2022/03/31 22:57

今日の内容

①花のご紹介
②林業の補助金依存の原因

今日は!暖かくなって一気に花が咲いてきましたね!特に今か今かと待っていたサクラは、一斉に開花してあっという間に満開になったので、びっくりしました。押し寄せる春が感じられて気分もウキウキします!(花粉さえなければ)。僕の好きな山頭火の俳句に「窓あけて 窓いっぱいの春」という句がありますが、今年の春はまさにそんな感じです。

いろんなサクラ

ただ、サクラはあまりにも有名なので、今日は敢えてあまり名前のあがらない木々の花をご紹介していきたいと思います。なお、紹介する樹種は和歌山のものだけでなく、都合で帰省している関東の樹種も含んでいます。

1.アブラチャン

まず、アブラチャン。名前からして面白い樹種ですよね。油+chian(瀝青:半固体の炭化水素)が名前の由来で、その名の通り木全体に油分が多めです。そのため果実や樹皮が燃料や整髪油に使われていたそうです。

小さい花がポコポコ咲いているのが、これまた可愛らしい木です。

2.ナツグミ

続いてナツグミ(の蕾)。夏に実がなるグミ科グミ属なのでナツグミ。「グミ」自体は棘のある実を指すという説があるそうです。花は未だ咲いていませんが、蕾の形が面白かったので紹介しました。ちなみに実の味はそれほど美味しくないそうです。

3.クマシデ

お次はクマシデの花(雄花序)。漢字で書くと「熊四手」。四手は果実の様子が紙垂(しで)に似ていことが由来だそうです。花は地味ですが、シデの中では一番大きな葉っぱを付け、実も大きくなります。それが「熊」部分の由来です。材は柄の部分などによく使われるそうです。また、シイタケ原木や薪炭材にも利用される樹種です。

4.アセビ

こちらは御馴染みのアセビです。漢字で「馬酔木」と書く通り、毒があってシカも食べないので、林床でよく見かける樹木です。その毒を逆に利用して、かつてはトイレなどに実を播いて殺虫剤として利用していたこともあります。小さい個体が多いイメージですが、大きいものは5mぐらいになり、グネグネ曲がった独特の樹形は見ごたえがあります。

アセビは花だけでなく、春の新葉も見ごたえがあります。赤く出てくる新葉が、森の中で木漏れ日を浴びる姿は、灯がボウっと点いているような光景です。

5.ミツマタ

ミツマタも群生地の光景が有名なので、ご存知の方が多いと思います。名前の由来は右の写真を見てもらえば分かる通り、枝が必ず三又に分かれる樹形です。先端まで綺麗に三又で分かれていますね。

紙の原材料として使われていることが有名で、日本の紙幣もこのミツマタから出来ています。元々は中国・四国地方を中心とした国産ミツマタが使用されてきましたが、現在では生産者の高齢化に伴い9割がネパールや中国産になっています。

林床に群生すると、黄色い絨毯が森に広げられたような光景になるので、人気の観光地となっています。

6.コクサギ

コクサギは漢字で書くと「小臭木」。写真はコクサギの雄花です。コクサギは葉っぱの付き方が独特で、右右.左左.右右.左左.右右.左左という風についていきます。このような付き方は、他にサルスベリやケンポナシで見られるそうで、コクサギ型葉序と呼ばれます。クサギは葉っぱを揉むと臭いのが分かりましたが、コクサギから臭いは感じませんでした。ちなみにクサギはシソ科、コクサギはミカン科です。

7.ヒュウガミズキ

ヒュウガミズキは日向と名前についていますが、原産は近畿北部から北陸です。マンサク科トサミズキ属で、小さい黄色い花を沢山つけるのが特徴です。材などに用途はなく、だいたいが観賞用に植えられています。

8.マンサク

同じマンサク科のマンサク。タコみたいな花が咲きます。春先真っ先に咲くので、里に春を告げる花とされています。「真っ先に咲く」が「マンサク」になったという説もあるそうです。他に似たような花をあまり見ないので、一度見ると印象に残る形です。黄色いタコが空から降ってくるような光景が広がります。

9.ボケ

ボケは漢字で木瓜と書いて、「もけ」と呼んでいたのが訛ったとする説があります。梅や桃のように中国原産のバラ科植物で、華やかな花を咲かせるので人気ですね。実は果実酒にも利用されるらしいです。

