2021/05/31 06:57

山梨県は、長崎知事が森林伐採を伴うソーラーパネル開発や、急傾斜地での原則設置禁止を盛り込んだ条例案を、6月の県議会に提出する方向で動いています。

画期的なのは、規制区域内では既存の施設にまでさかのぼって、維持管理計画の提出を義務付けるということです。改善命令に従わないときは、FIT認定取り消しを求め経産省に通報するそうです。

北杜市は、まだ建設されていない施設も含めると約3000件のソーラーパネルが国から認定を受けています。気づくと森林が伐採され資材が搬入されていたり、別荘地の周りがソーラーパネルに囲まれ、水害にあった住民が泣き寝入りをして出て行くという例もあったほどです。

とてもひどいと思います。環境破壊、景観破壊、住環境破壊などの問題を含み、地域住民とのトラブルが多発していることを受けての今回の条例制定です。ニュースはこちら。知事が、このように発言してくれることはとてもうれしいことです。

ただ、「安全性や環境への配慮を講じた施設においては、業者による地域住民への説明を十分に求め、許可するかどうかの判断は市町村長の意見を尊重する」とあります。

市町村長は、住民の暮らしを最優先に考えてくれる方を選ぶ必要があります。選挙では、もう地縁、血縁選挙はやめませんか?未来にどんな社会を手渡したいか、住民と一緒に考えてくれる首長を選びたいです。

したがって、県の条例は、平林のような小さな田舎を守るものにはならないとわたしは考えています。じゃ、どうしたらいいのか?森の話でも書いたようにわたしたちが「自立した市民」となることです。

行政がなんとかしてくれる、行政が許可したのだから仕方ない、では自分たちの暮らしは守れません。規制をかいくぐった小規模のソーラーパネル建設からわたしたちの地域を守るために、地域で「自主規制」を作ることができます。法的効力はありませんが、抑止力となります。

太陽光発電問題連絡会の小林さんは、今回、平林の計画を止めるために、とても力になってくださった方の一人です。わからないことだらけのわたしに丁寧に答えてくださり、原村から一時間かけて、平林まで住民の勉強会に講師として来てくださいました。

その小林さんの住む原村では、3つの地区が自主規制を作っています。自主規制を提案し、規制ができるまで2年。自主規制ができる前は3つの発電施設ができてしまったけれど、自主規制を作ったあとはひとつもできておらず、とても効力を発揮しています。

その自主規制に盛り込まれているのは、「発電施設を作るには、半径300m以内の地権者全員の同意を得ること」という項目。これが何を意味するのか、地域住民全員で原村の景観を守りたいという意思表示がされていると思います。

業者は、わざわざこんな面倒な地域にソーラーパネルを作ろうとしないのです。なんの規制もなく楽につくれる地域はたくさんあるのですから。

平林もそのひとつでした。それは、事業者からも聞いた言葉です。計画が町に「簡単に受理された」。もし、このソーラーパネルができてしまっていたら、平林には次々に遊休農地にソーラーパネルができていた可能性があります。

なぜなら、事業者の間で、この地域はつくりやすいという情報が流れるためです。事業者は、地権者さんにデメリットは話していませんでした。それどころか、わたしたちが心配していることについては「事業者が大丈夫って言っているから大丈夫じゃないのか?」。地域のお年寄りを説得するのは、とても簡単なことなのでしょう。

地域を巻き込むことはとても難しいと思いますが、自分が住んでいる地域で、自主規制を提案してみることはぜひやってほしいと思います。市町村を動かすよりは、早く規制を作ることができるでしょう。ご希望の方には、原村の自主規制を参考にお送りすることも可能です。

これから田舎暮らししたい方は、ふだんから地域活動に参加し地域との距離を縮めることをおすすめします。田舎は、例え家を買ったとしても、移住者はいつまでたっても移住者です。地元住民の人の声がとても大きいのです。そんな中、ほとんどが移住者のわたしたちの会で、今回のソーラーパネル計画を止められたことは、本当に神様が後押ししてくれたとしか思えない奇跡だと思います。

(写真:過疎地で次々とソーラーパネルができてしまった長野県茅野市白井出地区)