2022/09/15 23:27

こんばんは。この前、田植えの報告を書いたと思ったら、もう収穫の時期ですね。稲が植わっている間は、まだ夏だと言い張ることができますが、はぜ掛けが始まってしまったら、否応なしに秋を受け入れるしかありません。そんなわけで、今回は稲刈の様子からご紹介したいと思います。

夏の間日差しを浴びて青々と茂っていた稲は…

この季節になると、乾燥して小金色になります。こんな風に色が変わったら、台風の間を見計らって稲刈をします。この日は、秋になったとはいえ、まだまだ日差しが強く照り付け、なかなかの暑さでした。

まずは、機械を入れられない隅っこの方を、鎌を使って刈っていきます。平井の田圃は平野部のように四角く整備されていない棚田なので、畦が綺麗な曲線を描いています。棚田は一枚あたりの面積が難しく、機械を導入しても効率が悪かったり、そもそも機械を入れられないような場所もあったりと、維持が難しいと聞きます。それでも平井の中心部の棚田は、まだまだ現役で使われていて生活感が感じられる風景です。

写真に写っている方は、この前のポツンと一軒家で紹介されていたおばあちゃんです。この日も、朝から駆け付け凄い勢いで稲を刈っていきます。

このおばあちゃんは背丈が稲とほぼ一緒なので、田んぼの反対側から見ると、ほとんど姿が見えません。ちょこっと白い帽子の先端が見えるぐらいです。

それにも関わらず、休憩もせず誰よりも元気に作業をこなしていきます。ちなみに、この日は僕も少しだけお手伝いさせてもらったのですが、日差しが強くて直ぐにバテてしまいました。自分でやってみると、ばあさんの体力がいかに並はずれているか思い知らされました。とても、90歳の一歩手前とは思えません。

手で刈り取った稲は、去年の藁を使って束ねていきます(機械の場合は糸で自動的に括られるようです。便利ですねぇ)。こちらの方も、80を越えてなお現役です。

一枚の田んぼが刈り終わってきたら、「なる」と呼ばれる稲を干すための棒を組み立てていきます。「なる」は呼び方に地域差があって、「長木」「はさ」「はぜ」「稲木」「稲杭」などなど様々です。皆様の地域では何と呼びますか?

なるを組み立てたら、束ねた稲を架けていきます。ここで、別の田んぼを干し終わったご近所さんが、助っ人に来てくれました。果てしなく感じた作業も、10人も集まればあっという間に進んでいきます。

稲で覆われていた田んぼが刈り取られると、隠れていた生き物が一斉に出てきます。バッタやカメムシが慌てて逃げ場を探しているようです。


そうして出てきた虫を捕まえようと、トンボも集まっていきました。飛んでいるトンボにピントを合わせるのは至難の業なので、逆光で撮って光らせてみました。休憩している方々の頭上にある白い点々が、全部トンボです。

昆虫界の食物連鎖でトップに君臨するトンボは、虫たちに取って脅威の天敵です。最近では、その関係性を使って、オニヤンマのストラップを身に付けることで、アブ避けにする人も多いそうです。実際かなりの効果があるらしいので試してみたいなあと思っています。

毎晩合唱していたカエルたちの子どもも旅立っていきます。また来年、戻ってくると良いですね。

結局、この日は大勢の助っ人が加わったこともあり、日没前に全ての田んぼを干し終えることが出来ました。あとは数日間干しっぱなしにします。

水浴びが大好きな近所のワンちゃんも、秋の風を心地よさそうに受けています。毛色が稲の色と馴染んでますね~

今年は、稲の乾燥状態が良かったらしく、干し終えた2-3日後にはもう回収作業に入っていました。来週は台風も近づいているそうなので、ちょうど良いタイミングでした。

収穫された稲。一連の作業を見ていると、米の味を噛みしめながら食べたい衝動にかられます。

”収穫”という一番楽しい部分しかお手伝いしていませんが、また来年も手伝いに来たいです。


ククサ作り

さて話題は変わって、ククサ作りについてです。ククサとはスカンジナビア半島の北部やロシアの一部地域に住むサーミ人の伝統的な木製マグカップのことを指します。サーミ人はトナカイの遊牧で有名な少数民族です(※ただし、実際にトナカイ遊牧を行うサーミ人はごく一部の山岳サーミと呼ばれる人々で、大多数は異なる生活様式をしていた。トナカイ遊牧を行うことが、異民族の特徴とされ課税された時代もあり、他民族からの押し付け的な意味合いが含まれることもあった)。

