2021/05/24 22:26

平林暮らしレポート その1で、野生動物が里に下りて来るのは、人災ですとお伝えしました。

どういうことかというと、少し以前、山に暮らす人たちは、山に入って広葉樹で炭焼きをしたり、地元の木を使って地元の大工さんが家を建てたり、山に薪を取りに行ったり、山と暮らしは切っても切れないものでした。

人の気配があるところには、獣は下りてこなかったのです。人と動物のテリトリーが分かれており、森のめぐみを享受しながら共存できていました。

平林の年配の方に聞いても、昔は野生動物に畑が荒らされるということはなかったと言います。獣害被害は、人々の暮らしが森と切り離されてしまったここ最近の出来事です。

地元に製材所や林業会社があった平林でも、現在は、山だけで生計を立てている人はいないと思います。

日本は、国土面積における森林率が68%を超える世界有数の森林大国です。そして、世界有数の木材消費国でもあります。しかし、今、国内で使われている木材のほとんどは、熱帯雨林を伐採して輸入されたものです。日本は、世界の木材流通の5割に関わっています。

世界の森を破壊し安く木材を輸入し、日本の木は売れないのでほとんど植林されたままの状態で放置されています。その森が荒れて、台風シーズンには土砂災害にも繋がっています。その荒れた日本の森は国土の半分の面積を占めるとも言われています。

里山にあった雑木林は多様な植生からなり、花が咲き、木の実がなり、昆虫が集まり、それらを食べる動物たちが暮らしているいのち溢れる森でした。それが、売れる木を植えようと、戦後の拡大造林政策により植林されたスギ・ヒノキなどの人工林は、外材の輸入自由化により間伐の手が遅れ、林床に光が届かずに他の植生が全くない針葉樹「単体」の森になってしまっています。

そして、日本の木が売れないので、地域の産業も衰退して行きました。人々は森に入らなくなり、人工林にはエサとなるものがないため、動物たちは食べ物を求めて里に下りてくるようになりました。

獣害というと、野生動物が悪いように聞こえますが、その原因を作ったのはわたしたち人間です。経済優先の資本主義社会が生み出した人災だとわたしは考えています。何も知らないと緑が多くて豊かなところだと思いますが、平林の周りを見渡すと、実は一面植林された針葉樹の森なのです。今の日本に必要なのは植林よりも「間伐」です。

では「間伐」とは何か?

わたしたちにもできる間伐について、次回につづきます。

(写真:手入れの遅れた人工林。林床が真っ茶色です。)