私たちは、2017年に初演し好評を得たA.クリストフ作『悪童日記」を2019年に各地で再演しました。コソボ共和国で行われるフェスへと日本の劇団として初めて招待されました。先方から魅力的な条件をご提示頂き、私たちも資金を集めておりますが、まだ目標には達しておりません。皆様のお力をお貸しください。

プロジェクト本文

コソボ公演への思い

サファリP第5回公演では、2017年に初演し好評を得たアゴタ・クリストフ作『悪童日記』を2019年2月~3月に大阪・八尾、横浜、京都にて再演しました。この一連のツアーは各界から身に余る評価を頂いたのですが、国内での評判にとどまらず、この作品が縁でコソボ共和国プリシュティナで開催されるアートフェスティバル第7回FEMARTフェスティバルから参加招待を受けることとなりました。

私たちは、今まであまりなじみのなかったコソボという国について調べ、大使館の方のお話なども伺い、先方の担当者とも何度もやり取りを重ねてきました。そしてアゴタ・クリストフ自身が体験し、この作品で描かれている分断のモチーフとなったハンガリー紛争のすぐそばの国、そしてほんの10数年前に国が分断されて独立して生まれた新しい国で、この演目を上演できるというチャンスに運命的なつながりを感じました。

先方の熱い思いと、日本の様々な方の支援を受けて、サファリ・Pはフェスティバルの参加を決めました。まだ設立されて間もない若い国の勢いが、サファリ・Pのそれと似通っていました。これを逃せば、今後コソボの方と関わることはないでしょう。私たちはこの機会を逃すわけにはいきません。



しかし演劇を上演するには、たくさんのお金が必要です。フェスティバル側は、非常に魅力的な条件を提示してくださっていますが、コソボとの物価の違い(コソボ共和国の平均月収は3万円程度)もあり、必要な経費をまかなうことは出来ません。すべて自腹でまかなうことになってもいい、という覚悟ではいるものの、コソボ共和国という国との付き合いを、1回きりのことで終わらせたくありません。今回のご縁が無ければ、日本人の劇団がコソボという国で公演を行うということは当分無いかもしれません。今回つながった細い糸を、これから先も持続可能な交流へと広げていきたいと考えています。

サファリ・Pというカンパニーが、外国でのフェスティバルへの参加や、国内外での外国人アーティストとの共同創作等を行いながら、息長く活動を続けていくためには、必要経費を何らかの形でまかなう必要があると考えました。私たちは現在各種助成金の申請など自己資金の確保に奔走しています。その結果左右されること無く、今回のプロジェクトを成功させたいと考え、この様な形で広く支援を募ることとなりました。もちろん助成金や自己資金の獲得状況によって、目標金額の設定を変更することを予定しています。

私たちは、このフェスティバルに参加することで、今後観客の皆さんに多くを還元することができると確信しています。ぜひ、ご支援をよろしくお願いします。

コソボという国で公演することの意味と今後について


私たちは歴史の教科書の中でしか、国の分断などといったことは知りません。しかし、物語でそれを体験することはできます。実際多くの人が、小説や映画・舞台を通して、戦争を体験しているはずです。『悪童日記』もまさに戦争を体験できる小説と言えます。ハンガリーからスイスに亡命し、親族と離れ離れになり、異国の地で、幼子を抱えながら孤独に働いた作家、アゴタ・クリストフの血と汗と涙の臭いが、ハンガリー人である彼女の書くフランス語の文体の拙さの間から立ち昇ってきます。ただし忘れてはならないのは、この小説は「戦争はいけない」という教科書的な当たり前のメッセージをそのまま伝えるような作品ではないということです。私たちがこの作品から受け取った手触りを間違いなく観客に届けるために、物語ではなく、文体を舞台化したのです。私たちはこの作品を、未だ民族間の対立を抱えながらも、国の再建に向かって急成長する若い国、コソボ共和国で、ぜひ、上演したいと思っています。そうすることで、私たちは『悪童日記』に横たわる人間についてのある種のリアルを、物語を読むのとは別の形で、身をもって感じることができるでしょう。帰国後は、この体験を、報告会という形で日本の皆さんにシェアしたいと思っています。 

サファリ・Pの「悪童日記」

私たちの「悪童日記」はこれまでに多くの方の評価を頂戴いたしました。中でも個性的な演出が注目を浴びるポイントとなりました。その演出コンセプトとは・・・

●物語ではなく、文体を舞台化する。
●言葉の意味ではなく、俳優の体と音で立ち上げる
●作家、アゴタ・クリストフの姿を現前させる


また朝日新聞2019年2月7日掲載の記事に、疎開してきた双子の少年が感情を殺し、2人が一体化した「ぼくら」が生き延びようとする姿を描いた長編を、平台5つだけの舞台で俳優とダンサー5人で演じる。と表されたとおり、ほぼ何も無い空間で人間の台詞とダンスだけで小説を表現している。

翻訳者の堀茂樹氏からは「今はもう地上にいない、原著者アゴタ・クリストフに観せたかった」とコメントをいただきました。故アゴタ・クリストフは生前、自分の作品が自由に解釈されることを望んだと言います。物語を忠実に立ち上げるのではなく、サファリ・Pならではの解釈で舞台独特の表現として立ち上がった『悪童日記』を、我々もできれば作者に観ていただきたかったと思っています。

