2020/07/16 20:00

コロナウイルスのパンデミックは、多くの人々に打撃を与えましたが、既に私たちの社会では、最も弱い立場の人々に、より悪影響が及んでいます。しかし、それは時に、人々のチカラを引き出す大きな挑戦でもあります。

ここでは、ヤジディ教徒の若い母親であり、事業主で彼女のコミュニティを変化させる担い手である、コッケさんのお話を紹介します。


難民キャンプでレストランを経営

©CARE/Lotus Flower

コッケ・シヴァン・ハジは33歳。イラク北部のルワンガキャンプに住んでいて、新型コロナウイルスが発生するまで、小さなレストランを経営していました。このキャンプは1万4千人以上の国内避難民が暮らしており、そのうち半分以上が女性と女の子です。キャンプの状況から、多くのこのキャンプや受け入れコミュニティの事業主はお店を閉めざるを得なくなりました。

コッケは言いました。「私たちは、新型コロナウイルスに感染することから自分自身を守るために、家に居る必要があります。私が最後にお店を開いた時から、3か月が経ちました。私は、唯一の収入源を失い、また貯蔵していたたくさんの食べ物は賞味期限が切れてしまいました。


武装グループから逃れるも、新たに立ちはだかる難局

パンデミックが起こる前ですら、コッケと彼女の夫は家族の生活を支えるのに苦戦していました。さかのぼること2014年8月、武装グループが、彼女たちの近所の家を攻撃したり、彼女たちが属する、ヤジディコミュニティに住む何千人もの人々を殺したり、拉致し始めるようになった時、彼女は4人の子どもを連れて、イラク北部のシンジャールから避難しました。

「銃声が聞こえたのは、早朝のことでした。人々は叫んで、逃げ出しました。」とコッケはその時のことを覚えています。「彼らは、女性や若い少女を捕まえレイプしました。私の双子の妹とその娘は捕えられ、殺されました。すべてのものを置き去りにして逃げることが、私たちに残された唯一の選択肢でした。」

コッケ一家は、イラクのクルディスタン地域にある国内避難民のためのルワンガキャンプで安全な場所を見つけることができました。そして彼女たちは、そこで6年以上暮らしています。

「私たちは、自分たちが助かるために、たくさんもがきました。私は、身体的にも精神的にもたくさんの苦痛を感じました。私の右腕は、避難してきてから何か月か経っていてもまだとても痛みました。私はこの痛みが、子どもたちを抱えながら走ったことから来る痛みだといつも思っていましたが、医師はそれをガンだと診断しました。


彼女の夢の実現へ

トラウマを克服したり、病気や痛みを治療したりするとても困難な過程の中、コッケは2年前に、CAREのパートナー団体であるロータス・フラワーに出会い、良い人生を送るための活路を見つけ出しました。彼女は自分自身のビジネスを立ち上げる方法を学び、またCAREから経済的なサポートを受け、彼女は夢だった自分のレストランを開くことができました。

「これは私にとって最も素晴らしい出来事です。」とコッケは説明してくれました。「私は、学校から家に帰る20人の子ども達にチキンサンドウィッチを提供した開店初日を、今でも覚えています。彼らの笑顔は今も私にとってお金に換えられないほど特別なものです。」

 困難な局面をよそに、コッケは、家族だけでなく、国内避難民や難民キャンプに住むその他の多くの女性たちのコミュニティ全体を変えた真の担い手となりました。自身のビジネスを始め、お金を稼ぐことで、彼女はロールモデルとなり、コミュニティの人々からたくさんの尊敬を集めました。また、このことは彼女自身を強くし、家庭の意思決定者にもなりました。


彼女に降りかかる新たな困難「新型コロナウイルス」

©CARE/Malgorzata Markert

しかし、イラクでの最初の新型コロナウイルスの症例の発生により、移動の制限がかかり、また公共の場でソーシャルディスタンスがとられるようになり、彼女のレストランも閉めなければならなくなりました。これにより、彼女はまた、人生での大きな課題に直面することとなりました。

「私はまだガンを抱えていて、手術が必要です。」コッケは言います。「ウイルスの発生から、私は夫に病院に連れて行ってもらうのをためらってしまいます。なぜなら、私たちにはお金がなく、子どもを食べさせなくてはいけないからです。」

 

コッケの家族は、イラクの400万人以上の人々のように、生き残るために人道援助に頼っています。現在、CAREやCAREのパートナーは、イラク北部の国内避難民のキャンプや、受け入れコミュニティで今まで以上に重大な役割を務めています。きれいな飲み水や衛生用品の提供、医療施設の設置、またコッケのような女性を心理社会的にサポートしたり、ビジネスの機会を与えたりすることで援助しています。

 

「私は子どもたちの目を覗き込むと、すべての困難を忘れます。」とコッケは言います。「彼らは私をより強くします。私は、彼らが人生の目標に辿り着けるように、私がサポートできることは何でもしたいです。」


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どんなに困難な状況でも諦めず、自分の夢を実現し、コミュニティまでも変化させたコッケさん。彼女や彼女のような人々が、新型コロナウイルスの影響で、掴んだ夢を手放すことがないよう、CAREでは物資の支援だけでなく、メンタルヘルスへのサポートや生計支援も行っています。

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