チェコ出身の建築家アントニン・レーモンド(1888-1976)は、1919年に旧帝国ホテル建設にあたって来日したのち、日本にとどまり、多くの作品を手がけたことで知られています 。2019年に、『日本におけるアントニン・レーモンド 1948-1976 知人たちの回想』がチェコのアウラ出版(Nakladatelství Aula)より出版されました。

出版された本は、チェコセンター東京の協力のもとで行われた、東京のレーモンド設計事務所関係者へのオリジナルインタビューを通して、戦後に設計したの建築作品を中心に詳しく紹介をしています。ほかにはない貴重な証言により、レーモンドの人生とその作品という2つの領域への考察に新しい見解を与えました。

そしてこのたび、レーモンドについての貴重な文献となるこの本がさらに多くの人の手に渡るよう、新たに日本語・英語の二カ国語での書籍を出版し、世界に向けてレーモンドの功績を伝承するプロジェクトを立ち上げました。

本プロジェクトで書籍のリターンを支援いただけた方には、一般販売より一足先に書籍を配送させていただきます。

チェコ出身の建築家アントニン・レーモンド(1888~1976年)。旧帝国ホテルを設計中のフランク・ロイド・ライトの右腕として1919年に来日し、第2次世界大戦をはさんで半世紀近くを日本で過ごしました。戦後、レーモンド夫妻は日本の復興を支援するため、1947年に東京事務所を再開。その後25年わたって日本とアメリカの両国で生活しながら活動し、彼らのキャリアの中で最も充実した時期を過ごしました。レーモンドの設計による1951年竣工の《リーダーズ・ダイジェスト東京オフィスビル》は、日本の近代建築史の中で最も重要な建築物の一つとして広く認知されています。

本書のインタビューを通して、作品を見るだけでは知りえないレーモンドの人となりや仕事に対する姿勢、ノエミ夫人の影響などが見えてきました。このたび、本書の一部を抜粋してお試し読みができるようにしています。ぜひご一読いただき、プロジェクトへの支援をご検討いただけますと幸いです。

北澤: 非常に怖い先生でしたね。短気で、怒りっぽい。「雷おやじ」というあだ名がついていまして、怒りだすと止まらないんです。でも私は最初から大変リスペクトしていたので、怒られても平気でした。すごく怒られたのは、南山大学の実施設計を終えて、「現場に行きなさい」と言われた時ですね。現場に行くことになって、2月の初めにレーモンドご夫妻が来るという事で、初めて現場でお会いする事になったんです。けれども、現場を見て歩いているうちにすごく怒り出しまして、上背が僕よりずっと大きい人が、襟首をグーッと持ち上げられましてね、「こんな工事してたら許されないぞ」と。私が赴任する前の工事なんですけれども、強烈に怒られて。ブリブリ言いながら現場事務所に帰ってきて、「清水建設に電話しろ」と。…そういうことでほとんどの社員を入れ替えて、再出発しました。実際、それほどその大きなミスじゃなかった。「こんな事で?」って私は思ったものです。でも、建築家の皆さんならわかると思うんですが、独立基礎で大きな、3メーター角の独立基礎で地中梁が付くところの下に、鉄筋(10mmφ)が2本出てるんですけれども、それが曲がってたり、ずれてたりしたのを見つけたんですね。それで、「鉄筋が非常に悪い」と、「全部調べなさい」と言う。調べて行くと確かにみんな鉄筋が良くなかった。地中梁の主筋なども、間違っていたりして、2か月間ぐらい、現場がストップ。全部造り直したというから、率直に「凄いな」と思いました。「こんなに強く主張できる建築家っているんだな」って。改めてレーモンドの偉大さを、私も身をもって体験しました。

北澤: レーモンド事務所では、その設計におけるレーモンドの姿勢として「5原則」というのがありまして。単純・自然・節約・直截・誠実、これが常に設計の基本なんです。…レーモンドは非常に素晴らしい幾つもの言葉を残している。例えば、「外部の形は内部の構造の正直な表現でなければならない」、「デザインにおいて表現の手段が単純になればなるほど、その表現は力強くなり真実になり、したがって美しくなる」、「経済性もまた重要である」、「これは決して安く作るという事ではない、何事も無駄にしないという事である」など。レーモンドさんの生活を見てると本当に、無駄が無いといいますか、日本人で言ったら「まじめなオヤジ」という感じなんですけれども、お金も遣わない、身なりにはあんまりお金はかけない。

内藤: まず、私達が、この1958年の夏、3ヶ月滞在した別荘はI氏の持っておられた物件です。旧軽井沢銀座まで歩いてすぐの広い土地に小さな建物が数件あった家を3棟借り、1棟がレーモンド夫妻、1棟がM君と私、ここでレーモンド夫妻、セクレタリーと5人で朝昼晩の食事を共にしましたね。その他、コックさん、運転手、女中さんの為の1棟があって、皆そこで寝泊まりしていました。私達のところでは、朝、早く起き、皆様が来られる前に、布団をたたみ、食事のテーブルを出しておかねばなりませんでした。日曜日は、コックさんのお休みの日で、皆、5人で外で夕食を取ります。レーモンドさんは、いつも、たわいのない事を云って、皆を笑わせて下さいました。でも、夕食には必ず、ワインが付き、土曜日には、スコッチの水割りも付きました。1958年の日本の夕食では、考えられませんリッチなものでした。

チャプコヴァー・ヘレナ
ロンドン芸術大学TrAIN研究センター修了。博士(芸術史)立命館大学グローバル教育学部准教授。主な著書に、"Transnational networkers - Iwao and Michiko Yamawaki and the formation of Japanaese Modernist Design" (Oxford Journal of Design History, 2014)、"'Believe in socialism...': Architect Bedřich Feuerstein and His Perspective on Modern Japan and Architecture" (Design and Society in Modern Japan, Vol. 28, 2016)、「アントニン・レーモンドとル・コルビュジエ、建築における海賊行為ーー形式ではなく精神性が与えた影響についての考察」(稲賀繁美編『海賊史観からみた世界史の再構築交易と情報流通の現在を問い直す』、思文閣、2017)、"'From Decorative Arts to Impressive Local Constructions and Materials'ーOn the New Japonisme for the Czechslovak Republic(1918-1938)"、Studies in Japonisme/ジャポニズム研究、2018がある。

かもがわ出版
http://www.kamogawa.co.jp/index.html
「京都から知的発信」を創業の精神に、全国の良書を送り続けてきました。加藤周一をはじめ日本の知を代表する著者の書も数多く出版し、タイムリーな入門書「かもがわブックレット」は、200点を超えています。常に社会の動きを的確に読み取り、どんなタブーにも恐れず、時々の読者の知的ニーズに応える斬新な出版企画はマスコミからも評価されています。

資金の使い道

国内出版費(印刷、流通、宣伝) 1500000
翻訳費+チェコ運営側の業務費 522523
送料 89000
CAMPFIRE手数料 234960

リターンについて

お礼のメール 2,000円
ヘレナ・チャプコヴァー教授より感謝の気持ちをお送りいたします。

本プロジェクトの書籍 6,600円
『日本におけるアントニン・レーモンド 1948-1976 知人たちの回想』 日・英版 1冊
※日本と英語双方の内容を収録した書籍となります。
※予価:6600円
※送料込み。
※一般販売より一足先に発送いたします。

実施スケジュール

5月 プロジェクト終了
6月 翻訳
7-8月 印刷
9月 リターン履行

<All-or-Nothing方式>
本プロジェクトはAll-or-Nothing方式で実施します。目標金額に満たない場合、計画の実行及びリターンのお届けはございません。

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