店を作るときに地元の業者の方に発注したのですが、外部の人に来てもらうため、上川町に馴染みのないようなものを取り入れていただくようにちょっと無理なお願いをしていました。 

最初は対立しましたが、そこで頑張ってコミュニケーションをとることで、それが一緒に作りあげたお店になったんです。 

ただの業者と顧客という関係性ではなく、喧嘩をしながらも一緒にお店を作っていったことでいい友達になれるし、お店を作ったこと自体がいい思い出になりました。 

コーヒー店の立ち上げでそういったことを感じたのでANSHINDOもまさにそういうやり方で作っています。 

家入:素敵なお話をありがとうございます。想いだけでも、経済合理性の繋がりだけでも駄目。両輪がかみ合って、まさに思い出を作ることによって形のなすものの意味が変わってきますよね。 

最後に、上川町の皆様もしくはSNSを通じて支援してくださった方へのメッセージや今後のチャレンジの宣言があれば、ぜひお願いします。 

絹張さん:まずは247人の方にご支援いただき、目標金額を大きく超えて達成することができました。本当にありがとうございました。 

僕たちはこの建物を作ることがゴールではなく、町に人が歩いている景色をつくることや、外から来た人たちがその町に住んでる人たちとそれこそ友達になったりいい思い出ができたりする場所をつくることを目指しています。 

ぜひ上川町に遊びに来ていただいて、ANSHINDOにも泊まっていただけたら嬉しいです。 

また、僕たちは今後も宿泊できる場所を市街地に少しずつ増やしていくことや町の人たちとの接点が持てる体験プログラムも同時並行で準備しているところなので、ぜひ参加していただいて上川町のことを好きになってもらえたら嬉しいです。 

家入:ありがとうございます。すごく熱量のあるお話でした。 

6月、ANSHINDOのオープンを楽しみにしています。

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