2020/06/29 17:18

クラウドファンディングでご支援いただいた皆様、ご無沙汰しています。阿部梨園の佐川です。大変遅くなりましたが、阿部梨園の知恵袋は記事300本を書き終え、無事に完成いたしました。クラウドファンディング終了から約2年半、サイト公開から約2年、まだ終わってなかったの?という方もいらっしゃるかと思います。記事の執筆に必要な時間が見積もりより大幅に上回ったことと、話題や活動の広がりが想定以上であったことから、展開を優先させていただきました。大変長らくおまたせしました。やっと約束を果たせて、肩の重荷がひとつ下りました…涙

まずは、この2年半のあいだにどんなことがあったのか紹介させてください。

サイトリリース後の展開について(2018.05~)

メディア等での拡散、オピニオン形成


クラウドファンディング以来、77件(!)ものメディア掲載/出演がありました。様々な媒体の力を借りて、農業における経営改善の可能性やノウハウのオープン化など、私たちが伝えたいことを広く周知していただきました。結果として全国の同志に認知され、波及効果が生まれました。

特に、堀江貴文さんのホリエモンチャンネルは大きな反響があり、業界外の方にも注目していただきました。2時間たっぷりの対談はぜいたくな経験です。その後、テレビ東京のサッカー番組FOOTxBRAINでも紹介していただきました。

また、文春新書『農業新時代 ネクストファーマーズの挑戦』にも掲載していただきました。大変光栄です。こちらは、NEWSPICKSの特集「農業は死なない」で掲載していただいたインタビュー記事を、加筆修正して書籍化されたものです。

農業新時代 ネクストファーマーズの挑戦 (文春新書) | イオ, 川内 |本 | 通販 | Amazon

取材や掲載でご協力いただいた皆様、ありがとうございました。

阿部梨園の知恵袋 | メディア掲載/出演

メディアでの連載、寄稿もご依頼いただいており、現在は地上(家の光協会)、農業ビジネスベジ(イカロス出版)で連載させていただいています。過去にはスマート農業360やマイナビ農業などでも連載していました。

講演・セミナーでの全国展開


阿部梨園での改善事例や知恵袋PJを紹介する講演依頼を多くいただくようになりました。2018年は50回、2019年は75回、新型コロナの影響がありつつも2020年の6月までで150回(!)登壇いたしました。

産地にご招待いただいて各地の生産者さんや農業関係者の皆さんとと直に意見交換し、SNS等でネットワークを拡げることができました。私たちにとっても非常に有益な機会になっています。

また、各地の農業経営塾にも登壇し、経営戦略などのテーマをシリーズで担当させていただくようになりました。阿部梨園の知恵袋は小さなtipsを羅列したものですが、シリーズ講義では理論を体系的に再構成することができました。

佐川個人としては、小規模農業が予算の都合でコンサルティング等の外部支援を受けられないのであれば、なおのこと「教育」がキーになると感じています。様々なテーマでご依頼いただきながら、幅広いコンテンツを制作することができました。

コミュニティ形成


クラウドファンディング終盤でコミュニティ形成を目的に掲げました。単独開催よりも企業等との共催のほうが参加者や企画の幅を広くとれると考え、マイナビさんと定期開催している「農家の課題解決ゼミ」やfreeeさんと共催した「農業経営MTUP」などで、生産者と農業関係者が課題解決を軸につながる場を創出してきました。知恵袋PJや農家の経営改善に限定したコミュニティを作るかどうかは諸々を見極めて判断したいと考えています。

(参考)農業界における情報のオープン化、プラットフォーム、コミュニティに関する覚書|佐川友彦/ファームサイド(株)代表取締役/阿部梨園|note

ファームサイド株式会社設立


阿部梨園の知恵袋PJを進めるにつれ、多くの生産者さんの課題や悩みに触れました。次は業界全体の課題解決に事業としてべきだという考えに至ります。そこで2019年1月から佐川が阿部梨園での勤務を減らしてパートタイムになり、自身の事業として**ファームサイド株式会社**(旧FARMSIDE works)を起業しました。講演やセミナー、コンサルティング、執筆活動などはファームサイド社名義で展開しています。

