2022/10/29 20:57

私は樹⽊医という仕事をしています。樹⽊医は⽊のお医者さんですが、ただ最近この仕事、⽊よりも⼈相⼿なのではないかと感じています。

秋は落ち葉で苦情が絶えず、残念ながら街の⽊はお荷物になっています。そうかと思えば、⽊が伐採される計画には反対運動がおこり、かろうじて残っても枝や根は切られ、じわじわ衰退(あるいは早期に伐採)することになります(私の観察だけですが、将来⽊が⼤きくなるなど考えず、残しただけの現地保存が⼀番持たないような気がしています)。

 「じゃあ移植すればいいではないか」と⾔われるのですが、⽊は動かないことで成功している⽣き物なので、⼤⽊の移植は簡単ではありません。お⾦をかけても枯らすリスクは⼤いにありますし、活着しても根が腐り、倒伏する可能性も出てきます。伐採反対運動が起こっている⽊の形を⾒ると、「あれ?この⽊そもそも⽊材を取るために育てられてない?」という⽊もあります。林業でいう枝打ちがされていて、昔植えた⼈は「⼤きくなったら伐って⽊材に」と考えていたんではないでしょうか?「⽊を⽊材にして使い、また植える」という普通のことが忘れられているような気がしました。

⼀番残念に思うのは、⽊をめぐって対⽴した結果「もう⽊なんていらない」と嫌われて、⽊を植えない傾向がみられることです。対⽴のきっかけは、⼀⽅的な計画の進め⽅だったりすることが多く、それで⽊が嫌われるんじゃ、とんだとばっちりです。 

そして、どうも樹⽊を語るとき、「こうしちゃだめ」「こうしなきゃならない」など、 窮屈な雰囲気があります。⽊について、いろんな⼈がいろいろなことを⾔いますが、⽊⾃⾝に教えてもらうのが⼀番です。私は実際の⽊にふれ、もっと楽しく、笑っちゃうぐらいな空気にしなきゃと考えています。そうなれば、たくさんの⼈が集まって⾃由に樹⽊について語りあえるのではないかと思うのです。

木で楽しませる! 岩谷先生
(街の木ものづくりネットワーク設立記念収穫祭にて)

ユグチさんが作ろうとしているこの場所で、いろんな⽊の魅⼒を楽しむことができると思います。⽊を⽣で感じ、⽊材加⼯だけでなく、⽊の実を⾷べたり、⽊で染めたり、匂いを嗅いだり、⽊で楽しいことがたくさんできるでしょう。そうしていくと、⾝近な⽊も気になってきて、都会の樹⽊も違って⾒えてくると思います。地味な樹⽊ですが、⽊にもいろいろ個性があって、おもしろい⽣き⽅をしていますので、眺めて欲しいです。

たくさんの⼈が⽊に関⼼を持ち、街の⽊を楽しむ未来が楽しみです。

樹⽊医 岩⾕美苗

南町田鶴間公園での「苗木づくり大作戦」では、一緒に講師を勤めていただき、工事現場となった公園からたくさんの苗木を救出し、参加した市民の皆様に、またここに集まって植樹する日まで、育てていただきました。