プロジェクトを立ち上げたきっかけ
2017年7月、名古屋が育んだ、日本における推理・探偵小説、ミステリー小説の祖 江戸川乱歩の功績を顕彰しよう、という人々が乱歩旧居跡近くの居酒屋に集りました。乱歩は旧制第五中学(現、愛知県立瑞陵高校)一期生。卒業後早稲田大学へ進学。という訳で、瑞陵高校のOBと名古屋稲門クラブ(早稲田大学のOB会)の有志、そして名古屋の大学で教鞭を執る江戸川乱歩研究者の第一人者が参集。
怪人二十面相、明智小五郎、少年探偵団など多くの推理・探偵小説を書き、我が国におけるこのジャンルを確立した江戸川乱歩は、3歳から18歳までの幼少年期・青年期を名古屋で過ごしましたが、このことは全国的にもここ名古屋においてもほとんど知られていません。
乱歩の業績とともに名古屋という街が彼を育んだことを広く知ってもらおう、そのために旧居跡に記念碑を立てようということで、このプロジェクトがスタートしました。その後、建立予定地のある栄町商店街振興組合の方々も加わりプロジェクトを進めています。
乱歩の幻想を育てた名古屋
江戸川乱歩、本名平井太郎は、1894年(明治27年)三重県名張に生れます。3才の時、名古屋市へ移住。主な旧居跡は現在の名古屋市栄の丸栄、丸栄スカイルの辺りと確認されています(名古屋市南伊勢町二番戸)。乱歩にとって幼少期から旧制中学卒業までの15年間を過ごした名古屋は、彼自信が語るように彼の人格形成に非常に重要な時期であり、彼にとっての故郷と言えます。このような江戸川乱歩の誕生に、モダニズムが浸透しつつあった名古屋という街が大きくかかわっていることは彼の著作にしばしば現れます。当時盛んに開かれた博覧会での大仕掛けなパノラマ、「八幡の藪しらず」(迷路)、残酷な場面を再現した見世物小屋、芝居興行、無声映画などなど。早稲田大学入学後もしばしば当地を訪れ、もと遊郭だった大須のホテルの病気の遊女が押し込められた部屋を定宿としていたエピソードもあります。
乱歩と都市の関係では東京、大阪、生誕地名張の三地域が取り上げられますが、乱歩の人間形成、著作において名古屋の地の重要性は注目されなければなりません。
乱歩の幼少年期・青年期に一番長く住んだ場所近くに、彼の業績を顕彰するための記念碑を建立しよう、というのが「江戸川乱歩旧居跡記念碑建立プロジェクト」です。
江戸川乱歩とは
日本のテレビ番組や映画において、ミステリーやサスペンスを扱ったドラマは大きな比重を占めています。これらのドラマ作品が無かったら、現在のメディア業界は成り立たないのではないでしょうか。そのような日本のメディア文化に大きな影響を与えてきたのが江戸川乱歩の作品群です。
江戸川乱歩は、明智小五郎、怪人二十面相、小林少年や少年探偵団などの生みの親であり、我が国における探偵小説の祖とされる偉大な作家です。一方で、乱歩作品は探偵小説のみにとどまらず、広く日本近現代文学全般に大きな影響を与えました。深い人間洞察にもとづく小説は、探偵小説を一つの文学ジャンルとして確立させ、戦後、そして現代に至るまでこのジャンルの隆盛は廃れることがありません。
乱歩の創作活動は旧制愛知県立第五中学校(現愛知県立瑞陵高等学校)在学中から始まり、やがて『二銭銅貨』(1923年)で文壇にデビュー、1925年の『D坂の殺人事件』で早くも探偵明智小五郎を登場させています。エドガー・アラン・ポーやコナン・ドイルの小説から影響を受け、斬新な創作探偵小説を次々と発表し、黎明期の日本探偵小説界に衝撃をもたらしました。
その後、『陰獣』(1928年)、『孤島の鬼』(1930年)、『黒蜥蜴』(1934)、『怪人二十面相』(1936年)、「少年探偵団シリーズ」など話題作を発表し、この分野を常に牽引してきました。戦後は、主に探偵小説評論家として活躍。戦前の『新青年』に代わる探偵小説専門誌『宝石』の編集・経営に携わりました。また、日本探偵作家クラブを創設し、その財団法人化に尽力。さらに、私財を投じて「江戸川乱歩賞」(長編推理小説の公募賞)を創設し、多くの優れたミステリー作家を輩出することに貢献しました。
