-Profile-モデルから国際美術家へ すべては一つの出会いから始まった
(2025.FranceArt 雑誌掲載)
私はもともと、アートの世界にいた人間ではありませんでした。モデルとして活動し、表現の現場にはいましたが、「絵を描く」ということとは、正直なところ無縁の人生でした。
転機は、本当にささいな出来事でした。国立新美術館が近所にあって、毎日のように散歩がてら展示会を見に行っていたんです。描くわけでもなく、ただ「観る側」として通っていました。
するとある日、展示会の会長さんに声をかけられたんです。
「いつも来ているよね。観る側じゃなくて、描く側に回ってみない?」
正直、驚きました。でもその一言がきっかけで、私は初めて筆を取りました。技法も理論も分からないまま、ただ好きなように描き始めたんです。
すると、不思議なことに手が止まらなくなりました。何時間描いても疲れないし、ごはんを忘れてしまうほど夢中になる。モデルの仕事を続けながらも、頭の中はずっと「次はどこを描き足そうか」ということでいっぱいでした。
(画家としてスタートしたころの写真。
展示会の会長 石原氏)
はじめて出した展示会から賞をいただいたときは、自分でも信じられませんでした。それをきっかけに、私は一気に絵の世界に引き込まれていきました。展示会に出品し続け、さまざまな画家さんと出会い、年齢も背景も違う人たちと仲間になっていきました。
才能ある人が、環境によって消えていく現実
(展示会受賞時の写真)
(展示会受賞時の絵)

その一方で、ずっと胸に引っかかっていたことがあります。
「絵を続けられなくなっていく人たち」を、あまりにも多く見てきたことです。
年配の方であれば、病気や体調、視力や手の震えといった理由。
同世代の40代、50代の方だと、展示会の出展料や搬入費が生活を圧迫してしまい、子どもにお金をかけたいからと絵をやめていく人たち。
フリーで活動していたけれど、生活が成り立たず、まったく別の仕事に就く人もいました。
美大を卒業したばかりの若い人が、他人の才能に打ちのめされて、「自分には無理だ」と描くこと自体をやめてしまう姿も、何度も見てきました。
賞を取るほどの力があるのに、それを活かさないまま終わってしまう。全然アートとは関係のない仕事に進んでしまう。その現実が、私は本当に悔しかったんです。仲間として一緒に描き続けられると思っていたのに、環境のせいで離れていく。
そのたびに、「後押しできる場所があったら、また一緒に描けるんじゃないか」と考えるようになりました。
海外のアーティスト支援の事例を知ったことも、大きなヒントになりました。
たとえばアメリカでは、若いアーティストが生活面まで含めて支えられ、寮のような環境で制作に集中できる仕組みが用意されていたりします。表現を続けることが、社会の中できちんと守られている。
「どうして日本には、こういう仕組みがほとんどないんだろう」と強く思うようになりました。
だったら、自分ができる形で、その空白を埋めたい。そう考えるようになったんです。
描く人を支える側へ──教えることで見えた可能性
そんなとき、西東京市にあるひばりが丘のカルチャーセンターから「教室をやってみませんか」と声をかけていただきました。初めて「教える側」に立つことになったのです。

(カルチャーセンターでの講師の様子)


教室には、かつて絵をやめてしまった人たちも講師として手伝いに来てくれました。かれらにとっては、教える仕事が、ささやかながら絵を続けていけるための資金にもなっていきました。
教室という場所が、表現を取り戻す場にもなっていく。その手応えを、少しずつ感じるようになりました。
そこで私の中に生まれたのが、「循環をつくりたい」という思いです。
講師と生徒、生徒がやがて講師になって、また次へとつながっていく時間の流れをつくりたい。
多くのスクールは、生徒が卒業したら終わりです。でも私は、それはありえないと思っています。高いお金を払って学んで終わり、ではなく、その先こそが本格的な活動のスタートです。その後を支えられないスクールを変えたい。
そんな想いが、Pharaoh Art School構想の核になっていきました。
すでに始まっている、小さな実践
現在も、私はカルチャーセンターやワークショップで、小規模ながら教室を続けています。印象に残っている生徒さんはたくさんいます。
シングルマザーで、お子さんが登校拒否になり、最初は絵の相談ではなく人生相談のような形で来られた方もいました。二人のお子さんを連れていらっしゃったので、入学金もレッスン費用もなしで、隣で落描きのように絵を描かせてあげていました。親子にとって教室は、一息つけるささやかな居場所になっていたのではと思います。
プロとして羽ばたいていった方もいます。とある50代の女性は、全くの初心者として体験授業から始め、やがて国立新美術館の展示会で賞を取り、独立して今はフリーアーティストとして活動するようになりました。
私の教室では、技術だけを教えているわけではありません。なぜ自信が持てないのか、なぜ展示会に出る踏ん切りがつかないのか。金銭的な悩み、精神的な不安、技術的な壁。その一つひとつを、絵を描きながら、何時間でも一緒にほぐしていきます。
「私の絵、あなたより上手くないですよ。でも出してますよ」
そんな言葉で背中を押すこともあります。私は、誰かを「乗せてあげる」役割を担っているのだと思っています。
手取り足取りで、自信につなげる──独自の「描き順メソッド」
(Pharaohのロゴ)

