はじめに・ご挨拶

こんにちは!地域活動団体 "縁もゆかりも" の櫻井です。広島大学の学生で、広島を中心に中国地方で地域活動に取り組んでいます。

2021年6月より、”志和堀かやぶきプロジェクト”をスタートさせ、地域の方々と協力しながら、広島県東広島市志和町の志和堀地区に残る2軒のかやぶき民家の活用保全の活動を行っています。茅葺屋根の葺き替えは、毎年のお手入れに加え、数十年に一度大規模な葺き替えが必要です。その葺き替えが来年に迫っていることを知り、地域活動や地域活性に興味のある学生で、茅葺民家の活用保全活動に取り組むことにしました。ひとつの地域では維持が難しくなっている茅葺民家も、地域の枠を広げていけば、残せる仕組みが作れるのではないかと思っています。一緒に茅を刈る仲間 “茅刈人” を増やして、貴重な茅葺民家とその文化を、次世代に残していきます!

”茅刈人・結・志和って?” と気になった方、ぜひ最後までお読みください!


私たちの活動地域のご紹介(広島県東広島市志和町)

広島県のほぼ中央に位置する、東広島市志和町。

広島市内から車で30分、酒処として有名な西条からも車で30分程度の場所にあります。

市街地からも比較的便利な場所にある志和町は市街化調整区域に指定されていることもあり、豊かな里山環境が残っています。シーズンにはホタルを見に、多くの人が訪れます。


茅葺屋根の古民家が一つの地域に複数残っていることって、実はすごいことなのです。

田舎道をドライブするときに茅葺屋根の家を探してみても、茅葺の上にトタンを被った家を見つけることはできますが、茅葺がそのままの形で残ってる家を見かけることはほとんどなくなっています。

志和町の志和堀地区には、徒歩10分圏内に6軒もの茅葺民家が残っています。観光地でも保存地区でもないのに、トタンが被っていない茅葺民家がこんなに残っているのは、本当に貴重です!

住民の方にお話を伺ったところ、今住んでいる方やさらにその上の世代の方々の、茅葺に対する熱い思いで残して来られたそうです。つい最近まで、地区内の茅葺き職人さんが活躍されていたと聞きました。地域住民、茅葺職人さんたちの想いが、茅葺民家という形になって残っているのです。志和の茅葺民家は、人の想いが脈々と受け継がれてきたからこそ残っている、すごい場所なのです!


*ほたる荘*


*ホタルの宿自然学校*


*ほたる庵*


*Dさんのお宅*



*Iさんのお宅*


*千代の春*


【茅葺民家の魅力や社会への違和感】

茅葺民家の魅力はたくさんあるのですが、私たちが特に魅力だと感じる2つを挙げさせていただきます。


①茅葺民家には人のつながりがある


茅葺民家が多く残っていた時代には、"結(ゆい)" と呼ばれる文化があったと言われています。

「結」とは"人とのつながり" や "お互い様" を前提とした暮らしのあり方です。

茅葺の屋根を葺き替える全ての工程で、たくさんの人がお互い様の精神で助け合い、負担を分散させていたのだと思います。

例えば、昔は毎年山のふもとなどで茅を刈り、それをストックし、「茅の貸し借り」ともいえる相互扶助的な関係がご近所同士であったそうです。また、葺き替える時には、茅葺職人さんたちが、10日間くらい住み込みで葺き替えを行い、地域内外で人のつながりがうまれていました。

もちろんこの文化を今の社会にそのまま復活させることは困難ですが、人のつながりが分断されつつある世の中で、より豊かに暮らすためのヒントが、「結」にあると感じています。


②茅葺民家には循環がある

茅葺民家の魅力の一つが、屋根の素材である茅の循環です。
茅葺屋根は、葺き替え作業を行うと古くなった茅が大量にでてきます。

この古い茅にはたくさんの微生物が住みついており、昔は良質な肥料として使われていたそうです。自然に生えてくる茅が屋根に使われ、葺き替え後も肥料として地に還っていく、こんな素敵な “循環” がかやぶきにはあります。

新しくて効率的なものがいいとされる世の中ですが、実は昔の暮らしの方がずっと効率的で、地球にも人にも優しい工夫が自然と組み込まれていたと思います。


古くて新しい。

茅葺にはたくさんの魅力があります。


【茅葺の現状と未来】

こんなに魅力的で私たち学生も残したいと感じる茅葺民家ですが、高齢化や茅葺職人さんの減少に伴い、全国的にも茅葺民家の数は減少の一途をたどっています。私たちが活動する志和堀地区でも、ここ20年で茅葺民家の数は3分の1以下になっています。この時代に、茅葺民家を無理なく残すにはどうしたらいいのか?茅葺民家が無理なく残せる社会は、どんな社会なのか?答えは簡単には出ませんが、日々メンバーで考え続けています。

現代は便利なものであふれていて、茅葺民家など、文化や伝統を色濃く残すものは、なくなっても今すぐは困らないかもしれません。でも、そういったものが少なくなっていっている社会は何か大切なものがこぼれ落ちていっているようにも感じます。

