2020/06/28 20:17

デメテルハーブティー代表の西口です。今日は、コッコン州で2018年から取り組んでいる、学校ハーブ園プログラムの新たな試みについてご紹介させていただきます。

デメテルハーブティー(Roselle Stones Khmer社)では、日本財団の伝統医療活用プロジェクトチームで活躍され、現在NGO教育支援センター KIZUNAの事務局長である高田忠典先生が提唱されてきた学校の薬草園プロジェクトのコンセプトを受け継ぎ、シェムリアップやカンポットなどの学校でハーブ園を展開してきました。

KIZUNAが活動を展開しているコッコン州では、学校保健室を設置し、保健の授業を開始する準備が進んでいます。保健室には、授業中に体調が悪くなった生徒のためだけでなく、地域で病人が出た際に最寄りの医療機関とつなぐための橋渡し的な役割も期待されています。これまでなかった保健室、保健の授業を始めるには、教室や備品の確保、授業を実施できる先生の養成など、課題がたくさんあります。国からの予算もまだない状態ですので、維持管理、運営にかかる費用の捻出も懸案事項です。

そこで私たちは、学校ハーブ園プロジェクトをコッコン州の学校で展開し、乾燥ハーブの買い取りからの収益で学校保健室を運営していくというアイディアに、会社として参画させて頂くことになりました。

2018年6月、学校ハーブ園をKIZUNAのワークショップで集まった先生や地域の代表に初めて紹介させてもらいました。シェムリアップのバイヨン中学校での成功例を紹介し、システムについてお話したところ、どの学校もとても興味を示してくれました。コッコン州下の学校の校長、村長などが集まったワークショップで学校ハーブ園プログラムについて紹介(2018年)

学校ハーブ園プロジェクトには、1.学校の美化緑化、2.伝統文化の継承、そして3.運営費の捻出という3本柱があるのですが、特に校庭のハーブを天日乾燥させることで収入が生まれる、という点に強い関心が集まりました。どこの学校も予算不足がひとつの大きな課題なので、彼らの関心の高さも納得できます。ハーブの天日乾燥作業は、コツをつかむまでどこの学校でも何度か失敗するものなので、その点を事前に理解しておいてほしいという思いがありました。まずはマニュアルに沿って各学校でやってみて、乾燥の手順や乾燥の頃合いなどを体験してもらう事になりました。

ワークショップの休憩時間にハーブティーの試飲も。先生方も興味津々(2018年)綺麗な青い花が咲く蔦性のバタフライピーというハーブは、校庭で緑のカーテンを作るのにも最適で、すでにいくつかの学校で栽培していました。花はハーブティーの原料としても使っているので、まずはバタフライピーの花で天日乾燥体験をする事になりました。

バタフライピー花は、美しい自然の青色のお茶で人気実は、バタフライピーは乾燥の手順がレモングラスなどの他のハーブに比べて少し煩雑です。そのため、最初はレモングラスかパパイヤの葉など、比較的簡単なハーブでやってみてはどうかなという提案もしていました。ですが、バタフライピーのほうが断然綺麗な色で、さらに1キロ当たりの買い取り額も高いという事もあって、どの学校も自分たちはマニュアルに沿ってやるから大丈夫!と自信満々でバタフライピーを選択しました。そして結果は・・・どの学校もうまく乾燥できず失敗に終わります。

乾燥は花びらが重ならないように、手で一つずつ慎重に作業どこの学校でも、始めは何度か失敗し、そこからコツをつかんでうまく乾燥でいるようになるのですが、やはりバタフライピーはハードルが高すぎました。何度やってみてもうまくできないバタフライピーにすっかりやる気をそがれ、2019年の前半は、ハーブ園への取り組みがほとんど休止状態になってしまいました。

どうやったら各学校にもう一度やってみようという気持ちを取り戻してもらえるか、KIZUNAのスタッフさんたちと協議を重ね、まずは低い目標金額と、乾燥が簡単にできるハーブのリストを作って、もう一度ワークショップをしてみよう、という事になりました。

バタフライピーよりも乾燥の手順が容易なハーブをリスト化し、少量で再度チャレンジしてみようと切り替えました。すでに1年半ほど失敗を繰り返している中で、多くの学校はやる気をそがれています。そこで、KIZUNAスタッフと協議した結果、まだ熱意を持って取り組んでいる8校をモデル校とし、まずはこの8校で集中して行ってみようという事になりました。8校が成功すれば、それを見た他校もまた改めてやる気を盛り返してくるだろう、というのが私たちの計画です。

炎天下、先生方と作業手順をおさらい(2019年)結果は成功。2020年の1月、2月にかけて、8校のうち5校から、乾燥ハーブが届きました!品質的に課題があったのはこのうちの2校で、今後フォローアップをして品質が改善されたら買い取ることになります。残りの6校の中には、「うちの学校はもっと作れる!」と張り切って予定していた以上に作り始めた学校も出てきました。全体の調和を見ながら作ってもらわないといけないので、これから調整が大変になりそうです。でも、2年かけてここまでこぎつけられて、学校ハーブ園が一気に拡大し、私たちもワクワクしています。

事務所までハーブティーを配達してくれた先生と、受け取ったデメテルハーブティー工房スタッフ(2020年2月)残念ながら、3月に入るとコロナ禍の影響でカンボジア全土で学校が休校。学校ハーブ園も、開校まで一度休止です。カンボジアの学校が再開するのは、今年の11月頃かと言われています。11月というと、ちょうど雨季が終わった直後くらい。雨季の雨で成長したハーブを使って、学校再開後に改めてハーブの乾燥ができるようにと計画しています。