はじめに・ご挨拶

 さて、平成三十年三月十七日(土)多くの方にご支援をいただき、鴨谷野球場におきまして、華やかに斎行されました「第二回美多彌神社流鏑馬祭り」より、早くも四年が過ぎ去りました。本来であるならば、令和四年三月十九日に「第三回美多彌神社流鏑馬祭り」を斎行する予定でありましたが、新型コロナウイルス感染症の流行によりやむなく中止となりました。現在も新型コロナウイルスは型を変えながら感染を拡大し、未だ予断を許さない状況が続いておりますが、徐々に日本各地で対策をとりながらのお祭りが再開されてまいりました。

 当流鏑馬保存会でも総代会や各関係機関との中で流鏑馬再開に向けての協議を重ねてまいりましたが、この度、文化庁の「地域の伝統行事のための伝承事業」に採択され、令和五年三月二十六日(日)に鴨谷野球場にて『第三回美多彌神社流鏑馬まつり』を斎行する運びとなりました。

 万全な新型コロナ対策を講じ、安心して流鏑馬祭りが斎行できますように邁進して参りたいと思いますので、つきましてはご賛同を賜り、格別なご支援、ご協力を茲に深くお願い申し上げます。

 令和四年十二月吉日  美多彌神社流鏑馬保存会 会長 藤田 茂


美多彌神社 流鏑馬の由来

 平安時代の末期になって河内国矢田部(現東住吉区)から移り来た大中臣助正(おおなかとみのすけまさ)がこの地の田畑の開発を進め、その子助綱(すけつな)の代になって河内国天野山金剛寺に寄進し、開発地「和田荘(みきたのしょう)」の荘官の身分を得て、子々孫々まで相伝したと伝わっています。大中臣和田(みきた)氏は、金剛寺のほか、奈良興福寺・春日大社を通じて摂関家(せつかんけ)ともつながりを持ち、それらの庇護を受けつつ、自らの開発地の保全に努め、また鎌倉幕府の御家人となって、一所懸命の地、和田谷を守る土豪武士として行動したようです。特に和田文書の中には、南北朝・室町期の、武士として各地に参戦した記録も多く残されています。

 この「和田文書」の中の鎌倉期永仁二年「沙弥性蓮(しゃみしょうれん)処分状」に、『武射免弐段』の文字がある。助綱の曽孫、清遠(きよとお)が「性蓮」の出家名で作成した「譲り状」(今で言う財産分与状)の中に『武射訓練費にあてるための免田(めんでん)、弐段(2反歩(たんぶ)…当時の1反は360歩)』の記載があります。和田氏は、各種の免田(武射免のほか殿下雑免・春日雑免・貞清雑免など、年貢・公事などの貢租が免除される田地)を獲得しながら土豪武士としての力を蓄えていきますが、その免田がすべて「嫡子得分」とあります。これらは「下司(荘園の役人)の馬上免給」などとともに『わずかの反歩だとしても分割するなどあってはならない。すべて嫡子の進退(身代)とすべきものである』として、和田氏惣領となる嫡子にのみ引き継がれていく様子がよく分かります。

 こうして和田氏もまた嫡子惣領を中心に、庶子(しょし)・一族、領民を組織して和田谷における武士団を形成し、流鏑馬や武射などを通して弓馬の訓練をし、軍事力の向上を図っていました。またこれは単なる軍事訓練ではなく、祭事として行うことにより、一族と和田谷の領民の結束を図るという色合いも併せ持っていました。

 戦乱で荒れてしまった美多彌神社も、文禄元年、和田道讃(道山)入道らによって「牛頭天王宮(ごずてんのうのみや)」として再興されて以来、近世的な宮座(みやざ)仲間に引き継がれています。そして、すでに軍事色が消え、邪気を払い五穀豊穣・息災を祈る祭事の一つとして続けられましたが、これもまた、明治以来の近代化の中で急速に失われてしまいました。

 この地域に暮らす住民の郷土愛と連帯感を高め、次世代を担うこどもたちにとっても心の糧となるような、地域環境の整備「ふるさとづくり」が進むことを願って、平成二十六年三月二十九日に流鏑馬行事を復活させ、以来子ども流鏑馬礼法講習会を開きつつ、平成三十年三月十七日に第二回流鏑馬まつりを開催し、さらに四年ごとの流鏑馬祭り開催を目指しています。


子ども流鏑馬礼法講習会

 平成二十六年三月二十九日、美多彌神社流鏑馬祭りが七百二十年ぶりに復活を遂げたことをきっかけに、この地の伝統文化を再認識し、その歴史的・文化的な価値を継承しようという機運が盛り上がりました。

 この「流鏑馬」を地域住民の誇りとし、継承してゆくためには次世代を担う若者の参加・後継者の育成は不可欠であると考え、弓馬術礼法小笠原教場の皆様の全面協力を得て、「美多彌神社子ども流鏑馬礼法講習会」が設立されました。この事業は文化庁の「文化遺産を活かした地域活性化事業・次世代継承事業」にも採択されました。

