2020/01/27 14:43

前作『遺言 原発さえなければ』の中で、トラックに載せられる牛の姿は印象的だ。

放射能のせいで、酪農をあきらめざるを得ない酪農家の無念さは言うまでもない。そして、大切にされてきたであろう牛たちが牛舎から運ばれ、トラックの荷台から顔をのぞかせる。処分先に連れられる牛の瞳は、涙でうるんでいた。

私たちは、カメラを通じて映し出された牛の瞳に、飯舘村の無念さを投影したくなる。黒目は絶望の黒さか、いや、うるんだ瞳に反射する光に希望を感じるか。

2020年1月10日に飯舘村に車で入った時に、「飯舘牛」を誇る看板が目に入る。飯舘村で様々な農業を試し、そして酪農を選び、他者に誇るまでになった「飯舘牛」ができる。そこに至った道筋が、この看板の後ろに見える。

それは投影ではなく、村人が確実に作ってきた道筋だと思う。

スタッフ記