フィリピンのスラム街に暮らす子どもたち、物乞いやドラッグしか知らなかった彼らの夢、それは――

日本での演奏会

 

♪子どもたちの夢 “日本での演奏会” を実現させたい

2017年の4月20日から25日までの6日間、NPO法人セブンスピリットが行っている音楽教室に通うフィリピン人の子どもたち35名を日本に連れていき、日本の中高生との交流会や、オーケストラコンサートを開催するというプロジェクトを計画しています。その際に必要になる渡航費や日本での滞在費といった資金を集めるためのクラウドファンディングです。

 

 

 

♪セブンスピリットのとりくみ

セブンスピリットはフィリピンのセブ島を拠点に2012年より活動を開始し、今年で5年目となるNPO法人です。音楽やスポーツを通して貧困層の子どもたちのライフスキルを育む教育活動を行っています。

 

リゾート地として知られるフィリピンのセブ島。毎日多くの観光客がこの地を訪れ、美しい海と、そこに流れるのどかな時間を満喫しています。しかし一歩街に出るとそこには、物売り、物乞い、そしてストリートチルドレンの姿が。五つ星ホテルに泊まり、大型ショッピングモールで買い物を楽しむ人々がいる一方で、今もなお多くの人々が貧困にあえぎ厳しい生活を余儀なくされているのです。

 


  

ここはピアトレスと呼ばれるセブのスラム街。約1000世帯、6000人以上が暮らすこの地域にはかつて、慈善団体による物的支援や政府による金銭的支援など、彼らを貧困から救おうとする様々な試みが存在しました。しかし、現在はそれら全てがストップしています。なぜこのような結末になってしまったのでしょうか。

 

その背景にあったのは、蔓延するドラッグ、そしてスラム住民ならではのマインドセットでした。

 

例えば、学校に行きたくても授業に必要な文房具をそろえるお金がない彼らに、ある団体はノートやペンを配給しました。自分たちの支援が貧しい彼らの生活を豊かにする。その団体の活動に携わった誰もがそうなることを望んだはずです。

 

しかし、この地域に暮らす人々がそれらの物資を使うことはありませんでした。彼らは、それを売ってお金にかえたのです。

 

では、そのお金はどのように使われるのでしょうか。

 

その答えこそ、ピアトレスに限らず世界中のスラム街で蔓延しているドラッグです。

 

彼らを貧困から救うという目的でなされたはずの試みが、スラム街にはびこる新たな問題のきっかけとなっていた。そうなれば当然支援は打ち切られます。政府からの金銭的支援がなくなってしまったのも、これと全く同じ理由です。スラム街に暮らす子どもたちの教育費として支給したお金がドラッグに使われていたとわかれば、政府もそこにお金をつぎこむのをやめてしまいます。

 

こうして、彼らが貧困から抜け出すことはどんどん難しくなっていくのです。

 

もちろん彼らはドラッグが法律で禁止されているということも、人体に悪影響を及ぼし、最悪の場合死に至るといことも知っています。そうと知りながらなぜドラッグに手をそめるのか。そこには彼らなりの“合理的な判断”がありました。

 

この地域に蔓延するドラッグのひとつにラグビー(シンナーの一種)と呼ばれるものがあります。これは靴底などを接着する際に使われるもので、わずか10ペソ(日本円で約20円)で手に入ると言われています。10ペソあれば、少量ですがお米やパンを買うこともできます。それでも彼らはドラッグを使うことを選びます。

 

なぜなら、それを使用すれば3日間空腹を忘れることができるから。

 

たった数個のパンでは、長くても半日しか空腹をしのぐことができません。しかし、ドラッグを使えば3日間は空腹を忘れることができるのです。

 

今日は食べるものを手に入れることができたけれど、明日また同じ生活ができるかどうか、わからない。

 

その日1日を生きることに必死の彼らにとって、ドラッグは単なる快楽目的の悪ふざけではないのです。

 

彼らを貧困から救おうと試みるとき、本当に必要なのは、彼らのマインドセットを変え、心を豊かにすること。だからこそセブンスピリットはライフスキル教育にフォーカスし、音楽やスポーツを通して子どもたちの心を育む活動をしています。

 

♪子どもたちの変化

これは日々の練習風景です。セブンスピリットでは毎日子どもたちに歌やオーケストラのレッスンを行っています。

 

 

 

 