彼らが樺の節瘤(ふしこぶ)の材を使って作っていたのがククサです。瘤とは、木にできる腫瘍のようなものです。時々森を歩いていると、木に大きなコブが出来ているのを見ることがあると思いますが、あれです。形成される理由は、害虫や落雷などの外的要因から、病気や遺伝的なものなど内的要因まで色々です。瘤材は、面白い杢(模様)が出るので、日本でも好んで用いられることがあります。

そのククサを研究林でも作ってみようということになりました。というのも、クラウドファンディングのツアーで行っている木工体験の一環で、このククサが選ばれたためです。

ただ、樺の瘤材など、欲しい時にタイミングよく簡単に手に入るものではないので、今回はスギとイヌザクラを用いて千井さんが試作してくれました。イヌザクラはサクラと名乗っているものの、葉っぱも樹皮も花の付き方も全然ソメイヨシノやヤマザクラと似ていません。東京農工大の紹介によると、花は試験管を洗うたわしのような感じらしいです。

スギは針葉樹なので加工しやすいそうですが、広葉樹のイヌザクラは堅く、コップの穴を掘るのにかなり手こずったそうです。研究林にはコップのための機械など無いので、ドリルで何カ所か穴を開けたら、ひたすら鑿で整形していきます。最終的には、上の写真のようにめちゃくちゃ綺麗な形に仕上げてくれました。きっと、持ち手の曲線は人間工学の膨大な研究に基づき、複雑な計算によって導き出された最適な設計になっているに違いありません。まあ冗談ですが、それぐらい綺麗な仕上がりでした。

形が出来たらひたすら煮込んでいきます。実は、この試作品は第2群で、初めて作ったスギのマグカップは乾燥中にヒビが入ってしまい、底から飲み物が漏れてしまいました。千井さんの調べによると、煮詰めることでヒビ割れ防止の効果があるようで、1日中ぐつぐつ煮込んでいきます。

透明だった水は、夕方ごろには真っ黒に変わっていました。たったコップ1個分で、この黒さ。一体何が滲出しているのでしょうか。化学分野が苦手すぎて何にも分かりません。香りは、木の風呂に入った残り湯みたいな何とも言えない感じでした。

茹で上がったものがこちら(手前)です。元の状態(奥)と比べると、全然色が違いますね。なんでこんな色になるのか、ご存知の方がいたらご教示くださると幸いです。

茹で上がったものを、タオルで包んでゆっくり乾燥させたのち、来林した支援者の方に最後の研磨作業を行ってもらいました。「工作に集中すると時間が経つのを忘れて打ち込んでしまう」という支援者の方。本当に黙々と磨いておられました笑。少し削ると元の白い材が出てきたのも面白いポイントです。

今回は時間がなく、途中で終わってしまいましたが、スギの方のマグカップを僕が研磨中なので完成したらまた報告に載せたいと思います。


土壌操作実験

さて、10週間の生育期間が終わり、温室のヤマザクラとアカガシも収穫の時期がやって参りました。あんなに小さかった子たちも、寒冷紗越しに夏の日差しを浴びてすくすく育ってくれました。

特にサクラの成長は著しく、流石先駆種だなぁと思わされました。まずは彼らの身体測定です。樹高と基部直径を図っていきます。

身体測定が終わった実生は、バイオマス(質量)を量るために土を落としていきます。また、地上部と地下部で応答が異なる場合があるので、分離して保管します。これを480個体に行います。

終わったものがこちらです。ここから、葉面積を出すために、一枚一枚の葉の長さを計測していきます。ヤマザクラの封筒は桜餅の匂いがして、食欲をそそります。

こんな感じで一枚一枚、計5000枚程度を測っていきます。座りっぱなしで腰が痛くなりました。

気になる結果は…、まだ解析し終わっていないので、次回以降にご紹介したいと思います!お楽しみに。