 平成二十六年八月より、泉北地域在住の小学四年生・五年生の児童達に広く募集をかけ、同年十月に弓馬術礼法小笠原教場関西騎射の指導のもと、第一回目となる「子ども流鏑馬礼法講習会」が開講され、令和五年度には第十期生を迎えます。

 古来より伝わる武十の礼法(小笠原流礼法)を学び、立つ・座る・進む・退くなどの基本動作の中から、弓の歩射や流鏑馬の騎射につながる動き・精神・作法等を習得すると共に、古式の構造様式に則り、伝承用の木馬や諸役の衣装(鎧直垂・行縢・水干)の新調を行いました。また年十二回以上の講習会や乗馬訓練、各所で行われる神事に諸役として奉仕し、伝統文化の継承者としての意識の醸成と、地元地域への誇りを培い、流鏑馬の今後の活動と継承につなげています。


これまでの活動

・美多彌神社流鏑馬祭り
 平成二十六年 三月 二十九日 「第一回美多彌神社流鏑馬祭り」
  ※ 七百二十年ぶりに復活
 平成三十年  三月 十七日  「第二回美多彌神社流鏑馬祭り」

・子ども流鏑馬礼法講習会
 平成二十六年 八月 第一・二期生 募集
 平成二十六年 十月 第一・二期生
  ※ 子ども流鏑馬礼法講習会開講(月一回 年十二回開講)
  ※ 文化遺産を活かした地域活性化事業・次世代継承事業 (文化庁) に採択

 以降、毎年受講生を募集し、令和四年度には第九期生を迎えた。


「第三回 美多彌神社流鏑馬祭り」について ※小雨決行

日 時 : 令和五年 三月 二十六日(日)
場 所 : 鴨谷野球場(堺市南区鴨谷台二-四-一)
アクセス:泉北高速鉄道「光明池駅」下車
執 行 : 弓馬術礼法 小笠原教場
主 催 : 美多彌神社流鏑馬保存会
H P: https://www.mitami-shrine.com/


当日のタイムスケジュール

 11:00  会場受付開始(鴨谷野球場)
 12:00  美多彌神社拝殿にて流鏑馬神事斎行
 12:30  記念式典開始
 12:50  子ども流鏑馬礼法講習会 木馬騎射披露
 13:00  美多彌神社流鏑馬祭り 執行
 14:30  美多彌神社流鏑馬祭り 閉会

*新型コロナ感染蔓延防止対策を行うため、入場には制限を設けさせていただきます。そのため一般の方が会場に入場し観覧するには、返礼品の各入場チケットを使用していただくか、当日受付(限定500名:立見エリアのみ)を通っていただく必要があります。なお、安全確保の観点から会場外からの観覧にも制限があります。

*このため、多くの方に流鏑馬祭りの様子をご覧いただけるよう、クラウドファンディングの資金を活用して会場内の動画配信を計画しています。配信の詳細はホームページを通じてお伝えさせていただきます。

*会場には駐車場がございませんので、来場の際は公共交通機関を利用いただくか、車でお越しの際は「タイムス光明池第一」や「近隣商業施設」の有料駐車場をご利用下さい。


資金の使用用途

 皆様からご支援いただいた資金は「第三回 美多彌神社流鏑馬祭り」を斎行するにあたり、ご来場いただく皆様の「安全対策」、「新型コロナ感染防止対策」を実施し、多くの方に流鏑馬を楽しんでもらえるよう対策するための費用に充てさせていただきます。具体的には、「安全確保のための警備員や誘導員の増員」、「皆様に観覧していただくための配信設備の準備」等を考えております。皆様のご協力よろしくお願いいたします。
< 資金の使途想定 >
 会場設営費: ¥180,000、 広報宣伝費: ¥300,000、 会場警備費: ¥200,000、 音響機器: ¥100,000、 動画配信費: ¥120,000、 衛生用品: ¥50,000、 輸送費: ¥50,000


美多彌神社について

 美多彌神社は延喜五年(905年)醍醐天皇の命により藤原時平らが編纂を始め延長五年(927年)に完成した『延喜式』の九巻・十巻『延喜式神名帳』にその名を連ねる式内社であり、和田郷(にぎたのさと・令制国の和泉国北部に由来する地域名所で現在の大阪府南部中央に位置する)の郷氏神として崇められ、御祭神には中臣氏(藤原氏)の祖先神である、天児屋根命(あめのこやねのみこと)を奉祀し、明治時代の神社合祀により、須佐之男命・菅原道真公・天之水分大神・厳島神・大国主大神・熊野大神・琴平大神・八幡大神を合わせ祀る。

 神社の社名の由来は平安時代初期の弘仁六年(815年)に、嵯峨天皇の命により編纂された古代氏族名鑑『新撰姓氏録』『和泉国神別条』に記載されている『民直(みたみのあたい)』からとされる。民直氏族は「天児屋根命の後裔とされ、民(みたみ)は美多彌(みたみ)と訓を正す」と記され、天児屋根命を祭神とした、社名の起こる由縁である。

