2017/10/19 12:35

 10/28 (土)開催の『自分で決める!薬を飲む飲まないキャンペーン』関連企画 『日本の精神医療の歴史とこれから』の講師 野田正彰 先生の著書『うつに非ず(あらず)』を紹介します。

 

 

うつ病をはじめとする精神疾患が珍しくなくなったのは恐らく21世紀以降のことと思います。自分の知り合いや家族をたどれば一人か二人うつや統合失調症、その他何らかのメンタルの診断を受けた人がいるのも珍しい話ではありません。

この本は、そんな膨れ上がる精神疾患患者数の前に「はじめに」で以下のように問いかけています。

『精神疾患とは何か。身体疾患といった大雑把な捉え方はしないのに、精神疾患なる言葉が使われるのは何故か。うつ病の診断基準は。うつ病とは何か、市民に共通理解はあるのか。今日、うつ病と言われているものは全て精神疾患なのか。精神科医療も不十分なのに、精神に保険、さらに福祉をくっつけた精神保健福祉とは何か。それは誰のためのものか 』(p5より)

 

このような問いをもとに、うつ病患者は増えているのか、社会問題が個人の病気にすり替えられているなどの議論が展開されます。

p159
近年、即効性を求めて、1960年代に行われていた電気けいれん療法が再び広がる傾向にある。(中略)ところが患者から治療について承認を得る必要性については述べられていない。電気けいれん療法による記憶障害や思考の抑制は、とりわけ知的産業に就いてる人にとっては耐え難いものである。

p163
他科の医師は精神医学についての知識をほとんど持たず、投薬後の症状の変化を判断する精神病理学的能力も乏しい。にもかかわらず、彼らに抗うつ剤投与が推奨されてきた。


p21
人口一万人に対する精神病床数も、フランス9床、イギリス5床、ドイツ5床、アメリカ3床、イタリア1床(OECD Health Data 2012, 09年のアメリカ以外は2010年)に対し、日本では27床になる。
入院期間も、「精神及び行動の障害」における退院者の平均在院日数が、イギリスは51日、ドイツ24日、イタリア12日、アメリカ7日、フランス6日(いずれも09年、OECD.Stat)だが、日本は298日(2011年、患者調査)と極端に長い。日本で5年以上入院させられている患者は11万人を超える。
他国の患者より病気が重いわけではない。ただ病院に閉じ込められているだけである。

p37
本来のうつ病は、ほとんどの人が年に1回か2回ひく風邪のような軽いものではない。心の風邪と言われながら、強力な向精神作用を持つ薬が精神科外来を訪ねた人に多種類、長期に投薬されている。風邪で多剤、長期服用を進められはしない。

p38
うつ病は全体的に意欲や感情が低下するもので、対象に応じて意欲が湧いたり、感情が湧いたりすることはあり得ない。

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さて、講演会ではどのような「これから」が示されるでしょうか。

 

※写真は出版社サイトより引用
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062184496