生物多様性の長期モニタリングの現場では、多くの分類群で「次の世代をどう育てるか」「この技術を誰に引き継ぐか」が、ずっと課題であり続けてきました。
けれど現場で交わされるのは、具体的な打ち手のない不安の言葉ばかりです。
——絶滅危惧種を調べる人たち自身の絶滅が、危惧されている。
冗談のようですが、笑えない現実です。
そして、私も長いあいだ、その不安を口にする一人でした。
はじめまして。
株式会社アイズフォー・ネイチャー代表の横井謙一と申します。
農学博士として、国際環境NGOで16年、生物多様性の保全と自然環境調査の現場に携わってきました。人材不足も後継者問題も、事あるごとに口にしてきました。
けれど、あるとき自分に問いました。「口にしてきただけで、本気で手を打ってきたのか」と。はっきり「はい」とは言えませんでした。
だから、勤めていた組織を辞めて、この事業を始めました。

このプロジェクトで実現したいこと
日本中の「生きものがわかる人」を可視化し、その専門性を必要とする人とつなぐウェブプラットフォーム「Biodiversity Faces」を、社会のインフラとして完成させます。
- 専門家一人ひとりの専門性(専門分類群・活動地域・専門分野・スキル)を、探せる形で可視化する
- 専門家どうしのつながりと推薦で、肩書ではなく関係によって信頼を担保する
- 専門知を必要とする企業・行政・研究者・市民から、専門家へ直接つながる道をつくる
土台となる仕組みは、すでに自己資金で開発を終えました。このプロジェクトでは、そこに「専門知が実際に社会へ流れ出す仕組み」を載せるための開発資金を募ります。
私について——16年、現場で見てきたこと
生きものを見分け、地域の自然を読み解く力。
標本のわずかな違和感に気づく眼。
「この谷の植生は10年前と違う」と気づく感覚。
そうした専門性の多くは、文章にならない「暗黙知」として、一人の専門家の中にあります。図鑑にも論文にも書かれていません。
私は現場で、その知が受け継がれないまま失われていくのを、何度も見てきました。ある分類群を見分けられる人が、日本にもう数えるほどしかいない。その方が引退すれば、あるいは亡くなれば、その知はまるごと消えてしまう——そういう場面が、決して珍しくないのです。
担い手は高齢化し、次の世代へ橋渡しする仕組みがないまま、時間だけが過ぎていきます。

なぜ、いま放っておけないのか
いま、生物多様性を調べる技術は目覚ましく進歩しています。AIによる画像判定、環境DNA分析、衛星やドローンによる観測。これらは「何が・いつ・どこにいるか」を、広く・安く捉える力を持っています。
けれど、データがどれだけ増えても、「それが何を意味するのか」は、データだけでは分かりません。
なぜこの種がここに現れたのか。それは異変なのか、自然な変動なのか。この結果は現場の実感と合っているのか——それを読み解くのは、長年の経験を積んだ専門家の暗黙知の領域です。
データを取ることが簡単になるほど、それを深く理解し、説明できる人の希少性が際立ちます。 ところが、その担い手こそが、いま最も速く失われようとしている。だから、待ったなしなのです。

だから、この「地図」をつくります
私がつくっているのは、日本中の専門家を可視化する「地図」です。
一人の専門性が「点」になり、専門家どうしのつながりが「線」になり、やがて日本全体の自然史の「面」——社会が頼れるキャパシティ——が見えてくる。個人に閉じていた知を、みんなで使える共有の基盤に変えていきます。
そして私が最も光を当てたいのは、これまで最前線ではなかなか光が当たらなかった専門家です。
第一線を退いた研究者。育児や介護でキャリアを中断した専門家。深い専門性と数十年の経験を持ちながら、それを活かす場を得られずにいる人たちがいます。既存のやり方(論文検索、学会名簿、SNS)で見つけられる専門家は、いま現役で所属を持つ人が主です。
研究の合間も、退職後も、育児や介護の間も。自分のペースで、専門性を活かし続けられる。 そんな新しい関わり方を、この基盤の上につくりたいのです。
土台はできていますが、その先が届きません
土台はできました。けれど、専門知が実際に社会へ流れ出すところまでは、まだ届いていません。つくらなければならないものが、はっきりと残っています。
- 専門知をアセットとして届ける仕組み
- ——専門家のもつアセット(例えば写真など)が、正当な対価とともに必要な人へ届く道をつくります。
- 安心して依頼し、受託できる契約と決済の基盤
- ——専門家が「タダ働き」や不当な条件にさらされないための、公正な取引の仕組み。
- 知を引き継ぐための教材・記録
- ——暗黙知を、次の世代が学べる形へ。
資金の使い道(予定)
- ウェブプラットフォームの機能開発費(アセット流通/契約・決済の基盤)
- サーバー・インフラ費(初年度運用)
- リターンの実施費用(オンライン講座など)
最後に
生物多様性を守ろう、という言葉はよく聞かれるようになりました。けれど、それを実際に「見て、見分け、意味を読み解く」人がいなければ、守りようがありません。
その担い手が、静かに、しかし確実に減っています。
私はもう、不安を口にするだけの側にはいたくありません。この基盤を、なんとしても社会に根づかせたい。それは、私一人では到底できないことです。
どうか、一緒にこの基盤をつくってください。あなたの支援が、失われかけている知を、次の世代へつなぐ確かな一歩になります。
株式会社アイズフォー・ネイチャー
代表取締役 横井 謙一




