2019/09/17 20:30

人々の移住はいまや世界中で起きている現象です。その多くは発展途上国から先進国への移住です。ネパールから日本への移住も例外ではありません。社会的文化的違いが大きい場所に移り住み、周りに合わせて暮らしていくことは簡単なことではありません。
さらに、移り住んだ国の保健システム、教育システム、その他生活の中で感じる違いを消化しながら生きていくことは移住者にとってチャレンジそのものです。特に女性は妊娠期や出産に際し必然的に保健サービスの利用者となるため、その際生じる問題の犠牲になりやすい傾向にあります。
日本で外国人として生活する中で私個人としては、妊娠および産後に下記に述べるような様々な難しい問題に直面しました。

妊娠中のケア
妊婦健診は健やかな胎児の成長に欠かせないものです。ご存じのとおり、ネパールと日本の保健システムにはとても大きな違いがあります。そのうちの一つが、女性が妊娠した時にすべきことの違いです。多くの外国人たちはこの問題を抱えると思います。
日本では妊娠すると母子健康手帳が発行され、保健サービスを受けるためのクーポンや様々な補助を受ける権利を得ることができます。しかしながら、どこにいつ申請にいけばよいのか、自治体からの補助はどのようなものがあるのか、どこでどのようにそのサービスや補助を受けることができるのかなど、外国人にはとっては複雑すぎて理解が難しいのです。すでに保健サービスを受けたことのある友人からの話と、実際自分の住む自治体で受けられるサービスや補助には違いがあることにも気が付きました。
日本語の理解が十分ではないために、医師と患者としての会話も難しく、しばしば妊娠経過の確認の妨げになることがあります。私たちは妊娠の経過や胎児の状態について聞きたいことや知りたいことが沢山あるにも関わらず、日本語によるコミュニケーションに自信が持てないためにそれらを聞くことをためらい、諦めてしまいます。そのため、ネパール人女性たちは誰かに頼るしかなく、多くの場合は夫に妊婦健診のたびに通訳として同伴してもらう必要があるのです。

産後ケア
出産する際にも、それぞれの自治体が補助する施設利用に関する情報はとても重要です。
例えば、出産を自然分娩で行うか、または帝王切開で行うかによってもそれを取り扱える医療施設は異なりますが、そのような情報を知らないことも多く、サポートを必要とします。
また、出産後には自治体や大使館への出生届や新しいビザの届け出などいくつか書類を作成し提出しなければなりませんが、知識や時間の欠如により手間取ってしまうこともあります。医療にかかわらない部分はよく後回しにされがちですが、新生児や母親に必要なものを買うために店を探し、何を、いつ、どのように、どこで買いそろえていけばよいかといったことも新米の両親にとっては大きなハードルなのです。

さらに移住者の産前産後の心理的負担も見落とされがちです。私たちはその期間に経験するありとあらゆる困難な状況によって、達成感や自信をそがれ、自分自身の価値を低く感じてしまう傾向にあります。さらに移住者には、健康的な食生活、母子の健康と衛生、母乳栄養、予防接種、子供の世話、金銭面など、直面しうる問題が沢山あります。

私たちは移住者の母と子をサポートする活動を続けており、このプロジェクトを続けるために切実に財源のサポートを必要としています。私たちは日本を始めとした世界中の多くの心ある人々が、日本に住んでいる外国人の母と子をサポートする活動を理解し、支援してくれることを願っています。


Khatiwada Januka  

Female promoter(女性普及員)
国際医療福祉大学医学研究科 公衆衛生学専攻助教