ファームサイド株式会社 – FARMSIDE Inc.|佐川友彦|農業界の課題解決

できたこと、できなかったこと

経営改善というオピニオンを立てた

達成度:★★★★★

これは十分に達成できたのではないかと感じています。大規模化、法人化、機械化、IT化…するしかないと言われていた農業においても、既存資源の価値を最大化する「経営改善」が効果的であると認知形成できたのではないでしょうか。阿部梨園での事例が何らかの共通言語になっているのであれば、議論を加速するお手伝いができたかもしれません。体感では「経営改善」というワードを業界のメディアやSNSの投稿などで目にする機会も増えたように感じます。

農業経営の暗黙知をオープン化した

達成度:★★★☆☆

阿部梨園の事例をオープン化することはできました。しかしながら、業界のノウハウが集積するようなオープンなデータベース制作は未だ着手できていません。これは相当上手に設計しないと機能しないですし、管理コストが上回ってしまうので、引き続き可能性を探っています。

(参考)農業界における情報のオープン化、プラットフォーム、コミュニティに関する覚書|佐川友彦/ファームサイド(株)代表取締役/阿部梨園|note

改善に取り組む生産者が増えた

達成度:★★★☆☆

経営改善に取り組みはじめた生産者さんから多くのご報告をいただいています。クラウドファンディング時点で想定したインパクトに対しては十分以上で、業界を変革するほどのインパクトかと言われると道半ばです。もっともっと成果が表れて、挑戦者が次々起こされるような仕掛けができればいいのですが。みんなで「せーの!」で取り組んで、一緒に継続できるような取り組みにしていきたいです。

改善を支援するサポーターが増えた

達成度:★★★☆☆

阿部梨園の知恵袋をご覧になったことで生産者支援に乗り出されたという企業や専門家の方々が現れました。生産者単独での課題解決は限界がありますし、私が抱えられる案件には限りがあります。全国で、農家の右腕従業員や農業コンサルタント、農業支援ビジネスがまだまだ必要です。引き続き名乗りを上げてくださる方を喚起しつつ、必要なツールやサポートを提供していきたいと考えています。

佐川が専門家として世に出た

達成度:★★★★★

これは本来の目的ではありませんが、想像の10〜100倍の過分な評価をいただいているように思います。佐川が何者で何ができるか、広く多くの方々に知っていただくことができました。私のようなユニークな立場の人間だからこそできる、ニッチな分野があることも分かりました。まだ打ち出したビジョンの一部しか実現できていませんので、引き続き期待に応えられるようがんばります。

知恵袋作成に関する所感

記事300本は思ったより大変だった

300は妥当な数字だったと思います。100では足りなかったでしょうし、500なら焼き増し感が出てしまうはずです。それにしても300本の記事を書くのは骨が折れました。自分の実体験を書き起こすだけだから1本の記事当たり30分くらいで終わるかと思っていたのですが、とんでもない。平均では1.5時間ほどかかったのではないかと思います。状況や判断がわかりやすいように、他の選択肢も紹介できるように、用語解説や便利な情報源も…とコンテンツが増えました。1本の記事あたり5分ずつ見直すとしても、100本で約8時間=1日、300本ではおよそ3日かかります(!)

しかも各記事が連動しているので、内容の重複や齟齬はないか、バランスは問題ないか、整合性をとりながらの執筆は脳内メモリを大量に消費します。タイトな時間勝負で、大学受験より根を詰めて取り組みました。もう1回やれと言われたら絶対できないですね。公開が遅くなった言い訳です。

断続的に記事を追加していたのですが、記事追加のアナウンスを出す間を惜しんで、記事を書いてきたつもりです。こちらから情報をプッシュできずに申し訳ありませんでした。

コンテンツや機能を追加できなかった

記事執筆や活動展開にエネルギーを吸引された結果、余力で追加しようと思っていたコンテンツや機能を開発できませんでした。コラムを書いたり、タイムリーなお役立ち情報を紹介したり、ログインして情報交換できる場を作ったり…と考えていたのですが時間の都合で見送りました。

