2018/06/24 09:26

ーARICの学生ボランティアに、普段の活動への思いを聞きました。

 

 

 

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私は日本生まれ、日本育ちの大学生です。これまでに差別と向き合う機会・差別について考えることはほとんどありませんでした。今でもはっきりと覚えていますが、高校生の頃、連日ニュース映像で盛んに「ヘイト・スピーチ」が取り上げられました。映像から流れてきた、特定の集団へ向けた「殺せ」「出ていけ」という叫びなどには、確かに強い不快感を覚えました。

 

でも、それだけでした。「ひどい」と思っても、何か行動を起こすことはありませんでした。周囲にこの問題に対して強い関心を示す人もいなかったし、近所でヘイト・デモもありませんでした。日本で起きているのに、遠い世界の話のように他人事として捉えていました。

 

それどころか最近まで、ニュースで小耳にはさんだ、「ヘイト・スピーチ対策法」が出来たことでだんだんと無くなっていくだろう、と思っていました。ヘイト・スピーチなんて、一部の変な人たちがやっているもので放っておけばいい、と。

 

しかし、先日ヘイト・デモを初めて見て、「何か行動しなければ」と痛感しました。

 

ある日曜日の午後、新宿でヘイト・デモが堂々と行われました。

デモが行われるコースに従い、過剰なほどの警察官が待機し、デモの参加者側をしっかりと守ります。デモ参加者は、デモをやめさせようとする人たち(カウンター)や一般市民の前で白昼堂々、差別的な言葉をちりばめたプラカードを持ち、楽しそうに叫び続けました。カウンターたちを楽しそうに罵倒し、通りすがりの人達を煽り、堂々と靖国通りに憎悪表現たっぷりの言葉を流し続けました。通りすがりの親子連れの家族や観光客と思われる外国人、一般の人達は不快な表情を浮かべました。その差別的表現の対象がたとえ自分ではなくても、良い気分には到底なれません。

 

最も衝撃を受けたのは、参加者の中に同じ年くらいの若者が先頭に立っていたことです。ヘイト・スピーチを扱った書籍によくあるような、「社会的にうまくいっていない、40代ほどのほんの一部だけがヘイト・デモに参加している」わけではないと思います。最近では、こうしたデモ参加者に若者が続々と増えているようです。もはや、「一部の変な奴ら」では済まなくなってきていると感じます。

 

月並みな表現かもしれませんが、ヘイト・スピーチは、ターゲットになる人はもちろん、それを聞くすべての人の心を壊すものだと、このデモから強く感じました。ヘイト・スピーチの標的になる人が、自律した生活を送れないほど打ちのめされます。アイデンティティに向かって「殺す」「出ていけ」などと叫ぶことは、「表現の自由」を悪用した脅迫です。

 

私たちは、日本で起きているこの大きな問題を、このまま「知らないフリ」し続けるのでしょうか?私達が今アクションを起こさない限り、憎悪を放置し、差別は助長され続けます。それが、今後大きなヘイト・クライムにつながる危険性もあります。

 

ヘイト・スピーチで注目されるのは在日コリアンのことです。しかし現状は、日本にやって来る留学生が外国人差別の対象になり、事件に巻き込まれる可能性も高まっています。実際にARICには、「電車の中、母語で話していたら、突然腕をつかまれ蹴られた」などの、留学生からの被害相談が寄せられています。

 

私たちはヘイト・スピーチに限らず、「差別に向き合ったとき、どうするのか?」について取り組んでいます。

 

ぜひ私達とともに、差別とたたかいましょう。

 

 

M.T.

 

 

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