はじめに

 4年前に特別支援学校教員を定年退職し、児童発達支援の事業所を開設いたしました。これまで45年にわたって障がいのある子どもたちの発達支援にかかわってきました。役に立つと思われる様々な理論や技法を学び、学校以外にも多くの実践会を設け、時には子どもたちにつらい思いを強いながらも必要なこととして取り組んだこともありました。社会で生きがいを持って生活していけるようにと難しい課題にも向き合い、問題の解決を図ってきました。それは保護者の方にとっても、自分にとってもさらには当事者である子どもにとっても、大変な思いの中で進めていくことになりました。

 今にしてようやく、楽しい発達支援の扉を開くことができました。80名近い子どもたちと日々かかわりながら、子どもたちが好きな遊びを通して確実に成長していく様子を見させていただいています。子どもたちが遊びの中で身に着けていく力として「非認知能力」があります。「楽しむ力」「興味を持つ力」「頑張りぬく力」「人とつながる力」などは、生涯にわたってその子の生き生きとした生活を支える力となります。その力は生活や学びの底支えとなる力でもあります。

 遊びを手立てとした楽しい発達支援について実践と研究を行い、そのノウハウや効果を広く発信していくことが、自分の人生のまとめでもあると考えました。実践研究をさらに発展させ、書籍や特設サイトにて発信していきます。是非、皆様のお力添えをお願いします。

解決したい社会課題

 発達支援に取り組んできた中で、社会的課題と感じてきたのが保護者の負担や疲弊感です。障害による特性などが理解されず、周りからの偏見や誤解に向き合わざるを得なくなるという現実です。何とかしなければという思いが重くのしかかり、しつけや教育という名目で子どもに向き合い続け疲弊していきます。我が子がかわいく思えなくなるようなこともあります。

 どんな子どもたちも、好きな遊びに生き生きと取り組んでいくことで、自分の持つ力を発揮できるようになり、そこからの学びや自信が新たな学びやチャレンジ、心の余裕などを生み出していきます。その姿は保護者や支援者にとっても大きな喜びであり、希望となります。現在、児童発達支援にて80名近い子どもたちの支援を行っていますが、毎日が笑いと感動の日々です。

 発達支援は、つらいもの、頑張るものではなく、楽しいものであることを、是非広く伝えていきたいです。

 上の図は、児童発達支援の事業所で保護者の方に発達支援の進め方を説明するために制作しました。事業所の名前「きんぎょ」から、「きんぎょモデル」と呼んでいます。

 まず、生きていくための基盤として外せないのが、健康状態の維持や体調管理があり、そのための取り組みが必要です。つぎに発達に必要な要素として感覚や運動機能の働きがあります。必要に応じて調整を促していきます。感覚統合法などがここに当たります。

 その上に「心の安定」がきます。安心して外界と向き合っていくためには、「心の安定」が欠かせないものであり、ここにはアタッチメント形成が大きく影響していきます。心が安定し、外界と向き合っていく力が発揮できるようになることで育ってくる力が「非認知能力」と「認知能力」です。イメージしにくい言葉でもありますので、保護者の方にもわかってもらいやすくするために、「心の育ち」と「学びの育ち」ということばに置き換えました。

 子どもの様子を見たり、保護者の方からの話などを参考にこの図であればどのあたりに課題があるのかを考えます。そうすることで子どもの全体像を把握し、対応を考えていきます。実際に圧倒的に多いのが「心の安定」や「心の育ち」の部分になります。非認知能力を育てるためには、自発的主体的な遊びが有効とされており、それは実践の中でも確認できていることなので、その子の遊びをいかに充実させていくかが取り組むべき課題となります。

 好きな遊びができることは、「心の安定」にも寄与します。そこで得られる満足感や充実感が心のゆとりを生み出し、ともに楽しむことで信頼関係も生まれてきます。アタッチメントの形成にも役立つこととなり、「心の安定」につながります。

 好きあ遊びを思いっきりすることで、興味や好奇心、意欲やチャレンジ精神、成し遂げる力などが育ってきます。そうした資質がさらに「知りたい」「学びたい」というい思いを高め「学びの育ち」へとつながってきます。意欲があってこその「学び」であり、やるきのないような状態での学びは効率的ではありません。

