ネット情報から「信憑性」が失われるのは当然の帰結か?

インターネットには、誰もが情報を発信することのできる「自由さ」があります。

不特定多数のユーザーから無数の情報を吸収し、時には私たち自ら情報を世界に向けて発信できる時代。
インターネットの「自由さ」は今や、現代人の生活を構成する必要不可欠な要素となりました。

しかし、情報の「信頼性」という観点から見れば、これは必ずしも良い結果を生みません。
事実、私たち人間は、より「分かりやすい」情報を好む習性があります。つまり、人間は無意識に、知覚しやすい情報や自分の予想と一致する情報に好意を抱き(1, 2)、さらにその情報が正しいとさえ考えてしまうのです(3, 4)
一度人々のコミュニティの中で情報の「自由」を許してしまえば、「分かりやすさ」と「信頼性」、二つの要素のうち前者がより直感的に好まれ、(時にはその情報の「信頼性」がある程度損なわれようと)より「分かりやすい」情報が「生き残」り、あなたの手元に届きやすくなります。

情報が「生き残る(広まる)/生き残らない(広まらない)」を決めるその決定権が、より「分かりやすい」情報を好む「人間」に委ねられている以上、時に信頼性の有無に依らず、より「分かりやすい」情報が普及してしまうのは、上記の指摘を踏まえると至極当然のことにも思えます。

例えば、一個人のダイエットの成功体験に基づいた情報にどれだけの信頼性が認められるでしょう?
この手の議論においては、たとえお医者さんのブログであっても、自身の主張に合致した文献だけを紹介していたりするケースも多く見受けられるのが現実です。(因みに、「専門家の意見」は科学的なエビデンスの質のヒエラルキーでは最下層)

また、たとえ「東大合格者が教える学習術」、「医師が勧める勉強法」のように謡っていても、彼らは所詮学習に関する専門家ではなく、単に個人の経験に基づいて(1サンプルとして)、自分が最適だと“思う”方法論を語っているに過ぎません。(当本人は勿論その点を理解しているはずですが、自らあえて明瞭に指摘するケースは残念ながら多くありません。)

それでも、現状の検索アルゴリズムで上位に表示されるのは、(科学的根拠の脆弱性を問わず、時にはよりエビデンスの高い記事をも差し置いて、)そのような「分かりやすい」レッテルが張られたコンテンツなのです。


「最も信頼できる情報」はアクセスしにくく難解

勿論、信頼性の高い情報も存在しない訳ではありません。

ネット上で見つかる最も信頼性が保証された情報の典型として、「学術論文」があります。学術論文とは、最先端の知識を備えた研究者たちが、厳粛な研究倫理のもと、特定の学問上の問題について発表・議論を重ねる媒体であり、最も「信頼するべき」情報リソースといえます。

しかし、論文を読みこなすには、「英語読解能力」と理解のための最低限の「専門基礎知識」を必要とするのが常であり、本質的な内容の理解はおろか、無理に読んでも逆に誤読してしまう危険性が伴います。 研究に携わることのない私達にとって、論文を直接読むことで科学知識を取り入れることは、時間と労力のかかるなんとも「効率の悪い」作業と言えるでしょう。


ネットの常識を覆す、「分かりやすさ」と「信憑性」の両立 

では、「分かりやすく、かつ信頼性のある」情報はこのネット世界に存在するのでしょうか?

近年では、「科学ニュースサイト」なる便利なコンテンツが普及し、中々手を伸ばしにくい「学術論文」さえも端的にまとめられている場所が存在します。 私達はこのようなサイトに掲載される記事を読み、運が良ければ、自分の興味関心に合致した分野においてその教養を深める事も可能です。

これらのサイトは、運営側が自ら、専門知識を有する少数の書き手にコンテンツの執筆を依頼(書き手を「抽出」)することで、ごく限られたコンテンツ内において、発信する情報(この場合は記事)の「分かりやすさ × 信頼性」を実現していると言えます。

「オープン」な世界(つまりインターネット全体)では、「情報発信の自由」が許容されるため、その情報の「信頼性」よりも「分かりやすさ」が優先され、普及する情報の信頼性が必ずしも保証されていないといった状況を生み出しかねません。

そのような意味では確かに、情報の発信者、つまり記事の「書き手」をある程度「制限」せざるを得ないのでしょう。

しかし、ごく少数のライターを「抽出」して一方的な情報発信を行う「科学ニュースサイト」は、インターネットの醍醐味「情報発信の自由」をあまりに「制限」し過ぎているのではないか、と私達は考えます。

すなわち、極端に限られた書き手に執筆を任せずとも、もう少し「ゆるい」制限で信頼性の確保は十分実現可能だと思うのです。

そこで私達は、「信頼性の担保」を第一に掲げたオンラインコミュニティを形成し、その中で自由な情報発信を促すことで、 「発信された情報の中から、あくまで『信頼性』は保ちつつ、『分かりやすい』情報が生き残るような空間」を再現出来るのではないかと考えました。

Homo Evidenceという「囲い」を作り、書き手をある程度「制限」さえすれば、運営側でごく限られた書き手を抽出せずとも、「情報発信の自由」の恩恵を存分に享受した高い信頼性の情報共有サイトが構築できるのです。

