2019/06/13 12:12

長崎 船上コンサートのお申し込み受付を開始!
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長崎ではピアニストの崔善愛さんと女優の斉藤とも子さんが、出演されます。
今日は、そのお二人についてご紹介します。
崔善愛さん      斉藤とも子さん私が初めて崔善愛さんの演奏を聞いたのは、2008年、上野・東京文化会館でのコンサート"室内楽はいかが?" vol. 12「ショパンの手紙」でした。その後、崔さんが書かれた『ショパン-花束の中で隠された大砲』(岩波ジュニア新書)を読み、それまで知らなかったショパンについて教えてもらった記憶があります。
本書でも語られていますが、在日コリアンである崔さんは、米国インディアナ州立大学大学院に留学をした際、外国人登録の指紋押捺拒否を理由に「再入国許可」を取得できず、日本での永住資格を失った経験をお持ちです。
一方、ポーランドで生まれ育ったショパンは、当時ロシアに占領されてしまっている祖国ポーランドを離れなければならない時期がありました。友人に当てた手紙で、『出発の日を決めるだけの強さがない。永遠に家を忘れるためにこの国を離れる気がしてならない。死ぬために出発するような気がする』と語っています。

2度と日本に戻ることができないかもしれない、と不安だった崔さん。その時のショパンの心情を深く理解されたのだと想像することができます。

広島で「明子さんのピアノ」を弾いたピアニスト、マルタ・アルゲリッチさんは、『このピアノはショパンが好きみたい。明子が大好きだったショパンを、この楽器は忘れていなかった』とおっしゃったそうです。
そのショパンの苦悩を、自身の経験で痛感した崔さんによる「明子さんのピアノ」は、どのような音楽を奏でるのでしょうか。

朗読を聞かせていただく女優の斉藤とも子さんは、NHK少年ドラマ「明日への奇跡」でデビュー し、数々の映画、ドラマ、劇を経験されています。斉藤さんは、舞台「父と暮せば」(井上ひさし作)の被爆した娘・美津江役を演じたことをきっかけに、広島・長崎に通うようになったそうです。その後、原爆小頭症の親子会「きのこ会」と出会い、被爆された方々の困難な生活の様子を聞き取り、とりわけ「きのこ会」が遺してくれたものを伝えています。その様子は、著書「きのこ雲の下から、明日へ」(ゆいぽおと)で綴られています。

また、斉藤とも子さんご自身も、戦争に関して深い思いをお持ちです。
旧満州で生まれ育った斉藤さんのお父さまは、16歳のときに終戦を迎えます。1945年8月9日、ソ連侵攻がはじまり、避難指示を受けるお父さん。先生や生徒たちと山越えの最中、敗戦の報が届き、各自逃げるようにと言われ、友人たちと取り残されます。
途中で息絶えることがあっても、不思議はなかったでしょう。そんななか、ソ連兵に捕まり、日本人と知られたら殺されるという状況に。日本語を話せないふりをした少年であったお父さんを、朝鮮の農夫が「この子は朝鮮人です」と証言し、生き延びることができたそうです。

途中で友人たちとはぐれてしまい、ひとりになったお父さん。やっとの思いで釜山港にたどりつき、奇跡的に帰国し、長い手記を遺しました。それを託された斉藤さんは、この夏、お父さんのストーリーを胸に、長崎から釜山に向けて船出されます。

お二人は長い間、原爆投下のできごとを音楽と朗読で伝えていらっしゃいました。息も思いもぴったりです。
先日、神保町のブックカフェで打ち合わせをし、斉藤さんがご存じの長崎の詩を教えていただきながら、コンサートのイメージを作りました。

8月9日、「明子さんのピアノ」の優しい音色の中で命の大切さを感じ、「核のない平和な世界」を祈るひとときを、崔善愛さん、斉藤とも子さん、みなさんとご一緒に過ごせたらと思っています。