2021/07/30 19:10

こんにちは。7月も終わりいよいよ8月へ突入ですね!平井も蝉騒が本番となってきました。

さて今日は以下の3つの内容をお話しします。

1. 研究林ガチャガチャ
2. 土壌操作実験
3. 新型造林用林業機械


研究林ガチャガチャ登場!

和歌山研究林の知名度アップの一環として、研究林産材を利用したガチャガチャが登場しました!色々な樹種を利用したマグネットやストラップなどが入っていて、その樹種の詳しい説明も載っています。設置場所は古座川町内の道の駅です!古座川町にいらした際はぜひお試しください!

記念すべき一回目は先生のお子さんが回しました!職員さんたちが見守る中ガチャガチャにお金を投入し、ハンドルを回します。はたして何が出るか…

枝のストラップが出てきました!50個中2個しか入っていないレアアイテムであることを告げられると、お子さんは大喜びで飛び跳ねていました笑。僕も全部なくなってしまわないうちに試しに行こうと思います!


土壌操作実験

先週、殺菌したところまでご紹介しましたので、その続きからお話したいと思います。

殺菌した森林土壌と殺菌しない土壌を準備したところで、ポット苗づくりに進みます。まず準備した森林土壌に赤玉土を混ぜ込み菌類以外の土壌構造の均質化を行います。こうすることで、もし結果に違いが出てきたときに菌類の影響だと言いやすくなります。赤玉土を混ぜ込んだ森林土壌(左)とそれを入れるポット(右)

赤玉土を混ぜ込んだらいよいよ育てていた実生を植え替えます。今回実験に用いるのは種子を確保することが出来たアセビ・ヤマグルマ・マンリョウの3種で、5月28日に播種し丁度2か月程度育てたものです。

アセビは馬酔木と漢字で書くことからも分かる通り、毒性のあるツツジの仲間です。調査地では広く確認されている種でもあります(ただ萌芽が多すぎて毎木調査がきつい…)。ヤマグルマは広葉樹なのに針葉樹だけに見られる「仮道管」という組織を持っている変わった種で、崖に生えていることが多い種です。マンリョウは冬に赤い実をつける小低木でセンリョウなどと共に縁起物の植物とされています。

これらの3種を発芽用のポットから抜き取って表面を軽く殺菌した後、植え直していきます。1個1個がとても小さいので、なかなか神経を使う作業でした。1ポットに3つずつ植えていき全部で180ポット作っていきます。

完成したポット

殺菌した実生を植えている様子

植え終わったポットは温室に持っていきます。温室は平井集落ではなく、少し下流の大川集落と言うところにあります。苗畑や実験用の土地もあり、一部ではヤナギを使った多様性に関する実験が行われているところです。この季節の温室は灼熱地獄になっているため、水分補給と休憩を挟みながらの作業でした。

温室

畑の準備はまず雑草を引っこ抜いて、温室の地面とポットが触れないように掘り下げます。その上に殺菌した板を渡してポットの台を置き、最後にポット苗を入れます。ポットの位置は処理ごとに環境の偏りが出ないよう事前にランダムな位置を決定しており、その配置に従って並べていきます。

温室の環境整備の様子

最後に寒冷紗をかけて直射日光を遮ります。温室は林床と違い日光を遮るものがないので、実生が日焼けしてしまう可能性があります。そうなった場合、土壌菌類以外の原因で枯死してしまうことになるので、防ぐために寒冷紗をかけてあげます。

寒冷紗をかけて直射日光を防いでいるところ

ここまで行ったら結果を待つのみです。1週間おきに観察して生存率を確認していきます。どのくらいの期間で結果が出てくるかは明言できませんが、面白い結果が出てきたらまた報告したいと思います!


新型!造林用林業機械

さて話題は変わって林業に関する面白いニュースがあったのでご紹介します。今回の話題は林業機械です。

記事はこちら:荒れ山「ジョージ」にお任せ、キャニコム 造林機拡充 日経7/15

林業機械というのはその名の通り林業に用いられる機械のことで、農業で言うところのトラクターやコンバインのようなものです。林業で有名なものにはハーベスタやフォワーダーがあります。ハーベスタはその名の通り、収穫するときに使う林業機械で、立木を切り倒して枝を除去し輪切りにして運びます。ほとんどの作業がこの一台で済んでしまう超高性能な機械です。フォワーダーは玉切りにされた材をトラックが運び出しやすいところまで持っていく機械です。他にも、伐倒と集積のみ行うフェラーバンチャや玉切りと枝払いを行うプロセッサ、簡易的な架線集材が可能となるタワーヤーダーなどが開発されています。急傾斜地が多いことや、機械を効率的に使うのに初期投資が嵩むことなどから機械化が遅れている日本ですが、徐々に林業機械は広がりを見せており今後の活用が期待されています。

完全に余談ですが、林業用高性能機械のハーベスターを運転できるゲームがあります。いったい需要がどれほどあるんだろう…と困惑しながらインストールしてみると、意外にもよく出来ていて伐倒、枝払い、玉切りの過程が全て体験できびっくりしました。興味がある方は一度試してみると良いかもしれません⁈

ここまでのお話で勘の良い方はお気付きかもしれませんが、既存の林業機械は伐採時に使うものが大部分です(※北海道等一部地域では造林用のものも利用されているところがあります)。伐採した後は資源の循環利用や治山の観点から再造林する必要がありますが、再造林に必要な機械がほとんど開発されてきませんでした。造林に必要な作業は伐倒や材の運搬よりも人手と体力を必要とする作業でした。林業はこの20年で就業者数が半数になるほど人手不足が深刻で、人手と体力が必要とされる作業の機械化は重要な課題です。 

新型造林機械のイメージ図

そんな中、福岡県で農業機械を製造している筑水キャニコムが、多目的造林機を国内で初めて開発し販売を開始しました。この新型造林機は、下草刈りや切り株の粉砕を行えると言います。35度の斜面を上り下りすることもでき、急峻な地形の日本でも運用が広がる可能性を秘めています。2022年にはドローン画像と連動させることで、遠隔操作できる無人造林機の販売も目指しているようです。また、植栽する苗を植えるための穴を開ける機能の開発も進められているといいます。 和歌山研究林で行われたかつての造林作業の様子

拡大造林期の森林が伐期を迎えている今、伐採された跡地での造林の需要も増加しています。コストがかかることや、森林蓄積が過去に類を見ないほど高まっていることを理由に、伐採ばかり行って再造林を放棄していると50年、100年後の森林資源が無くなってしまいます。また気候変動で記録的豪雨が増加する中、治山の点からも再造林の意味が高まっていくのではないでしょうか?そういった意味で、今回の新型造林機械の活躍に期待したいですね!


参考文献

林業を支える高性能林業機械 林野庁HP 閲覧日2021年7月30日

荒れ山「ジョージ」にお任せ、キャニコム 造林機拡充 日本経済新聞 7月15日