2020/04/05 00:02

信濃毎日新聞 〜 働く 私の信条 〜

子も親も笑顔咲かせて


お母さんの笑顔こそ、子どもの元気につながる―。県立こども病院(安曇野市)などで治療を受けるこどもの母親を支援しようと、安曇野市に1月、患者の家族が滞在できる施設「マザーハウス」を開設しました。 

 

自分の経験を生かし、心が休まり、新たな交流が生まれる場所に育てたいと思っています。


小児医療が発達して助かる命が増えた一方、入院に付添う家族の負担は重く、食事や睡眠が十分に取れずに、体調を崩お母さんが少なくありません。 

 

遠くから通っている場合、知り合いもいない土地では心がふさぎ込みがちで、助けを求められません。私もそんな一人でした。


長女(6)の心臓に異常が見つかったのは、妊娠7ヵ月のときでした。私は仙台市出身で当時は豊丘村で暮らしていました。出産前はこども病院へ高速で通い、出産後、長女は入院を繰り返しました。


入院生活が長くなると、想像以上に疲労やストレスがたまります。子どもが苦しい時、親は自分のことを考えてはいけない-という抑圧的な心理になりがちです。 

 

一方、他のお母さんと少しでも思いを共有できると心が軽くなります。こども病院の敷地内にも宿泊施設がありますが、利用には制限があり、気楽に集える受け皿の必要性を強く感じました。

 

昨年、豊丘村から安曇野市豊科に引越し、8月に一般社団法人「笑顔の花」を設立。マザーハウスはこの法人が運営しています。自宅の一部を改装し、旅館業法上の簡易宿所の許可を受けました。 

 

こども病院から車で5分ほどです。クラウドファンディングを活用し、目標額の300万円を調達。他の寄付と合わせ、開設の初期費用に充てました。


利用者には前向きな気持ちになってほしくて、インテリアは白やピンク、黄緑など明るい色を選び、配置しました。 

 

和室2室で寝泊まりでき、台所や風呂だけの利用、短時間の休憩にも使ってもらえます。患者の家族が一泊1500円で、一度に2組が宿泊できます。


闘病中の子どもを持つお母さんに限らず、就労支援や自己実現の場にもしたいと考えています。せっけんを花の形にアレンジする「フラワーソープ」づくりといった技能の習得を目指す講習会も開いています。


技術を身に付ければ自宅で働いて収入を得ることにも繋がります。


私自身、長女の入院などのでお母さんを支える社会の制度が行き届いていない現状を実感しました。病気と闘う子供もお母さんも共に命が輝けるよう、心を繋ぎ、笑顔の花を咲かせたいです。  


 


安曇野市で病児家族支援施設「マザーハウス」運営 

一般社団法人  笑顔の花 代表理事 茅房 栄美


仙台出身で、高校卒業後に都内のデザイン専門学校に進み、その後印刷会社に就職。都心でも生活に体調を崩しがちだったこともあり、自然豊かな信州で暮らしたいと2003年、飯田市に移住。下条村、豊丘村を経て、現在は安曇野市で暮らす。「笑顔の花」代表理事で、昨年の台風19号で被災した長野市の母子などの支援もしている。