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日本における避妊とリプロダクティブヘルス

今日何を食べるか、今日どこへ行くか。日々の生活のなかで、自分のことを自身で決めているように、進学、就職、結婚、妊娠、出産、などのライフサイクルも誰かに強制されるものではなく自分で選択していくものです。同じように、子どもを産む、産まない、もつ、もたない、何人もつか、も自分で決められるものであり、そうでなくてはなりません。

これは、基本的人権である「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(Sexual Reproductive Health and Rights)」とされ、「性と生殖に関する健康と権利」と訳されています。「避妊」を通して、そうした健康と権利について考えてみます。

身体的な「性」によって偏る避妊の手段

日本では、約75%の人が避妊にコンドームを用いており、男性主体の避妊方法が選択されています。
コンドーム以外にも、避妊手術やピル、女性への注射、女性の体内に埋め込むインプラント、子宮内に装着する避妊具などの避妊の方法がありますが、日本ではまだ普及していない現状があります。

妊娠や出産は、1人で行われるものではなく、避妊も男性・女性それぞれが主体的に行うことが可能なはずです。しかし、日本では費用面や医療機関のアクセス面などを背景にコンドーム以外の避妊手段へのアクセスのハードルが高くなっていると考えられます。

世界における女性主体の避妊方法の普及

日本では、コンドームによる男性主体の避妊方法に偏っていますが、諸外国では異なっています。生理の軽減や生理周期のコントロールを第一の目的として服用されることもありますが、ヨーロッパ・北アメリカで最も多くの人に選ばれている避妊の方法はピルの服用です。さらに、女性の避妊手術や注射、インプラント、子宮内に装着する器具の使用の割合も日本より高く、女性主体の避妊の方法を選択できる環境が日本よりもあることが見受けられます。

後発開発途上国では避妊をしている人は、日本やヨーロッパ・北アメリカと比較すると少ないものの(2)、女性が主体となる避妊方法も、避妊手段の中で日本より高い割合で使用されています。

このように、世界と比べた場合でも、日本では女性が主体となる避妊を行なっている人の割合が少なくなっています。

(1)United Nations, 2019, “Contraceptive Use by Method 2019” https://digitallibrary.un.org/record/3849735
(2)再生産年齢(15〜49歳)で避妊をしている人の割合:日本 47%、ヨーロッパ・北アメリカ58%、後発展途上国31%(1)。
(3)後発開発途上国(Least Developed Country)は、国連総会の決議により認定された特に開発の遅れた国々を指す(4)。3年に一度、後発開発途上国リストの見直しが行われ、2019年時点では47カ国とされている(1)。
(4)外務省,2021,「後発開発途上国(LDC:Least Developed Country)」 https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/ohrlls/ldc_teigi.html


自分で選択ができる社会へ
「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」の拡充にむけて

「子どもを産む、産まない、もつ、もたない、何人もつか」を自分で決められる権利である「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」の概念は1994年に国連国際人口開発会議で提唱されました。

日本でも、国は、リプロダクティブ・ヘルス/ライツから女性の生涯を通じた健康を支援しています。
取り組みのひとつに「学校における性教育の充実」があります。しかし、学習指導要領には、学校教育内で性交を教えないような規定もあり(通称、「はどめ規定」)、性知識を学ぶ場が求められています。
実際に、日本財団が若者に行なった調査では、学校の性教育でもっと深めてほしかった内容のうち、最も多かったのは「恋愛や健康な性的関係に関する知識(40.9%)」、次に 「性的反応の仕組みや性行為に関する知識(37.6%)」が挙げられています。(6)(7)

日本では、リプロダクティブ・ヘルス/ライツについて十分な環境が整っている、とはまだまだいえません。GoodMorningでは、性別にかかわらず一人一人が自身を大切にし、社会に強制されることなくライフスタイルを決めていくことができる社会を目指しています。

(5)男女共同参画局,「8 生涯を通じた女性の健康支援」 https://www.gender.go.jp/about_danjo/basic_plans/1st/2-8r.html
(6) 日本財団,2021,「18歳意識調査 「第39回 – 性行為 –」詳細版」 https://www.nippon-foundation.or.jp/who/news/pr/2021/20210728-59807.html 
(7)対象者は全国の17歳~19歳男女、1,000名。実施期間は2021年6月17日~6月24日。インターネット調査によって実施

※本記事においてデータに関して言及がない場合は2019年の国際連合のレポート(1)を参照しています。


相談先のご紹介

妊娠や避妊に関しての悩みや不安を気軽に相談できる窓口があります。

●ピルコンにんしんカモ相談(LINEボット)
妊娠の不安を抱える全ての人に、医師監修の避妊や検査、支援先などの情報を即座に自動応答で答えるLINEのチャットボットです。
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LINE ID:@ninshin-kamo
運営:NPO法人ピルコン

●全国のにんしんSOS相談窓口
全国のにんしんSOS相談窓口のリンクがまとめられています。相談方法は各窓口によって異なります(LINE、メール、電話)
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運営:一般社団法人全国妊娠SOSネットワーク

●緊急避妊薬・低用量ピル処方施設検索
全国各地の緊急避妊薬と低用量ピルを処方してくれる施設を検索することができます。
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運営:一般社団法人 日本家族計画協会 市谷クリニック

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GoodMorning スタッフより

日本では「性」に触れることはまだまだタブーのように扱われています。正しい性知識が届かないばかりに、悩んでいる人、苦しんでいる人もいます。
そのためにも、正しい性知識や、薬に頼ることも選択肢の1つであることを、伝えていくことは、私たちが自分らしく生きるために重要なことだと考えています。
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