旗揚げから30年。まだ、書きたい物語があります。
1996年、長崎で旗揚げした劇団「謎のモダン館」は、今年30周年を迎えます。
この30年間で上演してきた作品は大小90本以上。そのほとんどを、代表である私、白濱隆次が書いてきました。ただ、私はそれを「自分一人で書いてきた90本」だとは思っていません。
いつもそばには劇団員たちがいました。

稽古場で彼らと過ごす時間。
次の物語の構想を話したり、夏の体育館でひたすら腹筋や発声練習に明け暮れた日々。
役について交わした言葉や何気ない動きや表情。
そうしたものが次の作品への手がかりとなり、「この人だから演じられる役」や「この人たちだから成立する場面」が生まれてきました。つまり、私が書いてきた90本を超える物語は、劇団員たちと共に生み出してきた30年間の歴史でもあります。
そして、30周年公演で上演するのは新作です。
『TRAP in TRAP in TRAP―あの頃、美しかった未来たちへ―』
40年ぶりに再会した、中学時代の文芸部の仲間たち。昔話をするうちに、彼らは中学生の頃、自分たちで一本の映画を作ろうとしていたことを思い出します。
その映画のタイトルは『TRAP』
しかし、思い出していくほどに、それぞれの記憶には少しずつ食い違いが生まれていく。
忘れていたこと。忘れたことにしていたこと。
そして、自分たちで作ったはずの物語。現在と過去、記憶と物語が少しずつ重なっていく作品です。
30年間、全力で演劇を続けてきた今だからこそ書けた作品だと思っています。
しかし、30年間ずっと舞台を作れたわけではありません。
30周年と書くと、30年間休まず活動してきたように見えるかもしれません。でも、その中には一年、ほとんど活動することができなかった年があります。
コロナ禍です。
公演はもちろん、稽古もできない。そもそも人が集まることそのものが難しかった年でした。
旗揚げから30年。けれど、実際に舞台をつくり続けることができた時間を数えるなら、29年ということになりましょうか。止まってしまった一年も含めて、もちろん謎のモダン館の30年です。だからこそ今回、その29年分の積み重ねを、新しい一本に込めたいと思っています。
なぜ、いまクラウドファンディングなのか

演劇にかかわらず、何かをつくり、続けていくためにはお金がかかります。一本の舞台をつくるためにも、会場、照明、音響、舞台制作、宣伝、映像収録など、さまざまな費用が必要です。
今回の30周年公演も、クラウドファンディングだけで作るわけではありません。劇団として負担する費用もありますし、もちろんチケット収入も公演制作費に充てます。
それでも、30周年という一度しかない公演だからこそ、いつもなら予算の都合で諦めてしまう部分を、今回はもう少しだけ諦めずにやってみたいと思いました。
「ここまでしかできない」ではなく、できる限り自分たちが30年思い描いてきた形に近づけたい。
そのために、今回クラウドファンディングに挑戦します。
目標金額は29万円です。
30周年なのに、なぜ30万円ではないのか。理由は、先ほど書いた「空白の一年」にあります。
旗揚げから30年。舞台をつくることができた29年。
その29年にちなんで、今回の目標金額を29万円に設定しました。
29万円ですべての公演費を賄えるわけではありません。公演全体から見れば、その一部です。ですが、その29万円があることで諦めずにできることが確実に増えます。公演そのもののクオリティをもう一段上げること。舞台を映像としてきちんと残すこと。劇場へ来られない方にも作品を届けること。そして、30周年という時間を記録として残すこと。
皆さまからいただいたご支援は、そのための公演制作費として大切に使わせていただきます。
これは、これまで積み重ねてきたものを使って、新しい一本を作るための挑戦です。節目だから昔を振り返るだけではなく、30年やってきた今、何を作れるのか。
そこを見てもらいたいと思っています。
僕らには、まだ、書きたい物語があります。
30年間、多くの物語を書いてきました。それでも、まだ書きたいと思っています。次はもっと面白いものを書きたい。今までとは違うものを作りたい。昨日より、少しでもよい舞台にしたい。
その気持ちは、旗揚げした頃と一つも変わっていません。
『TRAP in TRAP in TRAP』は、その90本の先にある新しい一本です。
劇場で観てくださる方。配信で観てくださる方。遠くから応援してくださる方。かつて謎のモダン館に関わってくださった方々。そして、今回初めて私たちを知ってくださった方。それぞれの形で、この30周年公演に力を貸していただけたら嬉しく思います。
謎のモダン館30周年公演『TRAP in TRAP in TRAP―あの頃、美しかった未来たちへ―』
今回もこの一本に全力を注ぎます。
どうぞ、応援よろしくお願いいたします。





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