Pharaoh(ファラオ)は、エジプト文明の王様のことです。エジプト美術は、安定した社会を背景に「永遠性」を追求する思想のもとで生み出されてきました。実際にエジプトを旅して、その時間のスケールに強く心を打たれた経験が、名前の由来となっています。
Pharaoh Art Schoolには、流行や一時的な評価に左右されず、何千年も続いた文明のように、長い時間をかけて人と表現が積み重なっていく場所であってほしいという願いを込めています。
Pharaoh Art Schoolが目指しているのは、感覚任せに放置するのではなく、手取り足取りで確実に形にしていく場所です。
絵の先生というのは多くの場合、「好きなように描いてみて」と突き放してしまう傾向があります。描きたいものがあっても、ゼロからでは途方に暮れてしまいますよね。
そこで私は、どんな方にも絵を描ける喜びを知ってもらえるように、「描き順」のメソッドを構築しました。
(メソッドが分かるような写真か図)


たとえば「龍を描きたい」と言われたら、いきなり描かせることはしません。龍の描き順を1から8まで分解し、薄いペーパーに写してガイドを作ってあげます。「この通りに描いてみて」と具体的に示すことで、まずは私とまったく同じ絵が描けるようにする。その体験が、「自分が描いているみたいじゃない!」という驚きと、自信につながっていきます。
そして私の授業は、描いて終わりではありません。SNSでの発信の仕方や見せ方までサポートします。
私自身が長年モデルとして自己表現の仕事をしてきたからこそ、どう見せ、どう伝えるかの重要さはよく知っていますし、生徒のみなさん一人一人のアーティスト活動に寄り添いながら、一緒に考えていくことができます。
(出展が目指せる展示会の例がわかる写真かロゴ)

さらには、展示会への出展も積極的に進めます。
年に一度の国立新美術館への出展をはじめとして、それぞれの方の段階に合った展示会を選び、受賞や発表の経験を積めるようにサポートしています。
表現の技法だけでなく、表現が「人に届く」喜びまでをトータルで経験できるのが、このスクールの強みです。
どんな方に来ていただきたいか
・趣味で絵を描いていたけれど、就職・結婚・子育てなどをきっかけに、いつの間にか描かなくなってしまった方
・絵を通して、もう一度自分の人生を取り戻したい、生活と表現を両立させたいと考えている方
・仕事や家庭に追われる中で、「本当は自分は何がしたかったんだろう」と立ち止まっている30〜40代の方
・日々の忙しさや迷いの中で、少しでも「自分に戻れる」時間を求めている方
・美大や専門学校で学んだものの、仕事にしていく自信を失ってしまい、今は絵の世界から離れてしまった方
絵が上手くなるだけでなく、生活を潤しながら、絵を「続けられる」環境をつくること。そのための場所が、Pharaoh Art Schoolです。
なぜクラウドファンディングなのか
今(2026年1月)の私は、あえて大きな展示や外向きの活動を入れず、スクール立ち上げの準備に集中しています。「いよいよ本格的にスクールを動かそう」という佳境の段階です。
荻窪教室の内装もすでに用意しています。部屋を3部屋ぶち抜いて、制作に集中できる空間をつくり、デスクや椅子も自分たちで整えました。今はまさに設営の真っ最中です。
(設営途中の教室の写真)

ただ、宣伝や広告といった外向きの発信は、まだほとんど行っていません。
中身はすでにできあがっていて、あとはこの場所の存在や想いを、きちんと届けていくだけ。そのための「発信」が、今いちばん必要な段階です。
今回、私はクラウドファンディングという形を選びました。なぜなら、これは私一人で完成させるスクールではないからです。
月額7,000円(4回程度)という会費は、決して「安さ」を売りにしたものではありません。本来であれば、2〜3万円はいただかなければ成り立たない内容です。それでもこの価格にしているのは、経済的な理由で表現をあきらめてほしくないからです。
だからこそ、絵を学ぶ生徒さんだけでなく、表現を続けたい人を支える「支援者・協力者」のような方の存在も切実に求めています。
関わり方は一つではありません。まずは生徒としてこの場に入り、絵を描く時間を取り戻していく。その先で、「教える側に回りたい」と思ったときには、講師という次のステップに進む道も用意したいと考えています。
また、運営に携わったり、ただ「この場所が続いてほしい」と支えていただく形でも構いません。
みなさん一人ひとりの支援が、このスクールを「続けられる場所」にしてくれます。Pharaoh Art Schoolは、完成された学校ではなく、仲間と一緒につくり、育てていくコミュニティです。
描くことを、あきらめないために。
そのための場所を、ここから一緒につくっていけたら嬉しいです。

プロジェクトの概要
このクラウドファンディングでは、以下の取り組みのための資金を募っています:
・「Pharaoh Art School」の立ち上げ費用
・「Pharaoh Art School」の運営継続費用
期間:2026年1月25日〜2月28日
リターン:購入した日から2週間後以降のスケジュール
会社情報
Pharaoh Art School
〒167-0051
※東京都杉並区荻窪5-17-9 2F
特別インタビュー動画も併せてご覧ください。
YouTubeチャンネル『音 Japansese Restraurant』に掲載されています。





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