 発達支援の手立てとして「好きな遊び」「自発的な遊び」を取り入れていくことで、それは子どもにとっても「楽しい発達支援」となり、子どもが生き生きと活動している様子が、保護者にとっても、支援者にとっても「楽しい発達支援」となります。


このプロジェクトで実現したいこと

 過去4年間の取り組みを通して、実践場面で見られる遊びの姿を整理することができました。それは、「感覚的遊び」から始まり、「発散的遊び」、「玩具遊び」、「からかい遊び」、「人形遊び」、「ごっこ遊び」と分類することができ、大まかな遊びの流れとなっています。それぞれの遊びにはそれぞれの意味があり、学ぶべき内容、乗り越えていくべき内容があります。それぞれの遊びが充実していくことで次のステップへ自然に移行していきます。経験上では、その際の意図的介入はさほど必要ではありませんでした。

 プロジェクトではそれぞれの遊びについての実践研究を深めるとともに、それがその子の得意や個性を伸ばすこととどうつながるのか、効率的学習形態につながる学びへの移行はどのように進めていくのかについて検討していきます。「遊び」と「学び」の架け橋となるものは何なのか、この部分についての先行研究がほとんどない状態ですが、発達支援の必要な子どもたちはそのプロセスを細かく示してくれます。それは学びの基盤ともなる能力であり活動です。その部分を明らかにしていくことで学びの基礎について整理していきます。さらにそれが整理されることにより、「遊び中心の発達支援」に安心して取り組むことができるようになるのではと考えています。

 現在まとめ始めている「楽しい発達支援デジタルコンテンツ」は、このような形となっています。より使いやすい形やまとめ方を工夫しながら完成を目指していきます。

 上部にメインメニューを配置し、中にある項目をクリックするとその項目に応じたサブメニューが左側に表示されます。サブメニューの中から調べたい項目をクリックすることで、中央のメインスペースに情報が表示されることになります。現在準備しているメインメニューは18項目です。実践研究が進む中でさらに項目が増えていく可能性があります。

 データ量がかなり多くなることが見込まれていますが、DVDディスク1枚にすべてを入れられるようにまとめます。「楽しい発達支援デジタルコンテンツDVD版」は、5000円にて販売予定です。

 また、デジタルコンテンツとは別に、「楽しい発達支援ベーシックガイド」を書籍としてまとめます。ここには楽しい発達支援の基本的考え方や取り組み方の解説を掲載していきます。保護者の方や発達支援初心者の方にも、分かりやすく伝えていけるよう、図表や写真などたくさん取り入れ解説していきます。100ページ位を目標にまとめていく予定です。自費出版としてネットや研修会などで2000円で販売していきます。

資金の使い道

 実践研究のための、玩具や教材の購入資金・・・・・・・・・15万円

 環境づくり、環境整備のための機材、資材の購入費・・・・・10万円

 研究をまとめた冊子の製作費・・・・・・・・・・・・・・・10万円

 研究を公開するサイトの製作、管理費・・・・・・・・・・・・5万円

 広報費・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5万円

 手数料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5万円


実施スケジュール

2023年1月中旬から3月末 「楽しい発達支援」のための研修会の開催と資金協力の呼びかけ(10回程度)

2023年1月下旬から 実践研究のための会場準備と試験的運用(必要なものリストの作成)

2023年2月上旬から 「楽しい発達支援」実践会の定期開催(月2回程度)奈良県内2か所を予定
          「楽しい発達支援ベーシックガイド」の作成

2023年3月から   「楽しい発達支援デジタルコンテンツ」の作成に向けてまとめる作業、公開サイトを開始
          「楽しい発達支援ベーシックガイド」の完成。PDF化してリターン。印刷作業へ。 

