地域住民が「学生」となり、共に考え、共に動くきっかけとなったお祭り再生プロジェクトの実録をお伺いしました!
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北海道古平町で地域おこし協力隊(以下、協力隊)として活動し、地域の伝統文化や資源を活かしたプロジェクトに取り組む森雅人(もりまさと)さん。元々大学教授として民俗学を専門に持ち、地域のお祭りの再生や文化資源の利活用を通じて、地域に根ざした活動をされています。▶︎HIOKOSHIについてはこちら
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クラウドファンディングをやろうと思ったきっかけ
私の専門は民俗学です。「お祭り」はその研究対象でもあり、地域でも担い手や資金不足が深刻な課題でした。これまで通りの「寄付文化」だけでは限界があると感じ、新しいやり方を提示したいとクラウドファンディングに挑戦しました。「古い体質に風穴を開けたい」という思いと「こういうやり方もあるよ」と示すことで、地域の人々が自走し、資金調達や人材集めができるモデルを作りたかったんです。
地域おこし協力隊活動とのすみ分けは?
協力隊としてのミッションが「地域資源の発掘と利活用」だったため、クラウドファンディングはまさにその一環。ミッションと一致していたことで、役場からの協力も得られやすく活動しやすかったです。準備からプロジェクト公開までの流れや期間を教えてください
準備期間は正直、かなり長く感じましたね。前の年の11月頃から「やろうかな」と悩み始めていたので、お祭り開催の翌年7月まで、約8ヶ月間ほどです。クラウドファンディング自体が初めてだったので、「できなかったらどうなるんだろう」という不安が大きかったんです。CAMPFIREの担当者さんが非常に親身に相談に乗ってくれて、背中を押してくれました。担当者さんの丁寧なサポートがあったからこそ、私でも成功できたと感じています。
どんな体制・チームで取り組みましたか?
着任当初から、「こんなことやりたいよね」と話せる地元の仲間が徐々にできはじめました。イベントの実行委員などにも加わり、地域の集まりで「クラウドファンディングをやろうと思っている」と発信していくと、「じゃあ手伝うよ」「私はこれできるよ」と自然に協力者が集まりました。SNSでグループを作って、得意なことを持ち寄る形で進行しました。時には意見がぶつかったりして進行していきました。リターンはどのように決めましたか?
CAMPFIREの担当者さんに「地域振興がミッションなのだから、地域の特産品などをリターンにするといいですよ」というアドバイスをいただき、そのアドバイス通りに、地元の加工品や農産物、手作りの御朱印やお守り、体験などをリターンに盛り込んでいきました。まさに先述のグループでアイディアを出し合い、デザインも自分たちで考え、オリジナルの御朱印やお守も作りました。地域の書道の先生や、地元のおばちゃんが古平町で採れるピンク色の綺麗な石「桜マンガン」を加工してアクセサリーを作ってくれるなど、地元の人の手を借りて、共につくったリターンです。

人気のリターンや支援してくれた人はどんな人?
一番人気だったのは御朱印で、次いで古平特産のツブや野菜も平均的に好評でした。中でも印象深かったのは、3万円の有料桟敷席に申し込んでくれたご家族ですね、古平出身のおばあちゃんのために家族で訪れてくれた方々が心に残っています。支援は全国からあって、何かご縁を感じて遠くからでも地域を思い応援してくれる、これはクラウドファンディングの力だと感じましたね、今まで外の人と繋がるなんてありませんでしたから。
広報や集客で工夫したポイントは?
本当にありとあらゆる媒体を使い尽くしたという感じです。一番大きかったのは、やはりNHKをはじめ、様々なメディアで取材をしてもらえたことです。古平の祭りは本当に珍しいので、これを知らなかった人たちも、テレビを見たら「すごいね」と共感してくれました。あとは、SNSでの拡散も非常に効果的でした。地元の飲食店の方々も、お店にチラシを置かせてもらったり、お客さんに紹介してくれたりして、アナログな面でも協力していただきました。クラウドファンディングをしてよかった事
一番は、やはり「人の繋がり」が広がったことです。テレビに出たことで、小学生から声をかけられるようになり、少し有名人になっちゃいました(笑)。資金調達はもちろんですが、それ以上に、今まで接点のなかった人々と繋がりが持てた事が大きな収穫でした。▶︎ 無料でスタッフに相談する
クラウドファンディングをして大変だった事
他のイベントとクラウドファンディングの準備が同時期に重なり、頭が混乱するほど忙しかったです。また地域の保守的な雰囲気への説得に時間がかかりました。例えば、「境内で花手水(はなちょうず)をやります」と言うと、「カラスが花を散らかすだろう」と反対意見が出たり。でも、対策を講じて実行したら、今年は「いつから始めるの?」と声をかけてくれるようになりました。乗り越えるのは大変でしたが、その分、乗り越えた時の喜びや嬉しさの方が大きかったですね。
▶︎ 集客などのサポートはこちら資金調達以外に得られた事
クラウドファンディングは、「地域の課題を見つめ直す学びの場」だと思いました。人口減少でお祭りができないという“問題”を、「どうすればできるか」という“課題”に転換し、解決策をみんなで考える。そのプロセス自体が、地域づくりの実践でした。クラウドファンディングは、地域が主体的に行動するための優れた教材であり、「地域学の入り口」とも言えるなと思いました。もし次回プロジェクトをするなら気をつける事
まさに現在、今年のお祭りプロジェクトをしております。今年はお祭りに加え、民俗資料室の保存や利活用など文化財全般に対象を広げました。前回の経験から改めてリターンの内容が重要だなと思い、今回は「体験」を取り入れる工夫をしました。資料室の展示を私が案内する「ガイド付き見学」や「お祭りのボランティア体験」です。「お祭りのボランティア体験」は今のところ応募がゼロなのですが、ボランティアツーリズムなど体験型のリターンは地域を知ってもらう上でも今後も必要な要素だと思っています。▶︎今年のプロジェクトページ
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アワードを受賞して地域や周囲の反応はいかがでしたか?
子どもたちからも声をかけられたり、町の名前の認知度が上がったと実感しています。「古平(ふるびら)」と読める人が少なかったですから。「古平にはすごいお祭りがあるよ」と胸を張って話してくれる人が増えたような気がしています、地域に自信が生まれたことが何より嬉しいですね。
地域おこし協力隊として地域との関わり方
着任した当初は大きな夢を抱いていましたが、実際に進める中で、色々な壁があったり本当に失敗の連続なんですよね、協力隊って。そこで重視するようになったのが、「今ある地域の魅力を、地域の人と一緒にどう引き出すか」という視点です。「自分がいなくなったら何も残らない活動では意味がないな」と。大がかりな事業ではなく、無理なく続く形で「共につくる」関係を築くことで地域との信頼関係も得られたと思います。何もしなくても地域は十分魅力的なんですよね。今後の展望を教えてください
協力隊卒業後も「共に創造していく」活動を継続していきたいですね。先ほどクラウドファンディングは、「地域の課題を見つめ直す学びの場」と言いましたが、古平の人がみんな“学生”のような気持ちで学び合えるといいなと思います。「この町がダメなんじゃなく、発想が足りないだけ」地域のみんな主体的にこう考えられることが大切かなと思います。現在民泊経営とNPO活動もしていますが、古平町を拠点とした会社設立も検討しています。まだまだここで活動を続けていきたいと思っています。▶︎クラウドファンディングページはこちら