このシステムにより、既存の科学ニュースサイトに比べて、書き手、すなわちコンテンツの絶対数が飛躍的に増加するだけではなく、ジャンルの多様性も広がり、私たちの興味関心に合致した記事への簡単なアクセスが可能となるでしょう。

以下では、上記の「必要十分な」制限をいかに実現し、Homo Evidence という「囲い」を築き上げるか、具体的なサイトの構想を説明していきます。


今回作りたいサイト「Homo Evidence(ホモ=エビデンス)」では、個人の単なる感想ではなく、あらゆる分野の「科学的に根拠のある情報」だけを共有できる場を構築します

「Homo Evidence」は、「エビデンス至上主義者が集う新時代」をテーマに、科学論文をベースにした情報を手軽に共有し、検索できるプラットフォームです。

「爵位(グレード)」を付与されたライターが、読者に科学的な根拠のある情報を提供すると同時に、読み手と読み手、読み手と書き手の気軽なコミュニケーションを可能にすることで、コミュニティ全体として科学に対する理解を深めることを目指します。


科学的な根拠のある情報が集うSNS「Homo Evidence」の主な機能

現在開発中のスマホiOS版アプリのイメージ(※Web版、Android版も鋭意制作中)
【上図】ホーム画面では、あなただけのおすすめ記事をチェックできます。
【下図】"discover"のページでは、気になる"ライター"を発見できます。 

具体的には、以下のような使い方をイメージしています。
(極力短くまとめました、一読していただけると嬉しいです!)

●記事の執筆を希望する方々には、個別の最新論文の紹介や、論文をベースにした情報を提供する記事コンテンツを作成していただきます。 

●読者のトップページには、各自の過去の閲覧履歴等に基づいておすすめのコンテンツを表示します。 

●検索窓のほか、ジャンル別に人気記事、最新記事等を閲覧できます(例:「脳科学」「医療」「宇宙」「量子論」「数学」「生物学」など) 

●同時に、コンテンツの難易度別の表示、選択の機能を搭載することで読者の知識レベル、求めるエビデンスレベルに応じたコンテンツの発見を容易にします。例えば、専門用語、統計学の知識等を積極的に用いて最先端の研究に関する専門的な議論を求める人向け、研究の結論のみをざっくりわかれば十分だという人向けのように、(あくまで科学に基づきながら)ニーズに合わせてコンテンツの難易度に幅を持たせます。 

●また、YouTubeにおけるチャンネルのように、ライター別のページも充実させます。このように「書き手の“顔”が見える」システムを構築し、書き手の個性を尊重することで、既存の科学ニュースサイトとの区別化をはかります。 

●原則コンテンツの書き手を大学院修士以上の方に絞り、情報の出所の記載を義務付けることでエビデンスの質を担保します。また、読者だけでなく専門知識を有する書き手同士の限定評価機能を設けることにより、科学的な厳密さがコミュニティ全体で常に監視・維持されるよう図ります。 

●無料の記事のほか、月額の購読マガジンも配信できるようにし、気になるトピックまたはライターの継続的なフォローを可能にします。同時に、あるマガジンを購読している人同士での関わり合いを活発に行えるようにすることで、コミュニティを構築しやすいような環境を整備します。

●コメント、いいね、フォロー等の機能を充実させることで、直感的な操作を可能にすると共に、書き手と読み手とでなるコミュニティの一体感を高め、仲間と一緒に成長できるような雰囲気を作ります。 

●書き手には、そのコミュニティの会員数(フォロワー数)や執筆コンテンツ数、獲得した累計いいね数などに応じて爵位(グレード)が与えられます。この爵位は、下から「男爵」「子爵」「伯爵」「侯爵」「公爵」の順に設けられ、爵位が昇格することで書き手のみならずそのコミュニティに属する読者にも恩恵が及ぶようなシステムとします。例えば、爵位が上がるごとに書き手の権限が拡大し、各書き手が設定できる購読マガジンの金額の上限が解放される一方、爵位の低い時点から当該ライターのマガジンを購読していた読み手はマガジンの価格が上がっても、以前の価格のままで購読できるようにします。書き手と読み手の両者が恩恵を受けられるこのような制度を設けることで、コミュニティ全体として成長できる環境を構築します。 

●サイト内で利用可能なコイン(仮称)を準備します。このコインは、「1記事を読み終えてコメントを残せばコイン2個ゲットできる」「100コインで購読していない有料マガジンの記事を一つ読める」といった具合に付与、利用を可能にすることで、読者が様々な記事を発見するモチベーションの向上を促します。また、読んだ記事のみに依らず、ライターが(その記事のコメント欄にて鋭いコメントをした場合などに)読み手にコインを付与できる機能を設け、さらに書き手の爵位(グレード)が昇格することでその付与できるコインの上限を開放します。これにより、読者と書き手の間における双方向的なコミュニケーションを促進し、コミュニティ内での議論の活発化を図ります。 