乱歩から影響を受けた作家や作品は数知れず、その射程は遠く現代にまで及んで、しかも文学の領域にとどまらない勢いです。たとえば、アニメ監督の宮崎駿は乱歩の『幽霊塔』に影響を受けて『カリオストロの城』を制作しましたし、もはや国民的マンガとなった青山剛昌『名探偵コナン』に登場するキャラクター達の名前が乱歩作品へのオマージュ(賛辞)となっていることはあまりに有名です。加えて近年、乱歩の著作権が切れたことにより、乱歩作品の新たな解釈による演劇や映画、ドラマも、若い作り手によって続々と制作されています。
こうした江戸川乱歩の現代にまで息づく功績を語り継ぐために、彼が幼少年期15年間を過ごした街・名古屋市に記念碑を建立しようというのが、「江戸川乱歩旧居跡記念碑建立プロジェクト」です。
*1『江戸川乱歩アルバム』(河出書房新社1994年4月)より転載。
*2『中央少年』 乱歩『貼雑年譜』(講談社1989年7月)より転載。
プロジェクトの紹介
設置主体
江戸川乱歩旧居跡記念碑建立実行委員会、名古屋稲門クラブ(早稲田大学OB会)、瑞陵会(五中・瑞陵高校OB会)、栄町商店街振興組合
完成予定
2020年10月31日に除幕式を予定しています。
設置場所
名古屋市栄交差点の西南角の歩道(栄スカイルビル三菱UFJ銀行前)。乱歩旧居跡に近い公共スペースです。
記念碑デザイン
井村和寛(いむら かずひろ)
プロフィール:ID Production代表。愛知県立芸術大学卒美術研究科デザイン領域。デザインコンセプト
名古屋市栄に現れたのは怪人二十面相。シルクハットを目深に被り、今度は何を企てるのか。そんな怪しげな雰囲気をまとう怪人二十面相をかたどった石碑は江戸川乱歩が幼少・青年期を過ごした街のシンボルとして、永く親しまれることを願い、デザインいたしました。設置場所について
記念併設催事
企画展「江戸川乱歩と名古屋」
<主催> 名古屋市市政資料館
<後援> 江戸川乱歩旧居跡記念碑建立実行委員会、名古屋稲門クラブ、五中・瑞陵高校同窓会、栄町商店街振興組合
<後援> 立教大学江戸川乱歩記念大衆文化研究センター、鳥羽みなとまち文学館「江戸川乱歩館」、瑞陵高校、早稲田大学(予定)
<期日> 令和2年11月1日(日)より15日(日)の2週間
<内容>
1.展示
旧江戸川乱歩邸(立教大学江戸川乱歩記念大衆文化センター)、鳥羽みなとまち文学館「江戸川乱歩館」、名古屋市市政資料館、早稲田大学及び瑞陵高校などの所蔵資料の展示。
2.講演会講師
平井憲太郎氏(江戸川乱歩の孫)
小松史生子(金城学院大学文学部教授、乱歩研究家)
*この「江戸川乱歩展」の開催は決定しております。
リターン・グッズ
・プロジェクトをご支援いただいた方のお名前(希望者のみ)は専用ウエブサイトに記載させていただきます。記念碑碑文QRコードよりご覧いただけます。(3,000円以上の方全員)
・プロジェクトをご支援いただいた方には、「江戸川乱歩旧居跡記念碑設立プロジェクト」の支援者として、特別会員証をお届けします。(3,000円以上の方全員)
・江戸川乱歩のクリアファイルを提供いたします。(5,000円以上の方)
・江戸川乱歩の記念切手シートを提供いたします。(7,000円以上の方)
・記念碑建立記念の特性焼酎「江戸川乱歩 黒蜥蜴」を提供いたします。(10,000円以上の方)
・記念碑を模した青銅製の置物(十分の一モデル)を提供いたします。(50,000円以上の方)
・乱歩愛用の万年筆と同一メーカーで型式が近似の万年筆を提供いたします。(60,000円以上のかた)
☆返礼品は、2020年11月より12月末までにお届けいたします。
資金の使い道
皆さまからご支援いただいた資金は次の項目で使わせていただきます。
・石像製作費(デザイン料、石代、本体彫刻費、文字彫刻費、陶板製作費 その他)
・設置費
・ウエブサイト制作費
〇記念碑のメンテナンスは栄町商店街振興組合が末永く行います。
最後に
私費を投じて江戸川乱歩賞を創設し、ミステリー小説ジャンルの隆盛の流れを作った江戸川乱歩。その乱歩を育んだ街・名古屋。ミステリー愛好家にとっても、名古屋市民にとっても「江戸川乱歩跡記念碑建立」は大きな意味のあるプロジェクトであると信じています。ぜひ皆様のお力をお貸しいただき、完成させたいと思います。ご支援、よろしくお願いいたします。
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