実施理由/背景
遠友夜学校とは?
札幌農学校(現在の北海道大学農学部)の卒業生である新渡戸稲造は、明治24年(1891年)に母校の教授として札幌に戻りました。
その2年後、萬里子夫人(メリー・P・エルキントン)に、アメリカの実家から届いた1,000ドルの遺産を用いて札幌市内に開設されたのが、稲造の夢であった遠友夜学校です。
学校に行きたくとも様々な事情で就学出来ない児童のために作られたもので、明治27年(1894年)の開校から昭和19年(1944年)に軍事教練を拒み廃校に追いやられるまでの50年にわたって、男女の別なく無料で開かれていました。
この学校は「学問より実行」を教育の根本におき、一般教科目は勿論ですが、特に教育に体育を重視し、他の人への思いやりを持った人間を育てるのが大きな特色でした。
新渡戸稲造の崇高な精神に共鳴し、社会事業に深い理解を持つ人々の寄付金を中心に運営され、教師も北大の学生が新渡戸博士の意志を引き継いで代々無給で奉仕してきました。温かな援助を惜しまなかった市民の人たちなどに支えられ、希望の灯をともし続けた遠友夜学校は、札幌のボランティア活動の原点でもありました。
プロジェクト内容説明
現代へ「志」が引き継がれ・・・
札幌遠友夜学校は北海道庁から1916(大正5)年に「私立学校」の認可を、続いて1923(大正12)年に「財団法人」の認可を受けて運営にあたります。この法人格は閉校後も継続していましたが、1962 (昭和37)年に、札幌市が勤労青少年ホームの建設地を探していた折、当時の理事会が次の3つを条件として土地を札幌市に無償譲渡し、同時にこの財団法人を解散しました。
(1)土地は新渡戸博士の考えの具体的表現だった遠友夜学校の跡であることを表示し、その目的に添った利用をして行くこと。
(2)敷地内にできるだけ空き地を設け、近所の遊び場にすること。出来るならその一隅に夜学校記念碑を建てること。
(3)新しく出来る勤労青少年ホームに一室を設け、札幌と新渡戸博士との関係を語る史料を展示しその精神を伝えること。
(『さっぽろ文庫18 遠友夜学校』28頁)
動きと並行して、1948(昭和23)年7月、札幌遠友夜学校で教えを受けた者によって創成川東の地に「札幌青空会」が設立されました。
児童と若者を対象とした各種ボランティア活動や後年の留学生との交流等の中に、新渡戸稲造と札幌遠友夜学校の当初の「志]が引き継がれ、今日に至っています。
皆様のご理解・ご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
「旧5,000円札の肖像画」だけじゃない
実は新渡戸は、札幌農学校卒業後、北海道開拓使御用掛、農商務省御用掛として開拓事業に携わり、札幌農学校予科教授も兼務しておりました。
北海道全体の開拓に寄与し、北海道の農業に多大な影響を残しているのです。
しかし、彼を語るコトバはそれだけでは足りません。
新渡戸は狭い日本に収まる人物ではなく、西洋の学問に興味を持つうち、いつしか欧米を飛び回って活躍するようになり、奥様はメアリー(アメリカ人)という当時珍しい国際結婚を果たす先人でもありました。
また新渡戸は、名著『武士道』を英文で書きあげました。日清戦争の勝利などで日本および日本人に対する関心が高まっていた時期であり、1900年(明治33年)に『武士道』の初版が刊行されると、やがてドイツ語、フランス語など各国語に訳されベストセラーとなり、セオドア・ルーズベルト大統領らに大きな感銘を与えたのです。新渡戸の『武士道』は読み継がれ、21世紀に入っても解題書が出版され続けています。
1920年(大正9年)の国際連盟設立に際して、教育者で『武士道』の著者として国際的に高名な新渡戸が事務次長の一人に選ばれました。
東洋と西洋の架け橋になりたい――そんな新渡戸の思いは、終生、変わることはありませんでした。
目指すところ
10,000人の新渡戸の子
札幌農学校精神を受け継ぐ人たちは゛札幌の子”といわれますが、今゛新渡戸の子”が、21世紀の遠友夜学校の開設を目指し、その記念館設立に立ち上がりました。
新渡戸を表すキーワード「国際性」「多様性」「寛容性」は、グローバル化の不透明で不安な現在、まさに全人類に求められている言葉ではないでしょうか。新渡戸博士のような真の教養人、行動する総合的知識人を育んでいく必要があります。
10,000人の新渡戸の子が、その気になれば不可能はありません。「主義主張にこだわらず、どんな人とも交流し、理解しあい、お互いの立場や人格を尊重する寛容な生き方」の新渡戸を見習い、他社を排除することなく、多くの皆さんと協働の精神によるみんなの共有の場を作りましょう。
寄付の使い道
記念館活動は公的な役割を担いますので公の機関との連携はもちろんですが、民間の機関として皆さんの要望・アイディアを聞きながら、それぞれの思いを生かした温かく簡素な運営と、多彩な活動を考えています。
現在、以下のような事業概要、運営を考えています。なお、本事業は、札幌市、札幌市教育委員会と相談しながら進めているものです。
★事業概要
(1)市民や道民など地域や国を結ぶ国内・国際交流、世界を学ぶ事業
(2)講演、出前講義の斡旋、読書会、記念フォーラム、大学等のアウトリーチ活動
(3)一般市民向け教養講座、音楽会、各種の教育プログラム(不登校児童・生徒の学びの場、進学塾、学習補習教室、障がい者の会、女性の会、相談会等)
(4)展示、図書室、閲覧室の充実
(5)その他
自治体からのメッセージ
白糠町は札幌遠友夜学校記念館建設募金を応援します
一般社団法人新渡戸稲造と札幌遠友夜学校を考える会も独自で募金活動を行ってはおりますが、寄附による税額控除を受けられるものではありません。
しかし、白糠町がふるさと納税のクラウドファンディングとして協力できれば、返礼品を送ることはいたしませんが、寄附による税額控除が受けられるものであり、支援者・法人・白糠町そして世間にとっても、四方良しの関係となるものであります。
以上のことから、北海道第二の開拓期である現代において、地方再生のアイディアや実践の拠点となる施設になることを期待し、その建設募金に協力するもので、いただいたご寄附は全額を会へ寄付することといたします。
皆様のご理解・ご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
事業スケジュール
2020年12月〜:クラウドファンディング実施
2023年:建設予定
詳細は決まっておりませんが、クラウドファンディングでの寄付金を集める活動など、地道に取り組んでいきたいと思います。