2021/05/01 00:03
GW

こんばんは。GWは皆様いかがお過ごしでしょうか。なかなか出かけにくい雰囲気ですが、こんな時だからこそ地元を散策するのも良いかもしれませんね。平井集落も小さな集落ですが、まだまだ通ったことない道や知らない場所が沢山あり、修士在学中に全部見て回れるか不安なほどです。今年も気合を入れて歩き回ろうと思います。

お茶摘み

GWの前後に和歌山研究林では、お茶摘みをします。平井の集落内や、平井から少し離れた大川という集落にある苗畑の脇にお茶の木が植わっていて、研究林スタッフ総出で行う行事です。今日も平井の集落内の木で収穫作業がありました。

お茶摘み風景

お茶摘みというと、静岡や鹿児島のお茶畑を想像してしまいますが、平井ではまばらに植わっていました。背丈も高く葉も大量なので、なかなか時間のかかる仕事です。お茶摘み風景

今日は天気が良すぎたので、野外での長時間労働には少し辛かったかもしれませんが、木々の新緑が良く映えていました。和歌山研究林周辺は常緑樹がメインの森林なので、春になっても冬と変わらないのではないかなあと思っていましたが、まばらに生える落葉樹や常緑樹の新葉が様々な緑色で山を彩るので、思っていた以上に春を感じられます。こういった変化に気付けるのも、山の中ならではかもしれません。

乾燥中

摘んできたお茶は、蒸したり焙煎したり揉んだりしたのち、乾燥させます。実習などで学生が泊まる大部屋は、この時期乾燥中の葉っぱが置かれ、お茶の香りがどことなく漂っていて良い匂いです。お茶の製造過程など、和歌山研究林に来るまで見たことがありませんでしたが、手がかかっていることを実感しました。やはり何でも製造過程に触れる経験というものは大事なのかもしれませんね。

昨年度調査のプチ報告

さて、春になり樹木の生長も盛んになってくるころなので、いよいよ実験も本格的に始動していきます。そこで今回は、研究の流れを知って頂くために、昨年度調査の一部を報告しようと思います。

研究の大きなテーマは当ホームページに書かれているように、天然更新を活用した奥地人工林の広葉樹林化です。そこで、広葉樹が侵入しやすい環境のパターンを認識するため、昨年秋に和歌山研究林内の40カ所で人工林に既に侵入している広葉樹や天然林内の広葉樹の調査を行いました。

調査風景

ここで皆様に質問ですが、同じ面積であれば次の場所のうち、どの場所で広葉樹の個体数が多くなると思いますか?

①天然林内(人工林との境目から30m地点)
②人工林の5m地点(天然林との境目から5m地点)
③人工林の30m地点(天然林との境目から30m地点)

※人工林はスギ・ヒノキ人工林。

普通に考えると、天然林に広葉樹があるのだから種子の量も天然林内が最も多くなり、離れるにしたがって個体数は減少すると思いますよね。僕も当初はそのように予測していました。それでは結果を見ていきましょう。

こちらが結果となります。見て頂くと分かる通り、なんと人工林の方が圧倒的に広葉樹の平均個体数が多かったのです。人工林内の地点間には有意差は見られなかったものの、人工林と天然林の間には有意差が生じており、その差が大きく開いていることが分かります。

予想通りでないことに驚きつつも、もしかすると広葉樹林化に重要な要素が、この傾向のなかに隠されているのではないかと思い、さらに詳しくデータを解析してみました。すると、樹高についても面白い傾向があることが分かりました。

それがこちらのグラフになります。このグラフはそれぞれの場所で、レベルごとに分けられた樹高区分に平均何個体存在したかを示したものです。これを見てみると、最も個体数の多かった人工林の5m地点では、非常に小さい個体が多く存在することが分かりました。一方で、樹高の高い100㎝以上の個体について見てみると、人工林の30mで多くなっていることが分かりました。さらに天然林は2m以上の木が最も多くなっていました。実際に平均樹高を比較してみると、人工林の5m地点は59.2㎝なのに対し、30m地点では81.4㎝と有意に高くなっており、天然林に至っては252.2㎝と、何らかの影響で差が生じていることが分かりました。

これらの現象がなぜ生じたのかを調べるため、様々な環境要因(地温や光環境、傾斜など)との関係性を調べてみましたが、いまいち説明力の高い因数が見つかりませんでした。そこで似たような現象の報告がないか論文を探していたところ、個体レベルで似た事例があることを見つけました。

ここから先は話が長くなってしまうので、次回以降に分けてお話ししたいと思います。皆さんもなぜ、このような結果となったのか理由を考えてみて下さい。因みに正解はまだ分からないので、何を考えても自由です。それでは、どうぞお楽しみに!