2021/12/12 08:00

本日!3日前

鎌倉教場の「今」をお伝えします。

今回は「調整力」についてです。


今回のクラウドファンディングも残り3日となりました。

いまだ目標額から距離があり、その達成が危ぶまれます。

この「残り3日」を「あと3日しかない」と捉えるか、「まだ3日ある」と捉えるかにより、心の持ちようが変わります。

本音を言うと「あと3日しかない」と焦る気持ちもありますが、ここは「まだ3日ある」と構えて、できることをやり尽くしてまいりたいと思います。


さて、標題の「調整力」というと、「利害関係者の間に立って双方の妥結ポイントを探りつつ、上手いことまとめる力」というイメージがあるかもしれません。

実際、筆者は、大日本弓馬会の企画・広報などの事務仕事を行っていますが、この意味での「調整力」が強く求められます。

しかし、今日申し上げたいのは、こうした事務方としての「調整力」ではなく、射手としての「調整力」です。

具体的には、「的中の調整力」とでもいいましょうか。


射手として流鏑馬を奉仕するに当たって最も大事なのは、天下泰平・五穀豊穣・万民息災を祈念して的を射ることです。

流鏑馬は世界の平和と人々の幸せを祈る神事ですので、これは当然のことです。


しかし、射手としての技を奉納しているという観点からすると、高い技量を示すことも求められます。

高度な馬術、美しい射形、そして、的中成績です。


このうち的中成績については、「当たれば良いというものではない」ということがいえます。

射形を崩して、ただ当てることだけに専念すれば、それなりの的中率となりますが、これは射手として避けなければならないことです。


もっとも、流鏑馬のような伝統文化は、多くの方に「後世に残すに値する」と思っていただき、支援の輪が広がって初めて後世に残せるものです。

そのためには、一定程度の的中率は欠かせないことから、やはり「当てる」ことも大切な射手の技術といえます。


大日本弓馬会の流鏑馬では、「式の的」「板的」「小的」を用います。

このうち、最も難しいのが「小的」です。

素焼きの皿を2枚貼り合わせ、中に小さく切った色とりどりの紙切を入れた的であり、的中すると土器が割れ、中の紙切が花吹雪のように舞い散る雅な的です。

この小的は、奉射の上位成績者のみが出場できる競射でのみ用います。

そのため、まず小的に挑戦するためには、奉射で高い的中成績を収める必要があります。

とはいえ、この奉射で「当てよう当てよう」と思っているうちは、競射に出場したところで、小的に当てることは至難といわざるを得ません。


小的の的中率は、超々一流でも通算5割程度です。

通算4割を超えれば超一流、通算3割を超えれば一流といえるかもしれません。

流鏑馬を観覧する際は、是非とも競射まで御覧いただいた上、この的中率を参考にしていただけると面白いのではないでしょうか。


この小的に当てるために必要な能力のひとつが標題の「調整力」です。


競射のあと、ほぼ毎回のように「あと1cmで当たったのに」という悔しい思いをします。

この「あと1cm」まで矢を的に近づけることは多くの射手ができるのですが、ここから1cm的に寄せるのが非常に難しいのです。

ここで必要なのが「調整力」です。


小的を全て当てることは困難です。

そこで、重要なのが「的の外し方」です。

「的の“どこに・どのくらい”外したのか」を目で確認し、次の的を射るときに、その差を縮めるよう調整することで、次の的での的中を狙います。

そのためには、まず自分が放った矢がどこに当たったかをしっかり目視確認しなければなりません。

矢を放った後は、急いで次の矢を番えなければなりませんが、次の矢に手を伸ばしながら目視で確認するのです。

このとき、具体的にどのような調整が行われるかについては、流派の機微に触れるため本稿では教えられませんが、射手は、矢を放ち、次の矢を番えるという作業をしながら、目視確認とその結果を元にした調整をしていることを知っておくと、流鏑馬の見方が少し変わるかもしれません。

これも流鏑馬の見所といえるのではないでしょうか。


この「調整力」は的が複数なければ稽古で磨くことは困難です。

この点、鎌倉教場は本番同様に的を3つ設置することができる素晴らしい稽古場です。

射手にとって欠かすことのできない「調整力」を磨くため、これからも稽古に励んでまいります。


皆様の引き続きの応援をよろしくお願いいたします。


2021年12月15日(水)まで

伝統の技、流鏑馬の馬場に散水用設備、更衣室と日除けを!安心して稽古を続けるために

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