SALASUSUのシェムリアップ農村にある工房では、30人ほどの貧困家庭出身の女性が様々なトレーニングを受けながら、ものづくりを行っています。
近年は、ライフスキルを強化するべく、国語、算数、総合などの教科教養のカリキュラム開発にも着手し始めました。
「誰一人取り残さない教育」とは?
さて、皆さんは、授業で「ちょっと難しいな」と思っていたら振り落とされて、あっという間に何をやっているか分からなくなり、その後の数十分間ただただボーッと過ごす……そんな経験はありますか?
あるいは、先生が出した問題が簡単すぎて、他の子が苦戦する中サクッと解いてしまい、待ち時間がヒマでヒマで、ノートの端っこに落書きしたりして時間をつぶした経験があるでしょうか。
どちらのケースも「取り残されている」と言えると、私たちは考えています。
学びの経験というのは人それぞれ。ペースは十人十色です。
さらにSALASUSUの工房の作り手女性たちは、日本の教室以上に、バックグラウンドも様々、年齢も様々。
そんな彼女たちに、同じ問題を一斉に解かせても、取り残される生徒が増えるだけ。一筋縄ではいかないことは、容易に想像できるでしょう。
そこで私たちは、様々な手法で自分たちの教育方法を振り返り、工夫してきました。
日本やカンボジアの多くの一般的な学校で取られているスタイルは「一斉授業」と呼ばれるものです。
対して、私たちが今取り入れているのは「協同学習」という手法。
共に助け合いながら、同時に生徒一人ひとりがそれぞれに合ったペース・学び方で学び、全員が学びを得られることを目指して研究・実践されている、最先端のアプローチです。
SALASUSUの工房でも、日本の公立学校で実践を続けている永島孝嗣先生(麻布教育研究所・上席研究員)に伴走いただきながら、教科教養の協同学習を2022年の5月上旬から開始しました。
協同学習の3つのポイント
1. 先生が講義やファシリテーションをしないこと。
その代わりに生徒に課題と資料を渡してグループで学んでいきます。
2. 課題と資料を通して学ぶ。
永島先生によると、「課題で苦しめ、資料と仲間で救う」。先日のトークイベントの中でこのように述べられていました。詳しくは、下記でご案内するイベントの録画アーカイブをご覧くださいね!
3. グループで一つの答えを作り上げない。
教室の全員が同じ課題に取り組み、グループになって学習するものの、グループで一つの答えを作り上げることはしません。
一人ひとりが自分のペースで課題に取り組み、それぞれの答えを出していきます。
協同学習で最も大切なことのひとつは「問いの立て方」。教師がどのように問いを設定するかで、学習の質が変わるため、教師の研鑽は欠かせません。
自由で、かつそれぞれのペースや「らしさ」が守られる、生徒も教師も学びを楽しめる新しい学び方なのです。
実際の算数の問題にトライ!
例えば、ある日のSALASUSUの算数の授業では、こんな課題がありました。
Q. 2、3、5ともう1つ1桁の数字(0〜9)を使って、答えが10になる式を考えよう。必ず一度は割り算を使おう。
答えは一つではありません。
大人も子どもも一緒に、家族やご友人と、楽しんでくださいね!
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▼「協同学習」について詳しくはこちら
(永島先生とのイベントのアーカイブをご覧いただけまます!