2017/10/28 07:08

薬を飲む・飲まないのか、どの治療を選択するのか、または、選ばないのか。自分で決めると周囲に言ったときにそれはおかしいと思われるならまだマシかもしれません。それどころか、医師がいうことに黙ってしたがっておけ!と怒り出す人すらいるのが実際かと思います。

ですが、薬の副作用の問題であったり、治療方針と本人の希望が違っていたりするなどの問題があるので、本人が選びたい場合があります。病気の治療は時として今後の人生に大きな影響を与える重要な選択です。自分の希望を述べることは「おかしなこと」・「悪いこと」なのでしょうか。


実は、日本の法律は「自分で決める」ことを否定していません。それどころか「自分で決めること」を念頭に置いた内容になっているように見えます。


医師法第22条では

第二二条 医師は、患者に対し治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合には、患者又は現にその看護に当つている者に対して処方せんを交付しなければならない。ただし、患者又は現にその看護に当つている者が処方せんの交付を必要としない旨を申し出た場合及び次の各号の一に該当する場合においては、この限りでない 

と書かれています。(各号は省略)
前半部は投薬の必要がある場合は医師は患者に処方せんを交付しなければならない、と処方せん交付の義務の話です。一方で、後半部の「ただし」以下の部分では、本人などが交付を必要としない申し出があった場合は、「この限りではない」としています。

となるとこの法律は少なくとも、本人が交付を必要としない申し出をする場合を想定しているのです。医師が服薬を指示しても患者が希望しない場合もここに含まれるのではないでしょうか。

また医療法第一条では

第一条 この法律は、医療を受ける者による医療に関する適切な選択を支援するために必要な事項、医療の安全を確保するために必要な事項、病院、診療所及び助産所の開設及び管理に関し必要な事項並びにこれらの施設の整備並びに医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携を推進するために必要な事項を定めること等により、医療を受ける者の利益の保護及び良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図り、もつて国民の健康の保持に寄与することを目的とする。

とあります(太字は筆者)

冒頭から「医療に関する適切な選択を支援するため」と選択することが念頭に置かれているのです。もちろん、日本医師会は以前に紹介した患者の権利のためのリスボン宣言にも賛同しています。リスボン宣言も本人の選択に関する言及がありました。

となると環境的には「自分で決める」ということは何か特殊なことでも珍しいことでもなく、ごくごく当たり前のことのはずなのです。

セカンドオピニオンの話をするだけで嫌な顔をされたり、薬を飲まないと決めたら周りから強要されたりするのは、そもそもの法律上の理念からもかけ離れてしまっていないでしょうか。