 民直小鮪(みたみのあたいおしび=生没年不明)は、飛鳥時代の人物で、壬申の乱(672年)の時、大海人皇子(天武天皇)側につき、河内から倭(大和)に来る敵を防いで連戦した。民直氏族は天武天皇側の人物史に民直大史なる人物と記されている。 社叢は神聖で立派な木々が多く繁っていた事から『王森』と呼ばれ、後醍醐天皇の御代には三万坪にもわたる広大な境内を持ち社頭輪奐(建物の壮大華麗な様)を極めたる神社であったと言われる。 天正五年(1577年)和歌山雑賀衆制圧のため兵を起こした織田信長により神社・古文書・文献等は焼失したが、文禄元年(1592年)に和田道讃により再興された。

 鎮守の杜に自生するシリプカガシ(通称いっちん)は樹林を形成するのが稀であり、分布東限に近いことから昭和四十七年(1972年)に大阪府の天然記念物に指定された。平成二年には大阪府の緑の百選に選ばれている。


流鏑馬(矢馳馬)とは

 流鏑馬の語源は「矢馳馬(やはせめ)」ともいわれ馬を馳せながら矢を飛ばすことで、今日使われている流鏑馬の文字は、馬上より鏑矢を用いる意味を文字化したものと言われている。日本の伝統的な騎射の技術・稽古・儀式で、現在では神社の神事として日本各地で盛んに行われている。

 馬を走らせて的を射る「騎射(うまゆみ)」と呼ばれるものは、京都に都が定まる平安時代以前からあり、御所では清和天皇(在位858~876)が自ら弓を引かれたり、馬に乗られたりということもあったそうで、次第に公家や武家が務めるようになった。

 文献上で最も古い「流鏑馬」の記録は『新猿楽記』とされ、朝廷の警護にあたった滝口、随身により、朝廷の儀式として平安時代盛んに行われていたことが記されている。武家の流鏑馬は『平治物語』に見える、平清盛の伏見稲荷神社奉納の流鏑馬が初めとされており、源氏の道統としての流鏑馬は、清和源氏の始祖である六孫王経基が清和天皇の教えを受け、伝承され、宮中大儀の儀式には必ず行われていた。

 時は進み、鎌倉に幕府が開かれてからは神事と結び、重要な儀式として鶴岡八幡宮を中心に盛んに実演されたことが『吾妻鏡』に多くみられる。しかし鎌倉幕府の衰退により徐々にすたれ南北朝の頃には行われなくなるが、徳川時代に入り八代将軍徳川吉宗の命により小笠原平兵衛常春(第二十世)が高田馬場で復興し、徳川家の大事にたびたび行われるようになる。明治維新を経て幕府解体、また第二次世界大戦と以後の煽りを受けるなど三度の衰退をみせるが戦後に復興し現在に至る。



最後に・・・ 

 美多彌神社における流鏑馬は、和田文書(中世文書)の中の『沙弥性蓮処分状』においても、鎌倉時代の永仁二年(千二百九十四年)には、流鏑馬神事用の田地(武射免田)の支配についての取り決めが、すでに記載されているほど歴史のある行事です。江戸時代に入り引き続き農村社会の中で、悪疫を退散させ、五穀豊穣を祈る行事として 引き継がれたものの、近代化の中で次第に各地域の氏神を中心にした行事は失われてしまいました。「美多彌神社流鏑馬保存会」は、この伝統文化を復活させ、伝承していくことで、地域住民の共通意識を高め、繋がりを深めながら次世代を担う子どもたちにとっての心の糧となるような地域環境の整備「ふるさとづくり」が進むことを目指しています。

 本来ならば、第三回を迎える昨年は新型コロナ感染症により開催を延期せざるを得ず、開催可能となった今年も、新型コロナ感染防止対策のため入場人数を厳格化することなどが求められています。皆様に安心安全に「美多彌神社流鏑馬まつり」ご来場いただくために、また、「美多彌神社流鏑馬保存会」が目指す伝統文化の復活・伝承のために、ご支援・ご協力をお願いいたします。



<募集方式について>

 本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。

  • 2023/03/27 01:44

     本日、残念ながら雨天の開催となってしまい、今後・・・多分・・・語り続けられるであろう程に強く記憶に残る回になった、「第3回 流鏑馬祭り」を無事閉会することができました。やはり雨天の関係で、予定していたプログラムの一部は中止(神楽の舞)となってしまったり、直前の進行変更で運用上の問題も発生して...

  • 2023/03/26 06:31

     前日の練習会は何とか曇りで、会場周辺の桜を見に、緑道沿いではお花見をする方もチラホラいました。 現在あいにく、天候は雨予報となっていますが、流鏑馬まつりは内容を一部変更しながらも、開催予定しております。 雨が止むことを祈ってはいますが、ご来場される皆様は、雨具や濡れても良い服装やタオルの用意...

  • 2023/03/24 21:04

     期間限定(3月27日まで)で「子ども流鏑馬」の修了式の様子を「ツイキャス」で録画配信しております。興味のある方はご覧ください。 ※音声は小さめになっています●視聴ページ https://twitcasting.tv/g:107397290288453193608●美多彌神社流鏑馬祭りライブ配...

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