2022/10/30 16:45
街の木は、みんなの思いをつなぐ未来の大切な資源

世田谷区立花見堂小学校の閉校が決まり、その場所に「さくら花見堂」を立ち上げるまで9年間、地域のお手伝いをしてきました。その中心にあるフリースペースは花見堂小学校のメモリアルの場であり、地域の「自由な居場所」としてここで育つ子どもたちの思い出をつくる場です。

この場所の中心に置かれた家具は、花見堂小学校と旧代田南児童館にあった樹木からつくられ、地域の人たちで仕上げました。地域の人たちや行政と徹底的に議論をして施設の構想や計画をつくり、工事が始まるというとき、この施設の真ん中にあるものは何だろうか。相談したのがユグチさんでした。

最も急いだのが、花見堂小学校のケヤキやソメイヨシノを確保しておくこと。廃棄寸前、その時はまだその木が活用できるかどうか、何も決まっていなかったのにどうにかすることを快く引き受けてくれました。

強剪定を繰り返される街のサクラのほとんどが、実のところ深刻な傷みが入った危険な木になっています。このソメイヨシノも、このタイミングを逃せば、傷み(腐れ)が進行し、木材としての活用は不可能でした。

2020年11月には、児童館の庭のタイワンフウを始めとした木々を木材にするために伐採し、樹皮を剥き、木こりの親方から怒鳴られながら、皆でトラックまで運びました。翌年の秋には、その時の樹皮と、児童館の樹木を使い草木染めをして新施設で使う椅子の座面をつくりました。

児童館の木を活かす!「伐採ワークショップ」で自ら木を担ぐ福永さん児童館の木を活かす!伐採ワークショップ

児童館の敷地内の木で染色した生地は椅子のクッション生地に

ユグチさんからこうしたアイデアを聞いたときには、面白そうだな、とは思いましたが、ここまですごいことが出来るとは想像していませんでした。ユグチさんの発想と熱意が、地域の人たちの強い想いにつながり、区の担当者の驚異的な頑張りと結びついて実現したプロジェクトでした。

新施設の家具作りワークショップ

その家具はひとつひとつに個性があり、木の色が多様で美しい。そして誰かが世話をすることが必要です。常に使う人メンテナンスをする必要があります。地域の核となる施設の真ん中にある家具としてこれほど相応しいものはないと感じています。

児童館や小学校にあった小さな木々の芽は苗木として地域の人に預けられ、またさくら花見堂に戻ってきます。街の木を介した「循環」は、地域の時間をこの施設とともに「家具」という形で引き継いでいくのです。

これらの木々は、こうして活かされなければ、ただの効率が悪い邪魔な物、やっかいな物として廃棄されます。「価値」って何だろう?「効率」って何だろう? 街の木の活動や、出来上がった椅子やテーブルを見ているとつくづく考えてしまうのです。

月並みなことしか言えませんが、心から思います。

街の木を活かすための拠点づくりに、みなさんもぜひ協力してください。

福永順彦 場所づくり研究所プレイス代表取締役/世田谷コミュニティ財団 代表理事
宮地成子 場所づくり研究所プレイス 


「さくら花見堂」ができるまでの物語