●はじめに・ご挨拶

 みなさま、はじめまして!studio KANRO(スタジオ カンロ)代表の内野康平です。私は鹿児島県・種子島に生まれ、現在は広島・福岡・種子島に事務所を置き一級建築士として住宅や店舗・宿泊施設の設計などをしています。

 今回『カモメ』プロジェクトを実行するにあたり、広島で医療・介護・福祉に携わる方や大工・造作家具の職人さんとプロジェクトチームを結成し、種子島の方々と連携しながら活動をしています。


<種子島について>

私の故郷である種子島は、鹿児島県の南に位置し、鹿児島から飛行機で約30分・高速船で1時間半ほどで着く意外と近くてそこそこ大きな島です。大型ロケットの発射場や鉄砲伝来の地として有名ですが、その他にもサーフィンや釣りの名所としても知られています。

「島」の魅力は、なんといっても海を越えて島に足を踏み入れた瞬間に感じる、流れている時間の違い。自然が作り出す絶景や普段気にも留めなかったような日常の美しさは、私たちの心を満たしてくれます。




<私と母と饅頭屋>

私の母・明美もまた、種子島で生まれ育ちました。幼い頃から釣りやクワガタ獲りなど自然の中で遊びを覚えて行った母は、私にも同じように自然の恵を教えてくれました。

そんな母は現在63歳。まだまだ島と本島を行き来しながら生活する元気いっぱいの母ですが、近頃少しずつ「歳をとったね〜」と話す場面が増えてきました。そんな母の楽しみは、島に帰って仲良しの同級生と会うこと。昔を思い出しながら楽しく会話することが、忙しい日々の中の至福のひとときだそうです。

ある日、母を通じて仲良しメンバーの一人から島中心部の空き家活用のお話を頂きました。それが今回『境界なき宿屋 カモメ』へと生まれ変わる、かつて島で愛された饅頭屋でした。

現在島外で暮らすその方は、10年後には島に戻ってこられるそうなので、空き家は10年間限定で借りる約束をしました。現在ひとり暮らしをしている、母を含めた仲良し3人が「10年後あそこにみんなで暮らしたいねぇ」と楽しそうに話しているのを耳にし、私は「10年後の彼女達も喜んで住みたくなるような建築にしたい」と思うようになりました。



● 「境界なき宿屋 カモメ」とは

“生まれ故郷である種子島に恩返しをしたい” という想いから2年前に開業した『泊まれる植物館あずまや』。ここは、家主が元々植物博士だった空き家をリノベーションしました。今回のカモメと同様、10年後は家主に返還するという仕組みを取り入れています。「見えるもの全てが種子島産」をテーマに、島の伝統技術や自然素材をふんだんに使ったこだわりの空間に仕上げました。

「境界なき宿屋 カモメ」は、あずまやに続く2棟目の宿屋として現在工事が進められています。医療・介護・福祉に関わるプロジェクトメンバーとの出会いや、10年後返還した後の彼女達の暮らしを考え、2棟目独自のこだわりとしては “バリアフリーとデザインの両立” を掲げました。

介護が必要だけど旅行がしたい人たちは、施設がネックとなり旅行先が選べないことがあります。そんな方々にも利用してもらえるように、若者も高齢者も障がいがある人もない人も、皆んなが分け隔てなく安心して泊まれる宿屋にしたいと思っています。


既に始まっている工事の様子


カモメ建物全景




●私とバリアフリーとの出会い

2017年、私は27歳の時に studio KANRO を設立しました。一級建築士事務所と看板を掲げたものの、最初は仕事をとってくるのに精一杯で、毎日朝から晩まで一生懸命駆け回っていました。そんな中、私のもとへ初めてお客様が来られます。そのお客様には、医療的ケアと重複障がいをもった3歳の娘さんがいらっしゃいました。それが、今回のプロジェクトメンバーでもある山田いつかさんです。



私のもとに来た山田さんの想いは本当に “切実” でした。

バリアフリーを実現した空間


機能性の高いオシャレな建築を意識した山田邸
左上:注入食用のボトル・チューブがかけられる専用のアイアンバーを設置
右上:バギーのまま乗り入れられる広い玄関
左下:着替え用の台を作り付けで設置した広いお風呂場
右下:バギーのまま入ることのできる広いトイレ



建築はただの手段であって、創るのは “そこに住む人のこれから先ずっと続くであろう暮らし” であることに改めて気づかされ、 以降、「数年後を見越した設計」と「切実な想いに応える建築」が私のテーマとなり、今では手掛けるほとんどの建築にバリアフリーを取り入れるよう心掛けています。




●カモメプロジェクト発足 〜あの人の笑顔のために〜

プロジェクトメンバーである理学療法士の河村由実子さんは、“リハビリに励む人の輪を繋げたい” という想いから、自ら取材・編集を行うWebメディア『リハノワ.com』を運営されています。そのメディアの取材をきっかけに、私は山田さんが  “一度は娘を連れて旅行にいってみたい” と希望されていることを知りました。

