2020/06/14 12:42

デメテルハーブティー代表の西口三千恵です。今日は学校ハーブ園プログラム参加校について、詳しく紹介させて頂きます。

シェムリアップのバイヨン中学校は、学校ハーブ園プログラム参加校の中でも一番参加年数が長い学校です。

2013年に、JST-アンコール人材養成支援機構の代表であるチア・ノルさんと小出陽子さんご夫妻が土地を寄贈、校舎建築をされたことに始まります。生徒数は500人を超え、2019年には高校も併設されました。

一級建築士である小出陽子さんが設計された校舎は木のぬくもりがあり、自然の光や風を取り入れた作りで、校庭にも緑があふれた素敵な学校です。

2017年、小出さんのご紹介でデメテルハーブティーはバイヨン中学校を初めて訪問させて頂きました。バイヨン中学校では、学校のカリキュラムとして有機農業や魚の養殖を授業に取り入れています。授業の中で作られた野菜や魚は販売し、学校運営費とされてきました。学校ハーブ園プログラムの趣旨を先生方へ説明したところ、ぜひやってみたいと前向きな回答を頂きました。これまでも野菜栽培などをしてきた学校だけに、ハーブの栽培も問題なく順調に進みました。

ただ、天日乾燥の段階になると、始めた当初はなかなかうまく行かず、失敗の繰り返しでした。乾燥が甘く、保管している間にカビが生えたり。逆に入念に乾燥させすぎてハーブが日焼けして色が抜けてしまったり。2017年の最初の一年間は、乾燥手順に試行錯誤の繰り返しでした。

デメテルハーブティーの工房も私の拠点も、首都プノンペンにあります。バイヨン中学校があるシェムリアップまでは、バスで片道6時間。頻繁に顔を出せる距離ではありません。なかなかうまく行かない乾燥作業に手を焼くバイヨン中学校チームと、様子を知りたいプノンペンのデメテルチームの間を取り持ってくれたのは、前出の学校創設者、チア・ノルさんが代表をつとめるJSTーアンコール人材養成支援機構 のインターン生の方々でした。学校を訪問するたびに、ハーブの栽培や乾燥の様子をチェックし、報告をしてくれました。JSTインターン生の皆さんの存在なしには、バイヨン中学校とのスムーズなコミュニケーションと、乾燥手順の習得は実現できなかったと思います。

2018年になると、乾燥手順のコツをつかんだバイヨン中学校からは、質の良い丁寧に作られた乾燥ハーブがプノンペンの工房に届くようになりました。学校がお休みや試験の期間はハーブの乾燥は休止して、2018年度一年間のバイヨン中学校からのハーブ買取り総額は190ドル(約2万円)、2019年度には250ドル弱(約2万7千円)になりました。学校では、ハーブの収益金から教室に扇風機を設置したり、校庭にソーラー外灯を設置したりしています。

校庭で見つけた薬草について紹介する伝統医療師のVanny先生2019年には、地域の伝統医療師をバイヨン中学校に招き、学校敷地内や村に生えている薬草/薬木の紹介と伝統医療での使い方について教えてもらうワークショップを開催しました。いつも校庭や村の通い道で見ている木や植物が実は薬草だと知った先生方や生徒たちは興味が尽きず、たくさんの質問が飛び交う活発な会になりました。学校ハーブ園プログラムの目的の一つとして、伝統文化の保存があります。カンボジアの伝統医療について学ぶ機会を提供し、地域の伝統医療師と学校を繋ぐ橋渡しができたことは、私たちにとっても大変意義のある事でした。

バイヨン中学校の支援母体であるJSTでは、高校へ進学しない卒業生のための職業訓練所の開設も計画されています。職業訓練の一環として、農業の分野でハーブの加工場の設置などで協力できれば、バイヨン中学校だけでなく、コミュニティの人たちにも仕事を作ることができます。デメテルハーブティーの将来の希望のひとつです。