代わりに講演やセミナーで全国を回り、生産者さんとつながることを優先させていただきました。活動のインパクトを最大化するという点では間違っていない判断だったと思っています。

農業経営や農業界の深さを思い知らされた

イベントや企画の矢面に立ち、全国の農業関係者とつながり、様々な情報が入るようになりました。いやおうなく自分の知識不足、経験不足が浮き彫りになります。いかに梨園、宇都宮、栃木という属性の狭い視野で生きてきたか、常々思い知らされました。何も知らないくせにノウハウのオープン化を喧伝するなど、怖いもの知らずだったと恥ずかしくなりますが、無知だったからこそ無邪気に扉を開けられたのだとも思います。

また、全国各地の産地や生産者、農業関係者のみなさんが多様なかたちで今の日本の農業を支えてくださっていることもよく分かりました。それぞれに個性や特色があり、豊かな日本の文化や農村風景を存続してほしいという願いが強くなりました。

読者の琴線に触れていることが嬉しかった

とにかく、数え切れないほど多くの生産者さんから温かいご感想をいただいて、私たちもここまで全力疾走してこられました。みなさんのフィードバックこそ私たちの指針です。ビジネスや課題解決を超えた、人対人のお付き合いをさせていただいたことが、何よりの喜びでした。

「解決策が役に立った」というご報告以上に、「カオスだった状況が整理されて何が課題かわかった」「人に相談できない悩みをわかってもらえた」と本音を打ち明けていただくことが多く、「課題の認識と整理」に貢献できたのは望外のことでした。課題を解決する前に、まずは理解と共感に努めるべきだと学びました。

今後について

当面のコンテンツの更新予定はなし

サイトはもちろん存続します。が、たとえば400件、500件と記事を追加し続ける予定は今のところありません。リソースが限られているあいだは、他のもっとも効果的なことに優先して取り組みたいと思います。今後の運用は落ち着いたらまた考えます。

CFのリターンはご都合の良いときに

阿部梨園見学やコンサルティング、取材記事作成などは、支援者のご都合のいいタイミングで実施させていただいてきました。まだ権利を行使されていない方も、機を見計らってお声かけいただければと思います。特に期限は設けていませんが、設定する場合は改めて連絡差し上げます。

ファームサイド社として展開します

阿部梨園が本業である梨作りに専念できるよう、知恵袋PJや経営改善に関する業務は、佐川が設立したファームサイド株式会社で巻き取っています。今後も皆さんのお役に立てるようなサービスを提供しますので、よろしければぜひフォローしてください。

教育事業と経営支援に力を入れます

実際に生産者さんが経営改善に取り組み、農業経営を発展させていくために、自分で課題解決できる農業人材の育成=教育(講演やセミナー、指導など)に注力できればと考えています。もっとわかりやすく実用的なコンテンツやセミナーがあれば、農業経営の現実も変わる余地があるはずです。コンサルティングも同様です。

独自コミュニティは作る…かも

独自コミュニティ作りに慎重であることは上述のとおりですが、活動を展開していく上では数の力が必要ですので、機を見計らってコミュニティは作りたいと思っています。そのときはぜひご参集ください!

むすび

突然ひらめいて走り出した阿部梨園の知恵袋PJでしたが、2年半もダッシュを続けていたかと思うと感慨深いです。これほどまでに多くの方々と共感の輪を拡げることができるとは、全く想像もしておりませんでした。最初のクラウドファンディングでもしご支援が集まらなかったら、これらはすべて起こらなかったことです。支援者の皆様におかれましては、ぜひとも「俺/私の支援したプロジェクトが盛大に実を結んだ!」と共に喜んでいただければ幸いです。

これからも引き続き、農業経営と農業界の課題解決に力を入れてまいります。

なお、近日中に嬉しいニュースを報告できる予定です。お楽しみに。。

何卒よろしくお願い申し上げます。