10.カツラの葉っぱ

最後はカツラの葉っぱです。今日のタイトル写真にもなっています。カツラはハート型の丸っこい葉っぱを付ける落葉樹で、秋ごろに甘い香りを放つことで有名です。春には写真のように丸っこい小さな新葉がたくさんついていて、これまた春らしさを感じさせる光景です。

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如何でしたでしょうか。春の花というと、サクラばかりに目が行ってしまいますが、それ以外にも綺麗だったり可愛かったり面白い花があちこちで咲いています。また、カツラの新緑のように、花以外にも春の訪れを知らせてくれるものもあります。そういえば北海道の春は、落葉樹が新緑を一斉に付けるので、花よりも葉で春を感じていました。皆さんの周りにも、何か面白い春ならではの光景があったら是非教えて下さい!


林業の補助金依存の原因

参考:「林業は所有者を犠牲にしてきた」 元農水官僚の独白 日経

さて、前回からの続きで日本経済新聞が3回に渡って連載していた「日本林業の課題」の最終回を読んでいこうと思います。今回の記事で面白かったのは、日本の林業がなぜ補助金に依存するようになってしまったのか、その原因について触れられていた点です。これまで、あまりこの部分に言及している文章を読んだことが無かったので、面白く読めました。早速、その点について見ていきましょう。

記事では補助金依存の根本的な原因は、日本の森林政策が「林業が儲かる」という前提のもとで、「森林資源の保護」に重点が置かれていた点にあると言います。たしかに、高度経済成長による旺盛な住宅需要に支えられ、1980年代まで儲かることが当然だった林業を管理するのに、産業的な努力を促す方向ではなく、開発を制限することの方が重要であるのは理解できます。

しかし高度経済成長期が終わり、1980年以降になると、安く均質な外材に押されると同時に、建築手法の変化なども相まって、国産材の産出額が落ち込み始めました。このタイミングで、「林業」を産業として発展させる方向へ、林政の舵を切るべきでした。しかし実際には、それまでの「森林整備」を重視する政策が続けられ、どうしたら「儲かる林業」が可能になるか、という視点が欠けてしまいました。その結果、一定の制限を守る森林経営に対し、補助金が支給される構造だけが残ることになったのです。

ただ、森林整備に主軸を置くことは悪いことではありません。例えば、「森林経営計画」(行政の森林経営計画に則り、森林所有者等に5年ごとに策定することが求められる)では、伐採量の上限が設定されることにより、森林の乱開発を防ぐことができます。しかし、市場の木材需要の変化に応じて増産しようとすると、制限を越えるために補助金が支給されなくなるという弊害も生じます。そのため、変化する市場に対応するか、安定して確実に得られる補助金に頼るか。この二択を迫られた際に、後者を選ぶ森林経営者が多くなるという事態が発生するのです。これが林業の産業的発展を妨げる一因になっているといいます。

今後の指針

問題だらけの日本の林業。では、これからの森林経営はどうあるべきなのでしょうか。今回のインタビュイーである針原寿朗氏(現住友商事顧問で林野庁林政部長や農林水産審議官等を歴任)は、森林の持つ多機能性に目を向けるべきだと主張しています。この点には私も同意します。

現在、森林を使った主な経済的収入源は木材生産しかありません。しかし森林は、もっと大きく基盤となる部分で、生態系サービスを供給し人々の生活を支えています。水源涵養や大気の平準化作用、生物多様性保全機能などです。こうした生態系機能としての価値を、金額化することで「林業」という作業に多様な経済価値を見出すことが出来ると私は考えています。こうした利益によって補助金よりも大きな収益を出すことが出来れば、木材生産でも市場の変動により沿った経営がしやすくなるのではないかと考えます。また、他の機能からも収入を得ることで、木材生産とその他サービスとのトレードオフも生まれるため、補助金が無くても森林保全の配慮が必要になります。

実際、こうした林業の在り方がスイスでは実践段階にあるといいます。森林管理を怠ることによるリスクを金額化して、その不利益を被る企業や自治体に提示する。そうすることで、林業への投資を積極化させ、林業の経済的価値を高めているようです。日本は災害大国であるため、こうしたモデルから見習うべき点も多いのではないでしょうか。


今回は以上です!どうぞ次回もお楽しみに!