2020/05/18 15:55

AUFの賛同メンバー、名付け親でもある、大澤寅雄さんから、応援メッセージをいただきました!「生態系」という話について、より深く、お話いただいております。皆様からのご支援・応援を、引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。

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「芸術文化の生態系を支えるアーティスト、フリーランスの制作者や技術スタッフ」を支援するAUF。この「芸術文化の生態系」を、私は生物界の生態系と同じように捉えています。持続可能な環境には生物の多様性が不可欠であるように、持続可能な社会にも、文化の多様性が必要です。

生物の多様性には3つのレベルの多様性があります。同じ生き物でも多様な形や模様や個性を持つ「遺伝子の多様性」。動物や植物や細菌などいろいろな種類の生き物がいる「種の多様性」。海、川、山、畑、里などいろいろな環境の「生態系の多様性」。遺伝子、種、生態系という3つのレベルで多様性を捉えます。

その視点を文化の生態系にも応用すると、例えば、同じ音楽でも旋律や和声やリズムなどのいろんな表現があり、音楽、演劇、ダンス、美術などいろんな分野があり、劇場やホールや美術館や映画館などいろんな環境があります。遺伝子、種、生態系の多様性をなぞらえて、文化多様性を支える「表現、分野、環境」の多様性とでも仮に呼びましょう。

なぜフリーランスが大事かというと、この3つのレベルの多様性を往来しながら、ニッチ(隙間や適所)を埋めてくれているからです。芸術文化業界の労働市場は規模が小さく脆弱で、元来、多くの労働力をフリーランスに依存しています。同時にフリーランスは、異なる表現、分野、環境を移動し、情報や技術や人のつながりの共有化、流動化、さらなる多様化を促します。新しい表現、分野、環境を切り開く際には、フリーランスが欠かせません。

私は、現在のコロナ禍によるフリーランスの存亡の危機は、芸術文化業界の土台を揺るがしかねないと考えます。ですから、AUFを通じてフリーランスを支えることは、彼ら・彼女たちを支援するだけでなく、芸術文化の維持や発展、そして文化の多様性を尊重する社会の持続可能性を支える運動だと、私は確信しています。

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<大澤寅雄さんプロフィール>
(株)ニッセイ基礎研究所芸術文化プロジェクト室主任研究員、日本文化政策学会理事、NPO法人アートNPOリンク理事、九州大学ソーシャルアートラボ・アドバイザー。共著=『これからのアートマネジメント"ソーシャル・シェア"への道』『文化からの復興 市民と震災といわきアリオスと』『文化政策の現在3 文化政策の展望』『ソーシャルアートラボ 地域と社会をひらく』。