2022/08/08 14:04

 2011年の東日本大震災、自治体として最大の被害を受けた石巻市の中でも雄勝地区の被害は特に甚大でした。安全のために―、必要なこと、重要なことと理解しつつ、生業の場であり豊かな恵みをもたらしてくれるものでもある海の前にそびえたつ巨大な防潮堤に対して、複雑な思いを抱く住民の方も少なからずいらっしゃいます。しかし、考えの異なる人々を、あるいは海と陸とを分断するのではなく、彩り、癒し、寄り添おうとする安井鷹之介さんのアートは素晴らしく、そして海岸線の美術館の試みはとてもユニークです。

 震災以前から、我が国の特に地方における疲弊は進んで久しく、それは石巻、雄勝も同様でした。そういう「地方」においてこそ、人をときに包摂し、ときに勇気づけ、ときに変革を促すものとして、アートの力は大きなものです。

 こちらの試みは、2年前に一度中止されています。それはコロナ禍という事情もありましたが、地域とのコミュニケーションが足りなかったという判断もあったと伺っています。多くの時間と労力を費やし、目標達成寸前まで進んだところで中止というのは、苦渋の決断であったろうと推察します。しかし、一度の中止を経て、丁寧な対話を積み重ねての再挑戦だからこそ、この「美術館」がより多くの方に愛される本質的なものとなる可能性を増したのではないでしょうか。皆様の挑戦を心から応援しています。

一般社団法人ISHINOMAKI2.0 代表理事/Reborn-Art Festival実行委員会 事務局長
松村豪太