その他、様々な方から熱い感想をいただいております。

「人間の体を媒介に、情景が空間に像を結ぶ」。2017年の『悪童日記』の舞台を観て、『Artissue』第9号に書いた言葉だが、サファリ・Pの舞台には、テクストを元にした身体の動きと関係性が生み出す〈演劇〉の新たな可能性がみえる。
 サファリ・Pの『悪童日記』は翻訳劇ではない。もちろんダンスでもない。文体までも表現しようとする彼らの試みは、ハンガリー語を母語とする作者がフランス語で書いた原作を、日本語で上演するといった〈言語〉の境界を、自分たちの身体だけを頼りに乗り越えようとするものだ。まるで、『悪童日記』の双子たちのように。
 戦時下のハンガリーを描いたこの作品が,コソボ共和国で開催されるFEMARTフェスティバルで上演されるという。テクストを身体で伝えようとする彼らの試みが、どのような形で彼の地の観客に届くかがとても楽しみだ。ひょっとすると双子のうちひとりは肉親の死すら利用して命がけで国境を越え、もうひとりはそれを手助けしながらもその地に残る選択は、〈紛争〉を体験したことのある観客にこそ、ストレートに伝わるのかもしれない。
 演劇は舞台に立つ俳優と観客との間に立ち現われてくるものである。フェスティバルのテーマは「自由と羞恥心」。女性アーティストとアクティヴィストの祭典で、サファリ・Pのもつ身体強度は観客とどのような化学反応を示すのだろうか。気になるところである。
演劇研究者・柴田隆子


原作の『悪童日記』をすでに読んだ者には頭を殴られるような衝撃を与え、まだ読んでない者にはそもそもの物語を希求させる他に例を見ない舞台だ。「虚無」の原作を「動」の舞台に置き換えながら作者の心髄に迫ろうという試みは見事に成功している。舞台上には確かにアゴタ・クリストフの文体が肉体化されていた。海外の演劇好き、本好きをうならせることは間違いない。
早川書房 編集者 山口晶氏

※今後もメッセージお寄せいただきましたら随時追加してまいります。

サファリ・P
2015年7月、利賀演劇人コンクール2015にて「財産没収」(作:テネシー・ウィリアムズ)を上演。
既成戯曲・小説から作品を立ち上げる。物語に底流する作者の生い立ち、時代背景などを重視してテキストを紐解き、独自の身体性と発話により舞台化する。

これまでの活動

私たちサファリ・Pは立ち上がってまだ3年強の、グループとしてはまだまだ若いカンパニーです。しかし立ち上げ当初から、視野は常に海外へと広がっていました。なぜなら私たちが、言語の意味に頼りすぎず、身体と発語を強く意識した舞台作品の創作を得意とするからです。私たちのカンパニーには、俳優の他に、舞踊家やブレイクダンサーが所属しています。背景の違う様々なパフォーマーが、すでにある物語と、人間の体という二つの共通点を手掛かりに創作する場所、それがサファリ・Pです。

これまでに舞台化した作品:テネシー・ウィリアムズ作『財産没収』、アゴタ・クリストフ作『悪童日記』。2019年夏には、江戸川乱歩作『怪人二十面相』の舞台化を予定しています。


資金の使い道

出演者、スタッフ(計10名)の渡航費 2,500,000円
舞台監督・音響・制作・記録スタッフなどへの謝礼 1,200,000円
文芸著作権料・大道具等運搬費 500,000円
現地経費概算 500,000円
機材費・保険・雑費など 500,000円

現在自己資金で約2,700,000円の調達の目処がついております。
そのため不足分として2,500,000円程度をこのたびご支援いただきたいと考えております。


リターンについて
皆さんからお寄せいただきましたご支援は、なるべく本来の用途に使いたいとの考えから
リターンについては、気持ちばかりのものをと考えさせていただきました。
なにとぞご理解いただきまして、ご支援のほどお願い申し上げます。

実施スケジュール

2019年5月より稽古開始
2019年6月9日から13日 コソボ共和国にて演劇ワークショップの開催、『悪童日記』の上演
2019年6月14~15日 帰国
6月から9月の某日 報告会開催


最後に

サファリ・Pで演出を務めております山口茜です。今年はコソボ共和国と日本の外交樹立10周年ということですが、私は今回のフェスティバルに参加が決まるまで、コソボ共和国という国自体をほとんど知りませんでした。しかし、初めてフェスティバルプロデューサーのZANAさんと出会った時、私は、国という隔たりを簡単に超えてしまう既視感を覚えました。彼女は3人のお子さんの子育てとフェスティバルの企画、運営、そして芸術家としての活動に奔走されていました。それはつまり、まるで自分のようだったのです。底抜けに明るい笑顔と母国語ではない英語を自由自在に操る彼女と一緒の時間を過ごしながら、この人が戦争を体験していて、私が体験していないということは、一体どういう違いなのか、と考えていました。同じ人間同士である私たちは、それぞれの生まれ育った国に個人の運命を左右され、決定づけられるわけですが、彼女たちは今、それを、芸術の力を借りて、自分たちで乗り越えようとしています。その姿を目の当たりにして、日本からこのフェスティバルにサファリ・Pが参加することは、当たり前のことのように思いました。戦後コソボを盛り上げることは海外の実情を知ることでもあると同時に、私たち自身を振り返ることでもあると思ったのです。だからこそ、私はコソボで演劇を上演するというこの体験を、日本に住む皆さんにシェアすべきだと思いました。今後、この体験を経て、私たちが感じた何かを、創作という形を通してみなさんに還元できると、確信しています。



<All-in方式の場合>
本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。

本ページに記載しております画像、動画は掲載許諾について記述してあるものを除いて、全て私たちのオリジナルもしくは今回の募集の用途のために提供を受けた映像です。

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