2023年4月     「楽しい発達支援デジタルコンテンツ」の完成。リターンの発送。  


リターン

楽しい発達支援について手早く簡潔に知りたい方に
3月上旬に「楽しい発達支援ベーシックガイド」のPDF版を添付ファイルにてお送りいたします。

冊子として手に取り、とりあえず手軽に試してみたい保護者の方、指導員の方にお薦め

3月上旬に「楽しい発達支援ベーシックガイド」のPDF版を添付ファイルでお送りし、3月下旬に冊子を郵送いたします。

本格的に「楽しい発達支援」に取り組んでみようと思われるベテランの指導員、教員の方にお薦め

4月上旬に「楽しい発達支援ハンドブックデジタルコンテンツ版」をDVDディスクに入れて郵送いたします。

ベーシックガイドで進め方の基礎を確認しながら、本格的に取り組みたい保護者の方、指導員、教員の方にお薦め

3月に「楽しい発達支援ベーシックガイド」PDF版を添付ファイルと郵送でお届けします。
4月上旬に「楽しい発達支援ハンドブックデジタルコンテンツ版」をDVDディスクに入れて郵送いたします。

解説動画付きで、自分で使うだけでなく、保護者の方や指導員の方に指導的役割を果たされる方にお薦め

すべての返礼品に加えて、楽しい発達支援の解説動画(1時間×10タイトル)をDVDにまとめてお送りいたします。

最後に

 自傷や他害、強いこだわりや言葉の遅れなど、難しい課題をもつ子どもたちが自分の好きな遊びを通して生き生きと成長し、自ら課題を克服していく姿は感動しかありません。その姿は保護者や支援者をはじめ、周りの人たちを笑顔にしていきます。しつけや社会参加のための力をつけていくことは重要ですが、それはその子に合うやり方で柔軟に進めていく必要があります。無理に身に着けさせようとしても、互いの負担ばかりが多くなり、決して良い結果とはなりません。

 楽しい発達支援は、究極の方法かもしれず、勇気のいるやり方かもしれません。自分たちが実践を進めていく際にも、本当にこれでいいのかという思いがありました。でも結果は子どもたちが示してくれました。デジタルコンテンツの中には多くの事例が示されています。是非、これからの発達支援の在り方として取り入れていっていただきたく思っています。

チーム/団体/自己紹介・活動実績など

 関西発達臨床研究所は、2023年4月より一般社団法人大和伸進会を離れ、独立して実践と研究を進めていくことになります。新たな研究員を迎え、次のステップ、次の展開を目指していくことになります。

 2010年10月、前身である「関西発達臨床研究会」が生まれました。故宇佐川浩先生が残された「感覚と運動の高次化理論」を広く紹介し、実践と研究を行っていくことが目的でした。2016年にはパナソニック教育財団からの助成金をいただき、発達支援のための教材研究と教材共有システムの構築に取り組みました。研究の成果については、日本特殊教育学会での定期的自主シンポジウムの開催や日本音楽療法学会での自主シンポジウムの開催に取り組んできました。また、日本全国での研修会を実施し、「感覚と運動の高次化理論」を紹介する活動も続けてきました。

 2019年4月より一般社団法人大和伸進会の中に入り、実践研究と研修会の開催に取り組んできましたが、コロナの影響により研修会の開催ができなくなりました。児童発達支援事業所にて実践を続けていく中で、非認知能力を育てていくことの重要性を認識し、自発的遊びを中心とした発達支援へとシフトしていきました。ここから生まれてきたものが「楽しい発達支援」です。

 子どもたちが生き生きと自分の思う遊びを展開していく中で、興味や好奇心、意欲が育ち、自信や満足感、自己肯定感へとつながっていきました。お母さんたちにどんどん笑顔が広がっていき、育児を楽しむ様子がよく見られるようになりました。発達支援というと、「つらいもの」「きびしいもの」「むずかしいもの」といった印象もありますが、「楽しい発達支援」もあるということを実感しています。

 研究所が独立して新しいスタートを迎えるにあたり、今回のプロジェクトは今後の指針を示すものであり、活動を進めていくための活動資金を集めるものでもあります。これまでの研究を「個別と集団のつながり」「遊びと学びのつながり」と展開していくことによって、学校生活とのつながりや卒業後の生活とのつながりも見えてきて、社会的意味付けもできてくるのではと考えています。

 このようなプロジェクトの趣旨をご理解いただき、賛同してくださる皆様のご支援をいただければと思います。

よろしくお願いします。

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