2021/12/10 08:00

鎌倉教場の「今」をお伝えします。

今回は「門人の普段の生活」についてです。


令和3年10月5日から開始したこのクラウドファンディングも、残すところあと5日となりました。

まだ目標額には達しておらず、不足する金額と残りの日数を見ると、達成が危ぶまれます。

なんとかして達成し、より良い稽古環境を整備いたしたく、皆様からの引き続きの応援をよろしくお願いいたします。


さて、大日本弓馬会の鎌倉教場では、毎週日曜日に約35名が流鏑馬の稽古をしています。

鎌倉教場が完成して約1年が経過しましたが、その間に7名が新たに入門しました。

逆に、稽古を続けることができずに辞めた者も数名いますので、結果的には微増ということになります。

800年続く伝統の流鏑馬を維持継承していくためには、次世代の育成が欠かせませんので、新たに門戸を叩いた勇気に敬意を表するとともに、ここ鎌倉教場で稽古を積むことで成長を遂げ、今後活躍することを期待してやみません。

この35名の門人(門弟のこと)は、かねてからの教えに従い、流鏑馬を生業とすることは禁じられていますので、全員が別に職業を持つ社会人や学生などです。

会社経営者、自営業者、会社員、公務員、大学生、高校生、中学生など様々です。

流鏑馬を習うということは、毎週日曜日の朝から昼過ぎまで行われる稽古に参加するだけで済む話ではありません。

稽古よりも大事なこととして、まずはコロナ前は年間12~13回行われていた「行事」に奉仕しなければなりません。

行事に奉仕する日は、朝7時頃から夕方6時頃まで拘束時間があります。

加えて、行事直前の稽古の後には夕方5時頃まで行事の準備が行われ、行事直後の稽古の後には同じく夕方5時頃まで行事の片付けが行われます。

そうすると、行事があるたびに、3週連続で朝からほぼ丸1日、日曜日が流鏑馬づけとなります。

1年間に日曜日は52回しかありませんので、そのうち30回以上は日曜日が流鏑馬づけとなり、それ以外の日曜日も朝から昼過ぎまで流鏑馬三昧となるのです。

この時間的制約は、なかなか厳しく、これに耐え切れずに諦める者もいます。

とはいえ、行事への出席は最優先にする必要はあるものの、稽古が行われる日曜日に仕事や学校行事が入る場合は、稽古を欠席せざるを得ないこともあります。

1回稽古を休むと取り戻すのに3倍かかると云われていますので、上達の妨げにはなりますが、各自の可能な範囲で稽古に参加することを認めています。


この点、かつては行事の欠席は一切許されず、稽古は原則として全出席が求められ、特に入門して最初の3か月は稽古の欠席が一切許されていませんでした。

しかし、これを実践できる者は限られることから、語弊があるかもしれませんが、日頃「暇」な者しか流鏑馬に関わることができなくなり、人的な偏りが生じかねません。

そのため、現在は、出席要件を緩和している状況です。

かくいう筆者は、仕事の都合で稽古を2か月休んだことがあるほか、同じく仕事の都合で約半年に渡って隔週でしか稽古に参加できないときもありました。

休んだ分、復帰した後にガムシャラに稽古に励みましたが、何とか射手としてやれていますので、上手いこと仕事と両立できたのではないかと思っています。


いずれにしても、門人たちは仕事や家庭と両立させるため、皆それぞれに工夫をしています。

日常生活への侵食具合が大きいため、職場や家族の理解が欠かせないのです。

職場や家族に応援してもらっている者、職場や家族を巻き込んでいる者、職場や家族に良い具合に諦めてもらえている者など様々です。

特に、日曜日ではなく日付指定で行事が行われることもあるので、平日に休暇を取るため、職場との調整は欠かせません。

更には、海外遠征の場合は1週間以上も国外に滞在することになるので、職場との調整が最重要ポイントとなります。

かくいう筆者は、日頃から牛馬の如く働き尽くし、いざというときに「休むな」と言わせない空気感を醸し出しておくようにしていますが、それでも無理なものは無理だったりします。

このように、流鏑馬を伝承しようと稽古を積んでいる者たちは、人生のうちのかなりの部分を流鏑馬に割いていることになります。

しかも、流鏑馬は安全そのものとは口が裂けてもいえませんし、中堅クラスの射手になると的中成績も求められることから、流鏑馬を奉納するたびに重圧を感じながら騎射をすることとなります。

また、流鏑馬は騎射だけで成り立っているわけではなく、そこに至るまでに様々な作業が生じます。

これらの裏方としての仕事も大日本弓馬会の大切な役割です。

このように流鏑馬を維持継承するのは、非常に大変です。

大変すぎて、その膨大な作業量と使命感の重みに、もはや苦行・苦役とさえ思えることもあります。

もはや、「余暇を楽しむ趣味」などでは決してなく、流鏑馬を継承していくことについての強烈な使命感なくしては成り立ちません。

かつて、ある先輩から「楽しいうちは一人前ではない」と云われたことがあります。

まさにそのとおりで、楽しい・楽しくないという価値観を超越した領域で、門人たちは皆、ひたすら使命感を持って取り組んでいるのです。

そうはいっても、ここ鎌倉教場で稽古を積んでいる門人たちは、超人・奇人の類ではなく、皆が普通の生活をしており、そこに流鏑馬という要素が入り込むことで、この世界にドップリつかっているに過ぎないのです。

これら頑張る普通の者たちに対し、より良い稽古環境整備のため、皆様の温かい御支援をよろしくお願い申し上げます。


2021年12月15日(水)まで

伝統の技、流鏑馬の馬場に散水用設備、更衣室と日除けを!安心して稽古を続けるために

https://camp-fire.jp/projects/view/449211