2020/07/14 18:00

残り期間1週間、支援してくださった方は70名を超えました!
ゴールへはまだまだ遠い状況ではありますが、多くの方に背を押していただいていることに心から励まされております。


さて今回の活動報告では、普段は企業で勤め業務外ではAnother Teacher(法人化予定)で中核を務めつつ、ウィルドアの現場にも必ずと言っていいほど駆けつけてくれる朴 常綜 (パク サンジョン)さんに、高校生に関わることの意義をゲスト視点から伺いました。

ウィルドアの現場には、様々な立場や考えを持った方々をゲストやファシリテーターとしてお呼びしています。こうした方々のおかげで、ウィルドア内部にある価値観や経歴だけでは伝えることができない多様な高校生の出会いや学びが生まれています。


Q.なぜ高校生に関わりたいと思ったんですか?

ぼく自身が高校時代、進路についてとても悩んでいたので同じように悩む高校生の力になりたいと思うようになりました。

実は、中学3年生の時に自営業を営んでいた父親の会社の経営が傾き、家庭環境が大きく変わりました。高校は進学校に進んだのですが、家の状況も踏まえて「このような状況で勉強をして大学に進学して、本当にぼくは幸せになれるの?」と、いつも心が晴れず悶々として過ごしていました。


「大学に進学する意味」がいよいよわからなくなり、未来が不安になったのは高校3年の12月でした。小学校時代からずっとウチで飼っていた犬を病院に連れて行くことができず、目の前で天国に逝く瞬間を見届けたんです。

そのとき「大切な家族も救えないのに、なぜ今ぼくは勉強しているのだろう」と思い、大学に行く意義を本気で見失っちゃったんです。今すぐにでも働いた方が良いんじゃないかと。


今思えば、ぼくはいつも、ぼくの疑問に真っ向から応えてくれる人に聞いてみたいことがたくさんあった。そして、こんな状況でどうすればいいのかを教えてほしかった。


「未来は楽しいよ」と思わせてくれるような大人に出会いたかったんです。


今でもまだまだ未熟ですが「かつての自分のような状況に置かれていて、将来に悩んでいる高校生に会いにいく」そんな気持ちで、高校生に会いに行っています。



Q.どんなことを伝えたいですか?

ぼく自身の経験もあって、家庭に何か事情を抱えている子や途中から家庭環境が変わってしまった子に「あなたの身に何が起きたとしても、あなたの可能性は無限大であることには変わりない。あなたはあなたであるだけで、生まれた瞬間から最高の存在なんだ」と伝えたいです。どんなに事情を抱えた子であっても、存在を肯定したいんです。


どんな状況にいたとしても、最も重要なのは「それでも自分で選ぶこと」だと思っています。自分で決めて選ぶことで、いつの間にか何かのせいにすることをやめています。

そんなことも合わせて伝えていきたいなと思っています。

Q.印象に残っている高校生との出会いはありますか?

昨年度、伺わせていただいた定時制高校で出会った子ですね。

最初は5,6人のグループでふざけ合っていたんですが、ぼくが「今は働きながら、通信制の大学に通ってるんだ」って話をしたら、その瞬間パッと目の色が変わって。その後の休憩時間中に、こっそり小さい声で話しかけてきてくれたんです。


「ぼく、実は学問に関心があって、経営に興味があるんです。でも学校の友達にも誰にも言えなかったんです」って。


母子家庭で高卒就職を決めているそうだったんですが「ぼくも今働きながらお金を貯めて経済・経営を学んでるんだ」って話をしてみたら、普段そんなコト絶対しなさそうな男の子が胸ポケットから手帳とペンを取り出して、ぼくの顔を見ながらものすごく真剣な顔でメモをしてくれたんです。


「自分の経験が役に立った!」って思えた瞬間でした。


こうした出会いのお陰でぼく自身、不安や悩みを抱えている子の力になりたいんだって気づけました。同時に、人との出会いは偶然によってもたらされることも多いので、どんな形かはまだ見えていませんが、自分の力で出会いをコントロール可能なものにできたらいいなという目標も生まれました。


Q.普段は別に仕事を持つ大人が関わることの良さってなんだと思いますか?

高校生にとって進路や目標を考える機会はたくさんあると思うのですが、ぼくみたいな普段別に仕事を持つ大人が関わることの価値は、仕事の内容に対して個人の価値観を掛け算で伝えられることだと思います。

例えば、今自分がどんなことを普段仕事としてやっているのかに加えて、そこにどんなやりがいがあるのかは、教科書やネットでは知れない生の情報だと思っています。

今、リアルに挑戦したり悩んでいる大人に出会うことで、情報としてしか知らなかった”仕事”や”大人”の姿が、身近な手触り感のあるものになっていくと思います。


Q.大人側にとっても良さはありますか?

めちゃめちゃありますよ!

ぼく自身、高校生たちとの関わりの中で学んだこと・気づいたことがたくさんあります。

高校生は会社の名前や肩書きというよりも、目の前の大人の言葉や考えを見てくれます。そんな彼ら彼女らとの等身大の言葉でのコミュニケーションは、「なぜ自分はこの進路を選んだのか」という原点にいつも帰らせてくれます。

同時に高校生からもらえる御礼の言葉も本当に嬉しいもので、ぼくたち大人側にとっても、とても大きな励みと自信になります。


それに教育に関わってみると、本業で忙しいはずの人たちが本業と同じか、それ以上のエネルギーを持って活動をしているので、そんな方々と交流できるのも本当に刺激的です!

想いの注ぎ先が見つからず悶々している社会人の方々にこそ、ぜひ学校に足を運んでみてもらいたいですね。


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ありがとうございました!

私たちの活動は、朴さんのような思いある大人と高校生たちとの出会いが、もっと日常に、普通に起きていくように願うものでもあります。今後も一人でも多くの高校生にとって手触りのある未来像を描き、一歩を踏み出していける仕掛けをつくっていきたいと思います。

インタビュアー・記事作成:武口