最近は持続可能社会やSDGsといった言葉はよく耳にしますが、昔の人の暮らしにはその答えがたくさんあるようにも思います。


【ホタルの宿自然学校 / ほたる荘の紹介】

志和に残る貴重なかやぶき民家のうち、ホタルの宿自然学校とほたる荘では、活用保全の動きが始まっています。


〈ホタルの宿自然学校〉

ホタルの宿自然学校は、春夏秋冬全ての季節で里山暮らしを体験できる、体験型施設です。例えば、春の山菜シーズンには里山体験、秋にはキノコ観察など……。特におすすめなのは、ホタルの宿自然学校で過ごす夏休みです。すぐ裏を流れる小川や車で10分の滝壺でたくさん遊んだ後には、流しそうめんをすることができます。竹の切り出しから体験することも可能です。また、1日の終わりには自分で薪割りをして、五右衛門風呂を沸かし疲れを癒せます。イベント会場として利用される方も多いそうです。


〈ほたる荘〉

ほたる荘は、5年ほど前に、空き家となっていたところを広島大学の教員と学生が中心となって地域の図書室としてリノベーションした茅葺古民家です。本棚に並ぶ本は、地域の方やメンバー、来館された方から寄贈して置いてある「私の大切な本」たちです。本を贈ってくれた方の人柄や想いが読む人に伝わる仕組みがつくられています。また、ほたる荘ではスペースの貸し出しやイベントなども行われています。最近では、蔵を改修したものづくりスペース “つくれば工房” や、刺繍ブランド itobanashi のアトリエになるなど、地域の方やほたる荘に関わる方の「やりたい」が形になる場所になっています。

上の写真は、たくさんの想いがこもった本をバックに、茅葺き未来会議をを行なった時の様子です。


【 葺き替えが同時にやってくる 】

このように様々に活用されているほたる荘とホタルの宿自然学校ですが、屋根の傷みが激しくなっており、早急に葺き替えを行う必要があります。1軒の葺き替えだけでも大変なのに、2軒同時に……。地域の方々や私たちの活動に共感いただけるみなさんの力をお借りしながら、なんとか葺き替えを達成したいと思っています。


【 茅の原料であるススキがない!】

幸運にも、隣町に茅葺の職人さんがおられて、葺き替えの作業自体は行っていただけそうです。でも、肝心の茅がありません。昔は少しずつでも集めれていた茅 (ススキ) も、最近は農地利用が進み、生活スタイルも変わったことで、ススキを見かけることも少なくなりました。私たちが活動する志和堀地区でも近畿大学・市川尚紀先生らと一緒に茅刈りなどを行っていますが、2軒の茅葺民家の葺き替えを行うほどの茅を集めることはできていません。昔の “結” を背景とした関係性の中で集まっていた茅も、現代社会の中で集めようとすると簡単なことではありません。

*補修の様子*




でも最近、ススキがたくさん生えている場所を見つけたんです!


それは……草原です!!


中国地方の山間地域にも、草原と呼ばれるエリアが残っています。

草原は気候や植生、さらには酪農 (人間の暮らしの営み) との関係で森林化しなかったエリアが草原として残っていると考えられます。しかし、小規模な酪農が減り、温暖化などで気候も大きく変わる中で、草原を維持することも簡単ではなくなっているそうです。


そんな草原を維持するにはどうしたらいいか。それは、山焼きや草刈りで取り除くことが重要になるそうです。

ススキを刈らないといけない草原と、ススキを刈りたい私たち…… 相性ばっちりです!!

あとは、刈る人手です。


ススキを茅葺の原料として使うには、乾燥している必要があります。なので、ススキが枯れて雪が降るまでの、11月末から12月中旬くらいまでに一気に刈ってしまわなければなりません。しかも、大量に!!


地域内で茅を集める仕組みを取り戻すのは難しいかもしれませんが、地域の枠を広げて、中国山地全体、あるいは全国で茅を刈る仲間を増やして草原で茅刈りをできたら、みんなで茅を集める仕組みがつくれるのではないかと考えました!


*茅刈りin三瓶山の様子*


「茅葺民家はこれからの時代に必要なものなのか」

そう思われる方も少なくはないでしょう。

昔のものを残そうとすることは、常に新しさや変革が求められている世の中の流れにそぐわないかもしれません。

しかし、新しいこと・変化することが常に豊かさをもたらすかと言えば、そういうわけではない気がします。良く遊んでいた公園が土地開発でマンションになった、好きだったお店が移転した、慣れ親しんだ土地から引っ越した……

変化には同時に去っていくものへの寂しさがあります。だからこそ、形として変わらないものが人の心の拠り所として必要ではないでしょうか。


ここまで記事を読んでくださった方は、私たちの活動や茅葺民家に集まる人たちの姿を見た時、「あたたかさ」を感じとっていただけたと思います。

茅葺民家の下に人が集い、縁を結んで、心があたたかくなる

そのような営みが志和でずっと続いてきたのは、茅葺民家がずっとその場所にあり続けたからかもしれません。

変化する時代だからこそ、人の心の支え、地域の支えにもなりうる茅葺民家を残していく必要があるのです。


志和堀地区のこの2軒の茅葺民家を、わたしたちと一緒に活用し、これまで社会の変化を見守ってきたこの茅葺古民家を、もう100年、残していきませんか?

