東洋大学社会学部社会福祉学科の岩田千亜紀です。私がはじめて「しあわせなみだ」さんの活動に参加したのは、2018年に行った障害児者への性暴力に関する実態調査報告書の作成の時でした。前年の2017年6月に、性犯罪に関する刑法が110年ぶりに改正されました。画期的な改正ではありましたが、障害児者への性暴力に関することについては記述されず、何も変わることはありませんでした。障害児者への性暴力の問題については、これまで実態が明らかにされていなかったため、問題として認められることはなかったのです。しかし、「しあわせなみだ」さんが行った実態調査の結果、アンケートに回答した発達障害者32名のうち23名が何らかの性暴力を経験していたことが分かりました。32名中23名という数は、決して大きな数ではありません。しかし、これまで日本では障害児者への性暴力に関する調査がほとんどされてこなかったことを考えると、この調査を行った意義はとても大きいと考えています。そして、この調査を皮切りに、「しあわせなみだ」さんでは、全国各地で知的障害者への性暴力被害を取り上げた映画「くちづけ」の上映と、有識者によるトークセッションを精力的に開催されています。この「くちづけ」の映画は、実際に行った実話を基に制作されたと聞いています。映画の主人公である「マコちゃん」は、性暴力の被害に遭い、長年、その被害の後遺症に苦しみます。「マコちゃん」のような例は、実は決して珍しい事例ではありません。海外の調査では、障害児者は健常者の約3倍も性暴力の被害に遭っていることが分かっています。そのため、先進諸国の多くでは、「被害者が障害児者であることに乗じた性犯罪」を創設して、被害者を守り、加害者を罰しているのです。しかし、日本では刑法に規定がないため、障害児者が性暴力に遭ったとしても、加害者は罰せられず、被害者やその家族は長年、その被害に苦しみ続けています。私の専門である「社会福祉」という意味は、英語では「Well-being」(より良く生きる)という意味になります。障害のある人も、無い人も、どんな人も「よりよく生きる権利」があります。「障害のある方の中に、性暴力被害を経験している方が少なくない」事実を共有し、「何とかしたい」と思ってくれる人が増えれば、障害のある人々を性暴力から守り、より良く生きることに繋がっていきます。2017年に改正された刑法は、来年の2020年に見直しをすることになっています。たくさんの皆様の声が届けられれば、法制度が改正され、性暴力のない社会を実現することができます。来年の見直しに向けて、ぜひ「しあわせなみだ」さんの活動にご賛同頂くたく、よろしくお願い致します。