2021/02/23 11:34

横浜地裁でパスポート取り上げ裁判の第5回口頭弁論がありました。

POSSEからは学生を中心に20人ほど傍聴に集まりました。11月にあった前回の期日では、おそらく従業員とみられる会社側の傍聴者らが、後から来たにも関わらず席が足りないと主張したことがきっかけとなり、裁判そのものが延期になってしまいました。そして、今回はより大きい部屋が用意され、裁判官の数も1人から3人に増えました(前々回の8月25日裁判の報告はこちらをご覧ください)。

今回の第5回目期日では、裁判の争点を整理することが目的でした。そもそも会社側は、2020年1月の提訴から1年以上経っているにも関わらず、こちら側の主張に対する認否や、記者会見などを行ったフィリピン人女性を名誉毀損で会社が逆に訴えた件の内容すら明らかにしていないのです。今回も、会社側はは名誉毀損や嘘の情報を流されたとの主張を繰り返し、何を争うのか全く明らかになっていないような印象でした。裁判長は何度も論点がなにかを会社側に確認しており、裁判を続けるにあたりかなり困惑した様子でした。

なお、今回も傍聴席は全て埋まり、裁判官へ強い印象を与えることができたと思います。中にはインスタグラムの投稿をみてやってきたという高校生もおり、若者中心の社会運動をしていく中でSNSの発信力の可能性を感じさせました。私もPOSSEの活動については去年の春頃にFacebookでみたことがありました。いまは普段カナダに住んでいますが、現在一時帰国中で、大人食堂をきっかけにSNSや翻訳のボランティアをしています。

傍聴が初めての私でも、裁判がスムーズに進んでいないことは明らかにわかりました。相手は、裁判長の提案を無視し、陳述書を読むと主張。2〜3分で収めるよう言われたところ、時間を超えても裁判の主張とは一切無関係の話を続け、わざと時間を取るようにして裁判のプロセスの妨害を図ったとも見受けられました。さらに、相手が裁判を長丁場にしてフィリピン人女性の在留資格が切れるのを待っているとしか思えない態度でした。それなのに、自分こそが被害者だと言い張り、外国人労働者に対する差別的な発言を繰り返しながら堂々としている行政書士。そんな姿を目の当たりにして呆れてしまいました。

しかし原告のフィリピン人女性は、裁判後まだまだ闘うと口にしていました。私自身、普段は外国人労働者としてカナダで働いている身です。この件を初めて知った時、どうしても他人事とは思えませんでした。

このケースの背景には、日本における不可視化されたレイシズムがあるといえるでしょう。日本ではいま300万人以上の外国人が暮らしていますが、歴史的に外国人に対する基本的人権を認めたことはなく、生存権(生活保護の利用する権利など)は保障されていません。また、「多文化共生社会」や「外国人の受け入れ拡大」と謳われながら、外国人の基本的権利を保障する取り組みもありません。本裁判の大きな議題である外国人のパスポート取り上げが違法でないというのがまさにその証拠です。このような、「外国人だから無権利状態でも問題ない」というレイシズムが蔓延る状況を社会的にも法的にも正していくために、この活動は実に意義のあるものです。

次回の期日は4月27日火曜日の13時10分から、横浜地方裁判所であります。日にちが近づいたら、また各種SNSで投稿・お知らせしますのでぜひフォローをお願いします。また、外国人のパスポートを会社が保有すること自体を違法化するためのChange.orgの署名にもぜひご協力ください。外国人のパスポート取り上げを違法にするため一緒に闘っていきましょう。

NPO法人POSSE外国人労働サポートセンター
https://foreignworkersupport.wixsite.com/mysite
supportcenter@npoposse.jp