茅葺の歴史、文化・伝統を次世代につなげていきましょう!


【 葺き替え後は、みんなが使える茅葺民家として運営していきます!】

無事に二軒の茅葺民家の葺き替えが達成された後は、この二軒の茅葺民家に学生が主体的に関わり、誰もが関われて、誰もが使える茅葺民家として運営していきます。

ほたる荘は、図書室をベースに関わる人の “やりたい” が形になる場所になっています。私たちはこのほたる荘の運営に関わりながら、私たちの “やりたい” であるカフェの運営を行ってみたいと思っています。最初はイベント的に実施することになると思いますが、ぜひ、遊びにいらしてください!

ホタルの宿自然学校では、志和の大自然や美味しいを体験していただける体験型イベントを実施していきます。志和にはこだわりの有機農家さんがたくさんおられるのも魅力のひとつだと思っているので、こういった農家さんと一緒にアグリツーリズムなども企画してみたいと考えています。


【これまでの活動】

①かやぶきDAYの実施

かやぶき屋根古民家の魅力を知る&伝えるためにほたる荘やホタルの宿自然学校を使った「かやぶきDAY」というイベントを、毎月開催しています。プロジェクトメンバーを中心に学生、地域の方々、他団体からの参加者など多くの方が交流できる場として、かやぶき未来会議や志和堀散歩、かやぶき合宿などを学生主体で企画してきました。毎回、様々な方をゲストとしてお迎えしており、茅葺民家に本気で向き合う貴重な時間となっています。


会議の後は、志和堀さんぽを開催しました。志和堀地区の他のかやぶき古民家を訪れて住民の方のお話を聞いたり、豊かな田園風景を楽しみました。夜には実際に「ホタルの宿自然学校」で学生合宿をして、かやぶき屋根古民家で「暮らす」を体感しました。


②聞き取り調査
志和堀地区の茅葺民家で暮らす住民のみなさんに定期的に聞き取り調査を行っています。皆さんの想いで残してきた茅葺民家ですが、体力的にも経済的にも残すのは楽ではないことがひしひしと伝わってきます。大切にしてこられた茅葺民家とその想いを、なんとか次世代に残して行けたらと思います。

*下の写真は、地域のおばあちゃんが暮らしている大きな茅葺き民家を、参加者の方と見に行った時の様子です。
 


③廃校活用
私たちの活動では、中国山地全体から茅を集めていきます。茅は半年ほど乾燥させる必要があり、旧小学校の体育館を使用させていただいています。茅刈りをした後に体育館に搬入し、保管しています。


④各地での茅刈り
また2021年10月からは、中国地方各地の草原や茅場に行き、火道切りイベントや茅刈りイベントに参加し、冬にはわたしたちの茅プロジェクトが主催の茅刈りイベントを企画しています。あなたも、わたしたちと一緒に”茅刈人”になりませんか?

”かやぶき”は、草原や里山文化とも深いつながりがあり、地域で循環する素材です。その魅力をわたしたち自身が感じ、それを地域の外のもっと多くの人に届けることが目標です。


*志和町での茅刈り*



⑤学生の活動拠点作り

志和堀地域のかやぶきエリア内の古民家を活用し、昨年12月に学生のシェアハウスがスタートしました。茅葺き民家のすぐ近くで活動することができています。今年度は、地域内外の方が気軽に立ち寄れるような憩いの場所を目指し、DIYイベントなどを実施しています。


【リターンのご紹介】


※詳細はリターン内容をご確認ください。


 

【支援金の使い道】

・茅代 (不足分を購入します)

・茅葺職人さんへの経費支払い

・ホタルの宿自然学校へwifi設置

・リターン費用

・手数料


【スケジュール】

・2022年5月   クラウドファンディング開始

・2022年6月   リターン開始

・2023年1月~5月 ほたる荘とホタルの宿自然学校の屋根の葺き替え(予定)
         ※茅葺き職人さんと相談します。時期は予定です。

・2023年5月   2棟の葺き替え完了(予定)


【応援コメント】


最後に

最後まで読んでいただきありがとうございました。

学生団体”縁もゆかりも”で活動する中でわたしたちは、茅葺きの魅力、茅葺きとともにある志和の魅力にたくさん気づかされました。そんな志和町で、今回2棟の茅葺き古民家の屋根の葺き替えをして、葺き替え後は誰もが気軽に来れて使えるような場所として学生主体で運営できたらと思っています。

面白いことに、茅葺きはまちづくりにも深く関わっていたり、志和での他の地域活動のきっかけになったりしています。こうした実際の活動や人との出会い、草原との出会いもまた茅葺きから広がっていく世界があり、このクラウドファンディングの挑戦をきっかけに、志和地域の方々、学生、中国山地の方々、そして全国の皆さんが繋がって、どんどん仲間が増えたらいいなと思っています。


<募集方式について>

本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。

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