実施理由/背景
集団営巣復活のため、チョウゲンボウの出身地や年齢、親戚関係を知りたい
猛禽カフェなどでみかけるチョウゲンボウは輸入されたもので、亜種が異なります。日本のチョウゲンボウはくりくりっとした目が特徴で、頭も猛禽類の中ではちょっと大きめ。オスは青みがかった灰色をしていて、まるで坊主頭みたいです。メスは頭が茶色ですが、つぶらな目とあいまってとってもかわいいです。そんなチョウゲンボウですが、未解明な部分も多くあります。まず、通常は家族ごとに離れて住むはずなのに、日本ではなぜか30%以上が人工構造物などで集団営巣します。また集団での行動や行動範囲も解っていませんでした。そこで私たちは、足環や電波発信機を装着して調査を実施してきました。そして最近は羽根からDNAを抽出して分析を行い、少しずつ集団営巣するチョウゲンボウの特徴が見え始めました。
その一つは、実は集団のチョウゲンボウには血縁がある可能性があり、その個体どうしでつがいにもなることでした。そして中でも若い個体が集団営巣するようなのです。しかし、これらはまだ「仮説」にすぎません。その検証ができれば、日本の特徴であるチョウゲンボウの集団営巣がなぜ行われいるのかが解明でき、十三崖での集団営巣の復活のための大きな一歩になるのです。
プロジェクト内容説明
巣箱で子育て環境を整え、巣立った子どもたちを発信機、足環、DNAで追跡したい!
十三崖で近年集団営巣が見られない原因の一つに、長野県北部地方全体のチョウゲンボウの減少があげられます。理由は、安全に子育てできる巣と餌場のセットの環境が最近減少したからと考えられます。チョウゲンボウは猛禽類ですが、アオダイショウやハヤブサ、ネコなど天敵はたくさんいます。巣が安全な場所にあり餌が豊富に獲れる場所は少なく常に人気ゾーンのため、チョウゲンボウの夫婦は子育ての場所を探すのに苦労しています。私たちは、再びチョウゲンボウが十三崖に舞い戻ってほしいとの願いから、まず餌場の近くで天敵が来づらい場所に巣箱を設置します。そして、その巣箱から巣立った子どもたちがどこへ行くのかを、落下式の発信機、足環、DNA分析で追跡します。発信機からは、ヒナの具体的な現在地がわかります。また装着した足環が確認できれば出身地がわかります。そしてつがい相手のDNAがわかれば、中野市のチョウゲンボウの血縁の近さや出身地の範囲もわかります。そして巣箱以外の巣からヒナが落下した場合は、一時的に保護し、放鳥後同じ方法で追跡します。
十三崖でチョウゲンボウを増やすにはどうすればいい?
巣立ったヒナを追跡すると何がわかるのでしょうか。この追跡からチョウゲンボウが何歳のとき、どこで、どんな相手とつがいになるのかがわかります。最近、集団営巣地は若い個体が多いという可能性が見えてきましたが、これはオスの羽色による年齢の識別から判明しました。ここにメスも含めた今回の追跡結果が加われば、集団営巣地はいわば一戸建てに住めなかった若いチョウゲンボウの集合住宅ということがはっきりします。つまり、人口に対して一戸建て住宅が十分にあっても、若者は一戸建て住宅を維持できないかもしれませんし、逆に集合住宅に住めば仲間と協力して困難に立ち向かうことができます。今は営巣地が減ってしまって若い個体自体が少なくなってますが、個体数が回復してきたときに十三崖が若者たちの集合住宅になります。この若い個体が集団で十三崖に営巣できるちょうどよい営巣場所数と個体数の関係が、この追跡からわかるのです。また巣立ったヒナの移動距離と成長してつがいになった相手の出身地から、十三崖からどのくらいの範囲で巣箱を置けばよいのかがわかります。環境の変化により地域の自然の営巣地がほどんど消滅したため、十三崖でチョウゲンボウを増やし集団営巣を復活させるには、巣箱による地域の個体数の回復が必要なのです。
目指すところ
チョウゲンボウの研究から個体数を増やし、十三崖に舞い戻ってくれることを願って
今回のプロジェクトは、チョウゲンボウの個体数と年齢、そして巣場所数との関係を明らかにし、十三崖に集団営巣を復活させる試みです。しかし「なぜ集団営巣するのか」には、それ以外の理由も考えられます。チョウゲンボウの主食のハタネズミは、中野市では水田に多く生息しています。十三崖の周辺はかつて水田が広がっていましたが、現代ではほとんどが果樹園化してハタネズミを捕りづらくなっています。そして近年では、十三崖に定着した天敵のハヤブサに攻撃されるから営巣しないという理由もありそうです。さらにもっと別の要因が関わってきているかもしれません。それを解明するためには十三崖の保全を考えるだけではなく、チョウゲンボウの基礎的な生態を研究しなくてはなりません。それが、環境全体を保全する近道になると考えています。私たちはこのプロジェクトを通じてチョウゲンボウのことをもっと調べ、皆さんにもっと知ってほしいという活動をベースに、チョウゲンボウが十三崖に再び舞い戻ってくれることを願っています。
