■ なぜ今、資源循環の仕組みが必要なのか
このプロジェクトで向き合っているのは、昆虫そのものではありません。資源が循環せず、人の選択肢が狭まってしまう社会の構造です。
高校時代、カンボジアをフィールドとした研究に参加したことをきっかけに、私は「選択肢」が生活の質を高めるのではないか?と強く意識するようになりました。
日本では、学生は小・中・高、専門学校や大学など、様々な教育を受ける環境が存在し、私も奨学金制度を活用して大学・大学院に通えています。また、仕事についても、売り手市場と呼ばれる時代。街を歩けば求人広告が目に入り、仕事を選ばなければ何かしらの職が得られ、支援が必要であれば生活保護を受けられる環境が整っています。
学ぶ場所、働く場所、支援を受ける制度など、決して完全ではないものの、世界的に見れば多くの選択肢に恵まれていると感じています。
一方で、インフラが十分に整っていない地域では、本人の努力や意志とは別に、教育を受ける選択肢、安定した仕事を選ぶ選択肢、衛生的な生活環境を得る選択肢が限られてしまうことがあります。
私が実現したいのは、人が生まれた場所や環境に左右されず、自分の未来を自分で選べる社会です。
【資源循環の仕組みが届いていないカンボジアのゴミ捨て場】
そのために必要なのは、一時的な支援だけではなく、地域の中で資源が循環し、仕事が生まれ、教育や生活の選択肢につながる「インフラ基盤」をつくることだと考えています。
【私が思い描くビジョン】
アメリカミズアブ事業は、このグランドビジョンへ踏み込むための第1歩です。
未利用資源を、飼料、肥料、燃料、そして新しい産業へ変える。
まずは日本でミズアブの大規模生産技術を確立し、輸入に依存している飼料・肥料・エネルギーの課題に挑みます。
そして数年後、この技術をインフラが十分に整っていない地域を中心に地域ごとの資源循環インフラとして展開し、世界のさまざまな場所で、新しい仕事や収入の選択肢を生み出していきたいと考えています。
『ミズアブは目的ではなく、社会に踏み込むための最初の技術です。』
食と農を支え、未利用資源を価値に変え、人々の選択肢を増やす。これが、私のこの挑戦にかける想いです。
■ これは「虫を食べる」話ではありません。
はじめに、「昆虫ビジネス」と聞くと、多くの方はまず「昆虫食」を思い浮かべるかもしれません。けれど、このプロジェクトが取り組むのは、人が昆虫を食べるための事業ではありません。
私が目指すのは、"アメリカミズアブ(Hermetia illucens)"を「昆虫食」ではなく、「飼料・肥料・燃料」を生み出す新しい「資源」として活用することです。
養殖魚や家畜のエサ、土を支える肥料原料、そして燃料資源。現状、輸入に頼りがちな分野を、国内で生み出す選択肢を増やしたい。その入口にあるのが、アメリカミズアブという昆虫だと私は考えています。
【生産施設と飼料・肥料・燃料】
※掲載画像は、事業構想をわかりやすく伝えるためのイメージです。
■ ミズアブ事業で実現したいこと
アメリカミズアブの幼虫は、"腐食性"という特異性を持ち、短期間で成長し、タンパク質や脂肪を豊富に含みます。私たちは、この特性を活かして、次の3つの資源化を目指しています。
①飼料:水産養殖・畜産・観賞魚・爬虫類等の飼料として、高機能性飼料へ
② 燃料(バイオ燃料):燃料や工業原料としての活用可能性へ
③ フラス:糞・脱皮殻・残渣を含む肥料原料、窒素・リン酸・カリを豊富に含んだ土壌改良材へ
一つの生産工程から、『飼料・肥料・燃料』という複数の価値が生まれる。
小さな昆虫を起点に、食・農業・資源循環を支える新しい国内産業をつくることが、このプロジェクトの大きな目標です。
【飼料・肥料・燃料へつながる資源循環】
■ 日本の食と農は、海外に支えられています
ご存知の方も多いかと思いますが、日本の水産養殖、畜産、農業の現場では、飼料・肥料・燃料の多くを海外からの輸入に頼っています。しかし近年、国際情勢の変化、燃料価格の上昇、物流の混乱などにより、現場の負担は大きくなっています。
ミズアブを研究している中で、学会やセミナーなどに参加している関係者と会話すると「魚を育てるエサが高くなる。畑に必要な肥料が高くなる。施設を動かすエネルギー費が高くなる。」そして、「代替策はないのか?」という実際の現場の声が聞こえてきます。
ただし、これは生産者だけの問題ではありません。私たちの食卓、地域産業、そして日本の食料安全保障にもつながる問題であることを自覚し、対策をしなければならないと考えています。
だからこそ、国内で生産できる新しい資源が必要だと考えています。
■ なぜミズアブなのか
ミズアブは、世界で、産業利用が進みつつある昆虫です。幼虫は成長が早く、タンパク質・脂肪・キチンなどを豊富に含むため、飼料原料や肥料原料としての活用が期待されています。
一方で、日本では昆虫に対する心理的な抵抗感があり、産業としては認知もされず、まだ十分に広がっていません。だからこそ、東大でのエビデンスに基づいた清潔な管理、品質の確認、用途の説明を丁寧に積み重ねることが大切だと考えています。
私はミズアブを単なる「気持ち悪い虫」ではなく、これからの日本を支える一つの「資源」として見ています。
■ 大規模生産への壁
ミズアブを事業として成立させるうえで、特に大きな課題になるのが、採卵から孵化直後の幼虫飼育までの工程です。
この初期段階は、特に『人手・温度管理・設備運用』の負担が大きく、安定生産と採算性を左右します。