 

今でこそ自主的に、そして貪欲に学ぶ彼らですが、セブンスピリットが音楽教室を開始した当初は、1列に並んで座ることも、人の話を聞くこともできませんでした。

約5つの地域から子どもたちが集まってくるスタジオでは、地域ごとのグループができあがり、そのグループ同士のケンカが絶えず、毎日誰かが泣いている、そんな日々を過ごしていました。

それでも根気よく向き合い続け、少しずつ状況が落ち着き出した頃、子どもたちにひとつ曲を渡しました。それはリコーダーと鍵盤ハーモニカだけで演奏できるとても簡単な曲でしたが、それを完成させたとき子どもたちは――

 

楽しい!もっとやりたい!もっと色んな曲に挑戦したい!

 

それは、ドラッグや暴力、犯罪がはびこる薄暗いスラムで、夢や希望を持つことすらできなかった彼らが、自分たちの手でひとつのことを成し遂げ、「僕にもできる」「私にもできる」という確かな自信を手に入れた瞬間でした。

 

♪インジュンの成長

セブンスピリットに通い始めて今年で3年目になる小学6年生のインジュンも、音楽を通して大きく成長した子どものひとりです。

 

 

数年前まで、彼は道端で物乞いをしていました。人々の同情をかってより多くのお金を稼ごうと、両親を亡くしたという嘘をついたり、夜遅くまで外を出歩いていたために警察に補導されたこともありました。また、彼の仲間の中には盗みをはたらく子どももいたそうです。両親ですら、彼との関わり方がわからず途方に暮れていたそんなとき、インジュンはセブンスピリットに出会いました。

 

スタジオに通い始めた当初の彼は、落ち着きがなく、好き勝手に走り回り、座って人の話を聞くことすらできませんでした。毎日のように他の生徒とケンカをし、自分よりも小さな女の子をいじめては泣かせてしまう、そんな男の子でした。

 

それでも、誰かと争うために拳を握るより、自分の頭で考えることを学んでほしい、そう願うスタッフの献身的なサポートによって、彼は物乞いをすることや夜遅くに街を出歩くことをやめ、徐々に人の話を聞き、その内容を理解するようになりました。

 

 

もちろん今でも他の生徒とケンカをすることはありますが、その頻度は以前とは比べものにならないくらい減りました。ケンカばかりで人の話を聞くことすらままならなかったインジュンは、セブンスピリットで音楽を学び始めたことで、合奏中に雑談をしている生徒に対して人の話を聞くよう注意したり、困っている人に対して手を差しのべることのできる心優しい男の子へと変わったのです。

 

このようにして、次々に新しいことや難しいことにチャレンジし、その過程で、音楽のスキルだけでなく、自信や思いやりを育んできた子どもたち。今では大学生やプロのオーケストラが演奏するような曲にも取り組めるようになり、人としても大きく成長しました。

 

♪そんな彼らの次なる挑戦

それは日本での演奏会。これまで、スタディーツアーなどを通してたくさんの日本人の方々がスタジオに足を運んでくださいました。その誰もが、困難な状況にありながらも心から音楽を楽しんでいる子どもたちの姿に心を動かし、セブンスピリットの活動を応援してくださっています。

たくさんの支えのおかげで、今日までひたむきに音楽と、そして自分自身と向き合ってこられた子どもたち。だからこそ、今度は自分たちが日本に出向いて恩返しをしたい。彼らの中には今、そんな思いが芽生えています。また、日本人と関わることで、日本という国やその文化についても興味を持ち始めた彼らは、いつしか「実際に日本を訪れる」ことを夢見るようになりました。

 

彼らの思いや夢を形にするため、日本でのスケジュールは以下のように予定しています。

 

1日目 日本到着

    日本でのボランティアスタッフと対面・オリエンテーション

 

2日目 郁文館グローバル高等学校で交流会・演奏会

    明治学院中学校で交流会・演奏会

 

3日目 取手第一高等学校で交流会・演奏会

 

4日目 都内のホールで活動報告会・演奏会

 

5日目 東京観光

 

6日目 帰国

 

音楽を通して「自分にもできる」という自信を手に入れた彼らに、次は、「夢は叶う」ということを学んでほしい。夢見ることを知らなかった彼らが抱いた大きな夢、“日本での演奏会”を実現させるため、応援よろしくお願い致します。

 

 

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