河村さんは多くの当事者の方を取材をする中で、「山田さんのように、“家族や自身の体調に不安はあるけれど旅行にいきたい” と願う人は非常に多い」と話します。しかしこの時、一番大きな課題となるのは “宿泊先の設備の安心度” であると教えてくれました。

山田さんの切実な願いや現場の課題感を聞き、私は「種子島の饅頭屋だった空き家を、体が不自由な人もそうでない人も皆んなが安心して泊まれるバリアフリーの宿屋にしたらどうなるだろう?」と、ふと思いつきました。


そして、構想を膨らませれば膨らませるほど、私の大切な方々の笑顔が見えてきたのです。



2020年3月。

——高齢者も障がい者も誰もが泊まれる宿屋『境界なき宿屋 カモメ』を作りたい!

カモメプロジェクトが発足しました。


カモメプロジェクト  広島メンバー

カモメプロジェクト 種子島メンバー
左官屋さん(写真)や陶芸家、鍛冶屋、デザイナーさんなど種子島のモノづくりのプロたちが多く関わっています


カモメプロジェクトでは、島内・島外メンバーが一丸となってプロジェクトの成功に向け尽力しています!



● 10年後は高齢者シェアハウスへ

——皆さんは “引退後の第二の人生を、どのように送りたいですか?”

“私は、昔から仲良しだった友だちに囲まれながら、島で笑ってのんびり暮らしたい”


これは、かつて島で愛された饅頭屋の娘であり、今回の依頼主である家主さんが言われた言葉です。


『境界なき宿屋 カモメ』は、現在島外で暮らす家主さんが島に帰って来られるまでの “10年間限定の宿屋” です。

10年後には家主さんに住宅を返還し、そこからは高齢者シェアハウス『やすらぎの郷』に生まれ変わります。



高齢者の孤立を防ぎ、社会と交流のある人間らしい生活を高齢期においても維持していくためには、地域社会における支え合いが必要不可欠であるといわれています。

“その人らしい生き方” を支援するため、真のニーズを探究しそれを実現する一つの手段として、カモメでは『高齢者のシェアハウス』という新しいカタチにチャレンジします。



● 島の素材や伝統文芸+アーティストとコラボした建築・デザイン

カモメでは、種子島産の今まで使われていなかった自然素材を新たな利用法で建築に応用し、今後の島の自然素材の可能性を探ります。また、鹿児島の伝統工芸とコラボし福祉に特化した食器や家具を制作し、「福祉を一からデザインする」ことにも挑戦します。

薩摩焼作家の城氏とのコラボしたオリジナル食器や照明を


種子島在住のデザイナー小野寺いずみさん(案図舎)のによるロゴデザイン




● カモメおばん食堂

カモメでは、島の “おばん” が作る、島の食材をふんだんに使った朝食を食べることができます。島の方々に協力いただき、島を存分に感じていただける温かい食堂を目指します。

また、宿泊いただいた方がみんなで同じ食材を楽しめるように、可能な範囲で軟菜食や刻み食など、食形態の変更にも対応します。


ほぼすべての料理が島の食材でつくられる朝食



●カモメ★ポップアップストア

カモメでは、もともと饅頭屋だった店舗部分をポップアップストア(期間限定店舗)として再生し、島外の飲食店などに期間限定で貸し出します。

お店の方は、種子島を楽しんでもらいながらお店を出すことができます。


●運営について

『境界なき宿屋 カモメ』はstudio KANROで運営していきます。
宿泊予約管理やイベント・ワークショップの管理は studio KANROで行います。宿泊時の管理・清掃等は、地域の住民の方に委託します。

宿泊等で得た収益は、
・住民の方々への管理清掃料
・建物の修繕積立金
・イベント・ワークショップ
となり、持続可能な経営を目指します。


●カモメプロジェクト   メンバー紹介

□ 山田いつか

医療的ケアを必要とする7歳の肢体不自由児の娘をもつ山田いつかです。私の娘は、生後間もなく脳室周囲白質軟化症(PVL)と診断されました。彼女を通してみる世界は本当に大変ではあるけれど、その小さな身体から伝えてくれている命の尊さや生きていくことの豊さ、与えてもらった大切な仲間との出会いに感謝をしながら日々を送っています。
今回カモメプロジェクトでは、福祉がより楽しく、より豊かになるように、もののデザインに関するアドバイザーとして関わらせていただきます!
(参考:山田さんと娘さんの記事/前編後編、 山田さんのデザインに関する記事) 


□ 河村由実子

みなさんこんにちは。私は、“目の前の人を笑顔でハッピーに” をモットーに、普段は病院の集中治療室で理学療法士として働きながら、ライフワークとして地元のFMラジオ局で番組『医どばた食堂』のパーソナリティをしたり、Webメディア『リハノワ.com』の運営を行ったりしている河村由実子です。