【手作業による幼虫と蛹の分離作業】実際の飼育現場では、飼料中に残存しているミズアブとフラス(糞や脱皮殻、消化した後の飼料など)を分離する工程があります。篩で分けることが基本ですが、飼料の含水率などによっては手作業で分離することもあり、労力が求められてしまいます。
【恒温室での採卵スペース
(採卵工程には飛翔空間・光が必須)】
※実際、世界の昆虫事業スタートアップ企業の市場調査をコンサル会社さんに委託し、実施していただきました。あわせて公開情報を確認すると、資金調達額で上位だった企業でも、採卵・孵化直後の幼虫飼育など初期工程の人件費や光熱費が重く、再建手続き・事業縮小・買収などに至った事例があります。現在も主要プレイヤーは入れ替わっており、昆虫事業は「作れるか」だけでなく「採算に合う形で作り続けられるか」が問われています。
したがって、この初期工程のボトルネックを解消し、研究から実運用へ、再現性のある仕組みにできるかどうかが、日本での産業化に向けた重要なポイントです。
【海外ベンチマーク調査から見えた、昆虫産業化のボトルネック】
■ 研究経験を社会実装へ
私は東京大学での研究経験を通じて、ミズアブの生産技術に取り組んできました。特に、採卵効率の向上や初期飼育工程の省力化に着目し、実用化に向けた技術開発を進めています。
また、2025年3月公募の第68回リバネス研究費では、「第68回 食のアップデート賞」に採択されました。採択テーマは、「腐食性昆虫アメリカミズアブ幼虫を安定供給するための仮死化技術の開発」です。研究段階の技術として外部からも評価いただいたことを、社会実装に向けた次の一歩につなげていきます。
研究室の中だけで終わらせるのではなく、実際の生産現場で使える技術にする。小規模な試験から、安定した量産体制へつなげる。
そのために、今回のクラウドファンディングを立ち上げます。
※改めて、本プロジェクトは東京大学の公式プロジェクトではなく、同大学による承認・後援・出資等を示すものではありません。記載している研究経験は、発信者個人の経歴および活動に基づくものです。
■ ご支援で実現したいこと
皆様からのご支援は、アメリカミズアブの大規模生産に向けた基盤技術の実証に活用します。
主な用途は、次の通りです。
◼ 採卵・孵化・初期飼育に関する技術開発と運用試験
◼ 小規模試験施設の整備、温度管理・飼育設備の導入
◼ 飼料・肥料・燃料用途としての品質分析、製品登録、法規制の確認
◼ 将来的な量産に向けたデータ取得と流通規格の整理
これにより、安定して幼虫を生産するための基盤を整え、飼料・肥料・燃料用途として活用できる体制づくりを進めます。
【国内小規模試験施設のイメージ】
■ リターンについて
今回のリターンは、まず気軽に応援できるワンコインプランから、研究開発品サンプル、活動報告、オンライン報告会、現地での体験・学びの機会まで、支援額に合わせて選べる形にしています。
ここでお届けしたいのは、単なる「モノ」だけではありません。ミズアブを活用した資源循環が、飼料・バイオ燃料・肥料という新しい産業の入口になっていく過程を、支援者の皆さまと一緒に共有していくことです。
【リターン内容まとめ】
製品系のリターンでは、ミズアブパウダー、飼料サンプル、フラス肥料など、ミズアブ由来資源の可能性を感じていただけるものを中心にご用意しています。なお、犬猫向けペットフードとしての販売・提供は行いません。
体験型のリターンでは、農業の現場に触れる収穫体験、昆虫観察会、ミズアブと資源循環をテーマにしたミニ講座などを予定しています。昆虫観察会・グループ開催プランでは、「昆虫観察会」と「ミズアブと資源循環のミニ講座」を同日セットで1回開催する内容として実施します。
活動報告・オンライン報告会では、研究開発の進捗、試験施設づくり、生産体制の準備、社会実装に向けた取り組みを、支援者の皆さまへ継続的にお届けします。
ミズアブの生産開始は2027年6月頃を見込んでいるため、ミズアブ関連の製品リターンは、2027年度8月以降に準備でき次第、順次発送予定です。体験・講座・報告会などの日程は、プロジェクト進行状況に合わせて個別にご案内します。
また、お名前・企業名等の掲載を伴うリターンについては、プロジェクト終了後も必要に応じて追記・修正ができるよう、プロジェクトページ本文ではなく活動報告内で掲載します。掲載期間は、当該活動報告の公開期間に準じます。
■ 今後のスケジュール
◼ 2026年度採卵・初期飼育技術の実証、ビニールハウス・プレハブ内での小規模試験施設の設備設計を進めます。
◼ 2027年度小規模試験施設での連続生産試験を行い、品質分析、製品登録、リターン製品を中心とした製品化を進めます。
◼ 2028年度以降国内の養殖・畜産向け飼料、農業向け肥料、燃料用途への事業展開を目指します。
■ 最後に
アメリカミズアブは、まだ多くの方に知られていない昆虫です。しかし、その小さな体には、食料、農業、エネルギー、資源循環を支える大きな可能性があります。
どうにかして、将来の日本における「食と農」を、海外資源に依存し続けるだけでなく、国内で支える選択肢を増やしたい。
大学で得た研究知見を、実際の産業へつなげたい。その第一歩を、皆様と一緒に踏み出したいと考えています。
小さな昆虫から、日本の未来を支える資源をつくる挑戦。どうか応援をよろしくお願いいたします。




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