寄付の使い道
寄付の使い道は主に4つを予定しています。
1.チョウゲンボウの夫婦が安心して子育てできる環境を少しでも増やすため巣箱を設置し、集まったお金で発信機を購入して、ヒナたちに足環とともに装着して追跡します【設置や装着には別途許可を取ったうえで行います】
2.集まったお金で、巣から落ちて保護中のヒナから落下した羽根や巣箱内にあった羽根からDNA分析を行います。
3.公的機関などと協議し、巣から落下したヒナを保護して放鳥するためのエサ代や治療代をまかないます。
4.私たちの活動結果を講演会やイベント、ニュースレターなどで広報します。
自治体からのメッセージ
地域の特徴的な自然は、次世代に残したいふるさとの宝
十三崖の背後にそびえる高社山、そしてその西側に鎮座する斑尾山は、日本海からの冬の季節風をさえぎる役目を果たしています。そのため中野市は、北部から南部にかけて日本海型気候から太平洋型気候に移行する地域です。その二つの気候帯は、中野市の多様な地形とともに多様な動植物を育みます。中野市の北部にはその約1400mの山々と多雪地帯、南部には千曲川の氾濫原をもとに作られた水田地帯、その中間には夜間瀬川が形成した中野扇状地の果樹園が広がります。そしてその多様な環境が、十三崖のチョウゲンボウの集団営巣の形成にも関係している可能性があります。私たちは十三崖のチョウゲンボウを通して、中野市の自然の特徴を客観的にとらえようとしています。この特徴は世界の中で、日本の中野市にしかないストーリーです。地域の特徴的な自然は私たちのふるさとの宝であり、日本の宝です。この宝物を、次世代に残していきたいと考えています。
お礼品について
ここでしか手に入らないチョウゲンボウグッズはいかがでしょうか
皆様からいただいた応援とご寄付に感謝を込めて、ここでしか手に入らないチョウゲンボウ関連グッズを贈呈いたします。
1.ニュースレター『チョウゲンボウ新聞』の優先配信…1年分(年4回)を郵送またはメールにて配信いたします。
2.チョウゲンボウの土人形(親子セット)白バージョン絵の具付き…中野市の名産である「中野土人形」でかわいいチョウゲンボウの土人形を作ってみました。色を塗っていないので、お好みの色を塗ってお楽しみください。
3.チョウゲンボウの土鈴(色塗り済)…コロンとしたフォルムでチョウゲンボウのかわいらしさを表現しました。コロコロ音までかわいい♪
4.りんごジュース…中野市のりんごをぎゅっとしぼりました♪
5.ぼたんこしょう加工品…ピリッと辛い、中野市特産のぼたんこしょうを食べやすくしました♪
6.りんご…チョウゲンボウがネズミの被害から守っている中野市の果樹園で採れたりんごです。
7.チョウゲンボウの追跡調査同行体験…チョウゲンボウに装着した発信機からの情報をもとに、チョウゲンボウの生態研究で博士号を取得した研究員と一緒に追跡調査を行います。
お土産として1~3、6の返礼品付き。動きやすい服装でお越しください。なお、交通費は実費でお願いします。
事業スケジュール
2月~3月:応募開始、巣箱設置、ニュースレター「チョウゲンボウ新聞さとふる編」を季刊開始
4月~6月:発信機、足環装着、羽根拾得、個体追跡
7月~12月:DNA分析、イベントや学会で研究結果を広報
2024年1月~3月:講演会で研究結果を報告、研究結果から巣箱設置範囲や数を調整
チョウゲンボウの繁殖期は3月~6月のため、3月までに巣箱を設置します。
4月から抱卵期、5月から巣内育雛期となり、発信機および足環は6月の巣立ちの前に装着します。
追跡調査同行に関しましてもその時期となります。お申込みいただいた方々に順次ご案内をいたします。
巣箱を設置しても必ず営巣するとは限りません。その場合は、巣箱以外の巣のヒナを対象として調査します。
DNA分析は弘前大学との共同研究です。分析結果は追跡結果とともに、ニュースレターにてご連絡します。
学会発表や論文投稿などの研究結果の広報の際に、ご希望があればお名前を謝辞に記載させていただきます。
研究と結果の広報、そして保全へのフィードバックの循環は今後も続きます。今後ともご支援よろしくお願いいたします。