2020/10/12 19:01

今月初日に銭湯〈菊の湯〉を引継いだその日から、リノベーションがスタートしました。今回も空間デザインを担ってくださるのは、4年前の〈栞日〉移転リニューアル、および、旧店舗での〈栞日INN〉スタートの際に、両空間を設計&施工管理してくださった、空間デザイナー、東野唯史さん。当時は、奥さん・華南子さんとのふたりユニット〈medicala / メヂカラ〉として、全国各地を飛び回りながら空間制作をしていましたが、〈栞日〉移転リニューアルと同じ4年前に会社を立ち上げ、同じ長野県内の上諏訪に拠点を構え、以来、建築建材のリサイクルストア〈ReBuilding Center JAPAN〉(通称「リビセン」)代表として、活躍の幅を広げています。

今回の〈菊の湯〉継承が確定したとき、真っ先にそのことを報告してリノベーションをオファーしたのが東野さんでした。毎日のように慕って通っている地域のみなさん(特に、おじいちゃん・おばあちゃん)がいる風景を、毎日のように斜向かいから眺めてきたからこそ、「なるべく休業期間は短くしたい」とリクエストを伝えたところ、「わかった。改装箇所も手数も最小限にして、最短期間で納めよう」と快諾してくださいました。

休業期間は丸2週間。この短い工期の中で、コンセプト「街と森を結ぶ湯屋」や追求テーマ「環境(エココンシャス)と健康(ヘルスコンシャス)」を踏まえながら、効果的なリノベーションを施すために、東野さんが提案してくださったのは「素足で心地よい床」が主役の改装プランでした。

まずリノベーション初日から、4年前の〈栞日〉移転リニューアルの際にも力を貸してくださった大工の荒川さんが、今回も駆けつけてくださり、該当箇所の解体作業をスタート。

我らが湯屋チーフ「ひかるん」こと山本ひかるも、施工会社勤務の経験をフルに活かして、初日から毎日リノベーション現場に通い、自ら腕を振るいます。

ひかるんの湯屋チーフ奮闘記は〈菊の湯〉Instagaramアカウントで、ほぼ毎日更新中。ぜひともご覧ください!!

上の写真で、ひかるんがグライダーを手に加工している床材を、荒川さんが受け取って貼っていった床面がこちら。

独特の鱗模様が印象的なこの床。素足で歩くとこの凸凹が伝わってきて、云いようもなく心地よいのです。4年前の〈栞日〉移転リニューアルの際、その工期中に「リフレッシュ休暇」と称して、東野さんがこれまでに手掛けた空間を、都内中心に巡る、1泊2日のツアーに出掛けたことがありました。そのとき、菊地家が泊まった鎌倉の小さなホテル〈aiaoi〉(もちろん、東野デザイン)の床にこの「なぐり加工」が施されていて、その足触りにいたく感動していたのが、(開業1年目の途中からずっと一緒に〈栞日〉を営んでいる)僕の妻、のぞみん(希美)でした。今回の湯屋継承が決まったとき、彼女からの強い希望があって、番台ロビーの床はこの「なぐり」の床を採用する運びとなりました。

この、いわば新生〈菊の湯〉の「顔」ともいえる番台ロビーの「なぐり」床のために、「リビセン」チームが引っ張り出してきてくれた床材がまた格別。同じ長野県内で、とある小学校が廃校になったとき、その校舎から「レスキュー」してきたブナ材なのです(彼らは解体される家屋や商店から建材や家具などを運び出すことを「レスキュー」と呼びます)。かつての学び舎の床が時を経て、街場の湯屋の床として蘇ります。再びたくさんの子どもたちに、この床を踏んでもらえたら、これほど喜ばしいことはありません。

続いて、こちらは脱衣所の床。以前は(番台ロビーもそうなのですが)タイルカーペットが敷かれていました。今度は同じ「タイル式」でも、表面が無垢の木。それも、ヒノキです。

製造元は〈西粟倉 森の学校〉岡山県の山あいで、森林資源と地域経済の可能性について考え、そのための実践を続けています(西粟倉といえば、天然温泉のゲストハウス〈あわくら温泉 元湯〉の取組みも、「湯」絡みでは、外せません。いつか、みんなでご挨拶に伺いたい土地です)。今回は〈西粟倉 森の学校〉のオリジナルブランド、「ユカハリ・タイル」シリーズの中から「ヒノキ」をチョイスしました。敷き詰めると、脱衣所の空間全体に、芳しい木の薫りが。これだけでもう充分すぎるほど贅沢です。

そして、このフローリング材、何が素晴らしいかといえば、大工の荒川さんをして「ものすごく丁寧に加工処理されている」と云わしめた、その製品そのもののクオリティはもとより、この梱包デザイン。

製品を届ける相手に留まらず、製品を運んでくれる相手に対しても、この気遣い。細部に宿る優しさに、こちらの気持ちも和みます。

最後に、2階。そう、〈菊の湯〉には2階があります(向かいに〈栞日〉がよく見えます)。もともと、登山帰りのみなさんが、まずは大きな荷物を下ろして、湯を浴びて、そのあともゆったり過ごしてもらえたら、という計らいから設けられた空間でしたが、近年は、目が行き届かないなどの理由から(それも、もちろん、よくわかります)、「STAFF ONLY」の物置になっていました。僕らは今回のリニューアルで(〈栞日〉2階もスタッフの「目が行き届かない」ゆえの居心地のよさがある、という手応えを感じているので)、この〈菊の湯〉2階も自由な休憩スペースとして、再びオープンな場に戻したい、と考えています。

この2階の床には、畳を敷きます。4年前の移転リニューアルに直前に、引っ越した自宅をリノベーションしたときに、畳の表替えをお願いした、松本〈村松畳店〉さんに依頼して、熊本県産の藺草(いぐさ)の畳をフロアいっぱいに敷き詰めていただきます。そして窓際には、「リビセン」チームが、古材の一枚板でカウンターを拵えてくれる予定。湯あがりに瓶牛乳を携えてひと仕事、なんてスタイルも歓迎ですし(電源・WiFi、ご用意します)、座布団やちゃぶ台も用意するので、銘銘思い思いの時間を過ごしていただけたら。

以上、「なぐり加工」を施したブナの古材の番台ロビーに、無垢のヒノキの「ユカハリ・タイル」の脱衣所に、国産畳の2階休憩スペース、と、「素足で心地よい床」を主役に据えた、今回のリノベーションプランについて、現場からお届けしました。

引継ぎから、あっという間の2週間。3日後に控えたリニューアルオープンに向けて、リノベーションも佳境のときを迎えています(写真は、そんな現場を庭のように駆け回る我が子らが、ようやく番台に落ち着いたとき、ひかるんが撮ってくれた1枚)。あともうすこし。引き続き、温かい声援を、よろしくお願いいたします。