今回は、様々な奇跡と偶然が重なり『カモメプロジェクト』の発足に関わらせてもらいました。カモメプロジェクトのメンバー一人一人が持つパワーは本当に絶大で希望に満ち溢れており、プロジェクトを進めていくのが本当に楽しくて、いつもワクワクしながらカモメのことを考えています。たくさんの方の想いが詰まった『境界なき宿屋 カモメ』が、一人でも多くの人に愛されるよう、全力で取り組んでいきたいと思います。Webメディアの方で、メンバーの熱い思いを伝える記事を書いていく予定なので、ぜひそちらもご覧ください!(→こちらをチェック)



□ 中村悟・めぐみ(猛政工務店 / fine factory)

広島県広島市にある『猛政工務店 / fine factory』の代表・中村悟と、妻のめぐみです。幼い頃から父や祖父の背中を見て育ち、19歳から大工一筋、今年で28年目になります。尊敬する父や祖父に恥じないような仕事をしていきたいという想いで、工務店の名前は二人の名前から一文字ずつもらっています。

普段は広島周辺の住宅の大工工事をすることが多いですが、今回は様々なご縁があり種子島でお仕事をさせてもらうことになりました。カモメに関わるみなさんの熱い想いや島の人の温かさに支えられ、妻と二人三脚で仕事に励んでいます。将来カモメを訪れてくれる皆様が安心して過ごせるように、真心込めて大工工事を頑張ります! 妻のめぐみが撮影している動画が車椅子YouTuberちんさんのチェンネルにて動画配信されておりますので、ぜひそちらもご覧ください。


中村珍晴
「車椅子YouTuberのちん」こと中村珍晴です。僕は19歳の時に、アメリカンフットボールの事故で首を骨折し、車椅子ユーザーとなりました。現在は大学講師をしながら、YouTubeチャンネル『suisui - Projectを運営し、車椅子生活に役立つ情報や健常者の知らない身体障害者のリアル、心理学について発信しています。
カモメプロジェクトでは、動画による発信部隊として、カモメが完成するまでの過程を僕のYouTubeチャンネルにてお届けしていきます!


□ 本多寅男(左官の寅ちゃん)
種子島で左官屋をしている本多寅男です。2年前に開業した『泊まれる植物館あずまや』の左官仕事を請け負いました。あずまやの工事では砂鉄を使ったコンクリートや漆喰、島民参加型の土壁ワークショップなどを通して種子島における左官の可能性を感じました。
今回のカモメプロジェクトでも種子島の素材を使った様々な挑戦を行っていく予定なので完成を楽しみにしておいてください!



●資金の使い道について

2020年9月21日(敬老の日)のオープンに向け、支援金額+自己資金で計画しています。

お礼品は、種子島に来ていただける方、来れない方でも楽しめる内容となっておりますので皆さんのご支援のほどよろしくお願いいたします。


目標金額 300万円

【建築工事費用として】
水廻り改修工事 120万円
間取り変更工事 100万円

【運営費】
お礼品返礼費用・サイト手数料 80万円


★目標金額を超えた場合の皆さまからのお気持ちは、宿屋カモメのさらなる福祉の充実化、カモメメンバー監修による福祉用品のデザイン・開発等に活用させていただきます。




●最後に

“故郷を離れても種子島の為に何かできることはないだろうか”

”高齢者も障がいのある方も、みんなに楽しんでもらえることはできないだろうか”

そのような想いで立ち上げたプロジェクトです。

 

・人口減少や高齢化が進み、増え続ける空き家の活用法の一つとして

・バリアフリーでストレスフリーな建築を実現することで、誰もが安心して集える場として

・“その人らしい生き方”を支援するための新しいカタチを作るチャレンジとして

 

私たちは本気です。

 

皆さんのご支援によって計画が実現し、種子島・そして日本が元気になる第一歩となります!
是非とも協力のほど宜しくお願いいたします。





< 境界なき宿屋カモメ >

建築地:西之表市鴨女町14415-10
公式HP(準備中)
Instagram
YouTubeチャンネルsuisui - Project』による動画配信
 〜宿屋カモメができるまで〜第1話https://youtu.be/l9e2MtmyKwA
・シリーズ連載カモメ webサイト『リハノワ.com』にて発信中

  • 2020/08/28 06:58

    ご支援頂いた皆様、応援くださっている皆様いつもありがとうございます。カモメの工事も中村棟梁、めぐみさん、左官の寅さん達の活躍もあり終盤に差し掛かろうとしています!特注のベッドを現場で作る棟梁テーブルや椅子も全て中村棟梁が手掛けます左官の寅さんと、壁の色の調合を実験中一から色を作って仕上げの漆喰...

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