2022/07/31 21:28

いよいよ8月になりますね!平井でもカンカン照りの日が続いて、夏本番といった感じです。

昼間の気温が上がってくると、毎年恒例のツチガエルの整列が見れます。この日は、8匹が微動だにせず並んでいました。単純に天敵から隠れるためにトタンの下に入っているのか、日よけのために隠れているのか。真相は不明ですが、何度見ても面白い光景です。

近くで見てみると、かなり過密状態になっていることが分かります。ちなみにツチガエルの鳴き声は、低い音でグェー、グェーという感じで鳴きます。お腹に響くタイプの音です。

彼らの天敵となるヘビもやってきました。ヘビの種同定は自信があまりないのですが、たぶんヤマカガシの関西特有の色をした個体だと思います。こうしてみると、結構可愛い顔をしていますが、強い毒を持っています。性格は大人しいですが、見かけたら気を付けましょう。名前の由来は「大きい蛇」の古語だそうです。

一方、こちらは調査中に見かけたシマヘビの幼体。シマヘビと言えば、その名の通り、シマシマ模様が特徴的で灰色っぽいイメージがありますね。ただ、子どもの頃は写真のような赤い色をしているそうです。同じく赤いヘビとして、ジムグリと呼ばれるヘビも有名です。こちらは、普段は物陰に隠れており滅多に見ることができないそうです。名前は「地に潜る」が由来で、ネズミの穴などに入って捕食する姿から名づけられたそうです。

視点を上にあげてみると、今度はツバメが並んでいました。来客用の布団が干されている光景も相まって、初夏の清々しい雰囲気が感じ取れます。人のいる建物を天敵避けに使ったり、田んぼ付近の材料で巣を作ったりと、上手く人間の作った環境を利用していて賢い鳥です。

色んな天敵からの攻撃をかいくぐって、今年の春に巣立ったばかりの個体もいるかもしれませんね。とにかくみんな元気に飛んでいて一安心です。9月も中ごろになれば、再び数千㎞の旅路を南へ下っていきます。その移動に備えて、これからの期間はとにかく腹ごしらえをするそうです。来年も元気に平井に帰って来てくれると良いですね。


シカの死体

山の方では、崖から転落した仔鹿が道端に横たわっているという情報が入ってきました。話を聞いた2日後に、早速見に行ってみると、トンビが肉を啄んでいました。他にも、ルリセンチコガネという宝石のような昆虫や、スズメバチ、シデムシがうじゃうじゃたかっていました。この時の写真は流石にショッキングなので、載せるのは控えておきます。

ということで2週間後に再び見に行きました。すると、見事に骨だけになっていました。たったの2週間で、これだけきれいさっぱり無くなってしまうなんて、森の掃除屋は仕事が早いですね。嫌な臭いも一切しませんでした。

写真は脊椎ですね。頭部と脊椎や骨盤が離れた位置にあったことから、哺乳類がひっぱった様子がうかがえます。死体に集まってくる動物のなかには、研究林周辺だと、テンやタヌキがいるそうです。

また、カルシウムが不足しがちな地域では、動物たちが残った骨を舐めることで、カルシウムを補給することがあるそうです。そうした地域では、森を歩いても骨が見当たらないそうな。その一例かは分かりませんが、以前、北大の札幌キャンパスでリスを撮っていたとき、骨をかじっているリスがいました。もしかしたら、このリスもカルシウムを取りたくて、必死に骨をしゃぶっていた可能性があります。

森のなかでは、生き物の死骸がこうした連鎖によって土に戻り、再び植物の栄養となって、生態系ピラミッドを登っていきます。もし、こうした分解の連鎖がなければ、森は死骸であふれ、植物は栄養を使い果たし、生態系が崩壊してしまいます。死骸の分解と聞くと、少し目を覆いたくなるような現象ですが、このステージが全ての始まりにつながっているわけです。

和歌山研究林には僕の他に、もう一人学生がいます。彼は、まさにこの「死体の分解」をテーマに研究を行っているところです。古座川にあるジビエ工場から、シカの頭を何個かもらってきて、研究林内のあちらこちらに設置し、分解過程を観察しています。この日は、置いてから2日後の観察に行くというので、ついていくことにしました。

緑色の網の中に、鹿の頭が入っています。網は哺乳類に持って行かれないようにするためのものです(ただ、昨年はこの努力もむなしく、一部のお肉が持ってかれてしまったそう)。まだ2日ということもあり、まだお肉が残っています。周辺には、死骸を食べたり産卵場所とする昆虫が集まっていました。

殺伐とした光景の中で、一際目を引くのが、キラキラ輝くこちらの昆虫。先ほどご紹介したルリセンチコガネです。緑色や青色に輝いて、まるで宝石のようですが、糞や死骸に集まってくる昆虫です。色は地域によって異なり、バリエーションはこちらのニュースに載っているぐらい沢山あります。山で調査していると、ときどきこの虫が飛んでくるのですが、ずんぐりむっくりしていて上手く飛べないのか、重たそうな羽音を響かせてきます。頑張って飛んでいる感じがして健気です。

手のひらに乗せると、指の間をこじ開けるように下へ行こうとします。地面でも、とにかく地表に露出しているのが嫌なようで、葉っぱの裏や地面を少し堀ったところでごそごそやっていることが多いです。意外と力が強いことにびっくりします。

こうした動物によって分解されたのち、さらに細かく分解してくれるのが菌類です(写真は枯れ木についているサルノコシカケの仲間の写真なので、動物の分解とは関係がありません)。動物の死骸だけでなく、樹木も最終的には、彼らの手によって細かく分解され土壌に戻っていきます。彼らがいなければ、森の中の土は形成されません。何かの破片がいつまでたっても転がっているような空間ができてしまいます。目立たないどころか、ほとんどの菌類は目に見えませんが、それでも非常に重要な仕事をしているのが彼ら菌類です。

彼ら菌類が作り出す面白いものが転がっていました。こちらは菌の働きによって、青く変色した朽ち木です。カビっぽく見えることもあるので、材の価値を落としてしまうこともありますが、綺麗な青色をしていることから、木工芸では重宝されることがあります。青っぽいものが珍しい林内では、結構目を引いています。


古座のお祭り

前回は、那智のお祭りをご紹介しましたが、7月後半は古座川の河口でもお祭りがありました。本来であれば、賑やかな装飾をほどこした船を使って、盛大に行われるお祭りですが、コロナ禍と言うこともあり規模を縮小しての開催。それでも、久しぶりのお祭りに、賑やかさが感じられました。

本番の獅子舞は、都合で見ることが出来なかったので、練習会の様子を少しだけご紹介します。練習会は、ふもとの地域の青年団集会所で行われていました。この建物自体も、大正時代建造でなかなか手の凝った木製の装飾が興味深い建物です。

青年団は互盟社と呼ばれ、創設は明治時代だそうです。地域のお祭り運営や、敬老の催し、クリスマスのイベントなどを運営しているといいます。

獅子舞を見るのは10数年ぶりですが、改めて見ると、手足の流れるような動きが一朝一夕の技ではないことが伝わってきます。先輩社員から細かい指導が入っているところなどを見ると、こうして脈々と受け継がれてきたのだなぁと実感しました。3年間で一度は本番のお祭りを見てみたかったものですが、この練習の様子を見れただけでも価値がありました。お祭りがフルで出来るようになったら、是非皆様も古座川へ見に来てください!


研究進捗

温室実験の方は、10週間経過後にバイオマス測定へと移る予定です。そのため、8月中に新たなデータが得られることはありませんが、関係する論文などを次回以降紹介できればと思っています。どうぞお楽しみに。