2021/01/13 12:37

稽古の様子をお知らせします。

設備面ではまだまだ途上ながら、一応は行事ができるまでになった新馬場(鎌倉教場)ですが、本格的な馬場だけに、馬によっては乗りこなすのが非常に難しくなります。

 

大日本弓馬会では和種馬、和種馬の血を引く馬、競走馬だったサラブレッドなど多種多様な馬を用いておりますが、中でも最も難しいのは種類によらず「速くて止まらない馬」です。

通常、流鏑馬では3つの的を射た後に馬場末(ゴール地点)で止まりますが、馬によっては3つ目の的を過ぎて手綱を引いても速度を緩めずに馬場末に突入し、そこで、急停止します。

このような止まらない馬に乗ったときの最も理想とする「急停止の技術」は、停止時に手綱を引き過ぎず、馬が左右にブレない程度に手綱を張るにとどめ、馬が急停止しても乗り手の体勢が崩れないように、乗り手の側が馬に合わせることです。

そのためには、馬の停止に合わせてタイミングよく鐙を力いっぱい踏むことになりますが、これが非常に難しく、失敗すると落馬します。


したがって、相当以上の腕がないと「止まらない馬」に乗ることは許されず、相当以上の腕があっても、高いレベルでこの技術を身に付けられるのは、ごく一部です。

下の写真は鎌倉教場の馬場末での急停止の様子です。結果として安全に停止できたのですが、「急停止の技術」としては、手綱を引き過ぎているばかりか、鐙を強く踏むためとはいえ上体を反らし過ぎているので、合格点は与えられません。

 


この技術の達人である小池師範は、これを師である金子四郎家教先生の指導により会得されたのですが、時速60km/hで走る馬が全速力から急停止しても一切姿勢が崩れることなく、美しく止まります。

この技術は当代随一であり、そのまま真似をすることができる乗り手は、まずいないと思われます。

いわゆる馬術の常識では考えられない技術なのですが、和式馬術の技「立ち透かし」を極めるとこれができるようになります。

達人への道は遙かに遠く、その頂は見えません。


この技術習得に向けた稽古を積むことができるのも、本格仕様である新しい馬場あってのことです。

皆様に素晴らしい技をお見せできるよう、引き続き稽古精進に努めます。