これまで多くの方々にご覧戴き嬉しいです。ですが、支援まではもう一歩届いていない感じがあり、おそらく支援金額が響いていないと思い、こけし工人の環境にご理解を戴ければ思い報告することにします。道の駅で売られている佐々木こけし工房の新型こけしの写真です(中央の赤いこけし) 値札が付いているので拡大して見えれば今回のクラウドファンディングと比較できると思います。でもこの価格が適正かどうかを判断されるのは、この先に書いた報告を読んでからにして戴きたいのです。私は社会人になってから、定年を迎えるまでの30年以上、ずっとほぼ毎日やってた業務があります。それは、製造にかかるお金、いわゆる製造原価の計算です。人件費や諸経費はもちろんのこと、材料は1銭単位から、設備は数十億単位まで扱いました。だから今ではいくらで造れるのか、大抵のものを推し量ることが出来ます。店頭で売られているこけしの値段はあまりにも安過ぎます。工芸品と言われるのに何故なのでしょうか。こけし、この歴史ある手工芸品にふさわしい価値を正しく知ってもらいたいです。ある有名な工人の次のような言葉から、こけしって1000円でもいいんじゃないのとは思わないで下さい。それは、「1日に造れるこけしの本数は50」と回答したことにあります。この言葉が一人歩きして問屋さんは一本500円で買おうとしているのではないかと考えられるのです。工人に詳しく話を聞きました。50は、朝6時から夜中24時までの18時間働いて可能な数でした。では、1日8時間働いて20ぐらいは出来るだろうというのも違っています。実はこの数が可能なのは、ロクロ作業は終わっていて、彩色と蝋を塗って頭と胴体を組み付けるだけの作業数だからです。こけし工人は、ロクロ作業の前に、木材の調達と乾燥、玉ドリ、荒削り、カンナ作り、轆䡎のメンテナンス、さらには、染料と筆の選択と調達の作業をしています。そして、注文を受けてからは梱包から発送までをこなしているのです。作業後の片付けも。一人で三役も四役も担当してると言えます。これに新作品の開発や、後継者の育成までやらなければ、こけし造りを続けることは叶いません。これらを正しく製造原価に反映するならば、こけしの適切な価格は3倍から4倍しても当たり前と言えるでしょう。こけし制作に敬意を込めて1本を1体と呼びたい、だからこそ1000円はせめて3000円であって欲しいのです。こけしを愛しているのであれば、将来も続けて欲しいと思うのであれば、それ相応の対価を払うべきであると考えるのが私の主張です。ほとんどの工人が副業しながらこけしを造るのが当たり前の環境になっている事をよくよく考えていただきたい。後継者の育成も公的な補助金有が前提となっている現実も知ってもらいたいです。(ご参考) 鳴子こけしの制作環境について・・・2003年の福島大学の論文より年間の販売額が1000万円を超えることができている大手の工房は温泉に直営店を持つ数件しかありません。最大でも2000万円のようです。おみやげとしては1000円~3000円程度が手頃であり、見込み生産の製品として在庫となる危険性が少なくなることもありこのサイズになっているようです。(著者注:これがすべてのこけしに適用されて現在も続けられているように思います)2000年は1991年と比較して客数が30%も減ってしまった。この危機感から地元では「こけしをただ物として買ってもらうだけでなく、その根底にある歴史や文化を理解したうえで買ってもらう」ことが必要、消費者が求めるストーリーを提供することが振興のために必要との結論になり、個別バラバラな対応では限界があることから産地内の結束を高める活動を始めようとなったのだそうです。