●Premium会員様には、ダウンロードした記事をオフラインで楽しむことができるほか、広告非表示、ベータ版の試用権の付与など、さらに快適にサービスをご利用いただける環境を提供します。 

●既存のソーシャルネットワークよりも報告システムやモデレーション権限を改善し、ユーザーが安全に、自らのオンライン体験をコントロールできるような仕組みを基盤とする新しい価値体系を構築します。また、「プライバシーvs公共の安全」の二項対立ではなく、安全設計と個人のプライバシーの双方に留意したプラットフォームを目指します。 


このほか、「エビデンス至上主義」を実現するための機能をリリース後も逐次追加していくことで、「Homo Evidenceに書いてあるなら信頼できる」と思っていただけるようなサイトを目指します。


私たちは京都大学で、最新の学術論文に基づく先生方との議論や、実際に自分の手で実験を行い、仮説に基づく検証・考察を繰り返す体験から、日々痛感することがあります。

それは、「インターネットの世界には信頼できる情報ソースが圧倒的に少ない!」ということ。

そして、皆が自由に書き込める以上、ネットの情報に信頼性が損なわれてしまうのは果たして仕方がないことなのか?ということです。

2020年末にマッキンゼーアンドカンパニーが公表した調査結果(1)によると、新型コロナウイルスの蔓延やリモートワークの普及によってデジタル変革が約7年分早く進んだといいます。これからは、いま以上に、子供からお年寄りまで幅広い人々が、幅広い情報を求めてインターネットを利用することは益々当たり前になっていきます。

だからこそ、皆が安心して信頼できる情報が共有されているオンライン空間が必要であり、さらにネットの力を使って、多くの人が手軽に科学にアプローチできる仕掛けを作りたいと考えました。

それが、「高い信憑性」と「人のつながり」の両立を実現するサイエンスサイト「Homo Evidence」です。

「Homo Evidence」では、書き手の個性を尊重し、ユーザー間の有機的な繋がりを実現します。ごく少数の書き手が一方向的に無機質な情報を伝える既存の「科学ニュースサイト」との差別化を図り、「人」とのつながりの中で「確かな」知識を収集できるネット空間の構築を試みるのです。

「ネット情報を安易に信じてはいけない」というのが世の常ですが、今回開発するサイエンスプラットフォーム「Homo Evidence」では、そんな既成概念からの脱却に挑みます。その理念を一言で言い表せば以下です。

より高い信頼性のもと活発な議論が繰り広げられる風潮がこのサイトを通じて世界へと広がり、やがて全人類が「信じてよい」ネット情報を利用できる、そんな新時代の到来を願う想いを込め、「Homo Evidence」という名を付けました。

このプロジェクト名と理念を胸に、高い志を持って事業に取り組んで参ります。



いただきました支援金は、CAMPFIRE手数料を除いたすべてを、「Homo Evidence」制作・運営にかかる費用の一部として慎重に使わせていただきます。


※詳細は右のリターンの欄をご確認ください。

●【Homo Evidence オリジナルグッズ】

  Homo Evidence オリジナルTシャツ(ゾウ/ チンパンジー/ カメ)
  ・Homo Evidence オリジナル クラフトリングショルダーバッグ(ゾウ/ チンパンジー/ カメ)
  ・Homo Evidence オリジナルパーカー(カメ/ ゾウ①/ ゾウ②)
  ・Homo Evidence オリジナルスウェット(ゾウ/ チンパンジー/ カメ)

【ありがとうコース】

【万謝コース】

【Homo Evidence 優待コース】

【Homo Evidence 特別優待コース】 

【新人類「ホモ=エビデンス」創造主コース】 

【Homo Evidenceの「顔」コース】※先着1名様限定! 


私たちにとって「大学生活」とは、ウイルスとの戦争の日々でもあります。

京都大学での研究活動に従事する中、新型コロナによるパンデミックをきっかけとしたネット情報に対する信頼の揺らぎを目の当たりにし、「確かな情報が広まること」の重要性を痛感する機会が一段と増えました。

それと同時に、専門知識を有していない我々でも「わかること・わからないこと」を明瞭に区別し、議論を展開できる、そんな世の中に向けたポジティブなイノベーションの必要性も漠然と感じるようになったのです。

『理系大学生として情報の正誤に敏感になれる「今の自分たち」こそ、何か行動を起こすべきなのではないか?』

かような自問自答を繰り返し、ようやく辿り着いたアイデア、それがこの「Homo Evidence」でした。

簡単に科学的な根拠のある情報を共有できるオンライン空間を作りたい。
私たちは、この「Homo Evidence」が、「信頼できる」インターネットの創造へ向けた大きな推進力になると信じています。

現代のネット情報におけるエビデンス維持・向上の重要性を認められる方、またこのページを最後までご覧頂き、「『信じてよい』ネット情報が活発に飛び交う世界」を一度見てみたいと思われた方、この企画が多少なりとも小気味好いと思って頂けた方に、是非、「Homo Evidence」を応援して頂きたいです。

どうぞ応援よろしくお願いします!


<募集方式について>
本プロジェクトはAll-or-Nothing方式で実施します。目標金額に満たない場合、計画の実行及びリターンのお届けはございません。

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